僕達、少し臭う
朝、その日は一日、残りの二軒の薬局2件から役に立つであろう、薬を根こそぎ拝借し、日にちは過ぎていった。
僕も岬ちゃんもひどい匂いがしてるんんだろうなあと思い、コンビニで制汗消毒ペーパーと水がいらないシャンプーで何とか匂いは最小限に抑えているが、女の子の岬ちゃんは辛いだろうと思いつつ、まずはするべきことに追われていった。
薬をため込むと、今はまだコンビニの食べ物があるが、それも時間の問題であった。」
しかし、僕はだれか生き残りが居ないか、探すことに掛けた
朝が明けてから、岬ちゃんと少しの薬や食べ物を入れて、僕たちは警察署に残された拡声器を取り、僕が説明マニュアルを読んでいると、岬ちゃんも興味があるように、のぞき込んでいる。
数時間マニュアルと戦い、基本の拡声の機能だけ覚えると、岬ちゃんと一緒に外に立た。
これが起こってからカラスの天下になっている。
少しでも食べるものがあると、群がり貪り、まるで人間の時代の終わりを告げる使者のようですらあった。
岬ちゃんは「カラス怖いです…」と僕の服をつまむので、、無理にでも大声を出し拡声器でがなる
手前、ままよと思いながら拳銃を上に向け、一発放った。
数百匹のカラスが飛び立つのは壮観でもあるが、恐怖でもあった。
ヒッチコック「鳥」を昔見たことがあるからかもしれない。
カラスが居なくなると岬ちゃんはにっこり微笑んだ。
そして、健気にも拡声器を渡してくれる。
僕はママチャリに拡声器を固定し、岬ちゃんを後ろに乗せる形で、街中を走りまくった。
「どなたかおりませんか! 怪しいものではありません!」
繰り返すが、人っ子一人出て来ない。
午後の日が沈んできたので、僕たちはアパートに戻った。
「ふう」
「…ダメでしたね…」
岬ちゃんは少し落ち込んでいた。
きっとだれかは居ると思っていたのであろう。
でも、かわいそうではあるが、僕は若干ほっとしていた。
前にも言ったが、いる人が善人とは限らない。
僕は限りない性悪説である。
「もう少し距離を縮めるには車があれば良いんだけど」
「私の家に大きな車がありますよ」
「岬ちゃんの家に? そっか、それならキーの位置もわかるか…」
僕は考え「岬ちゃん、お言葉に甘えても良いかな」と。
岬ちゃんは少し誇らしげに「はい。家の車見たら驚きますよ」
珍しく、岬ちゃんは誇らしげに断言する。
少し精神的にもこの事態に慣れてきたのかもしれない。
僕のほうがまだわからず、薬には頼りっぱなしだ。
それは岬ちゃんも変わらず、定期的に服薬をかかせない。
「それでは明日の岬家のマイカーを楽しみにして寝ますか」
「なんですか岬カーってセンスないですよぅ」
「あはは、ごめんね。じゃ、今日は疲れたし寝ようか」
「はい。おやすみなさい」
夜間ライトが狭い場所を蛍光の光で映し出しながら、僕は何度目かの横転をした。
眠れない。
薬で寝ようと思い、起き上がると、岬ちゃんも同時に起き上がり、とろんとした眼つき
で眠れませんね…とほほ笑んだ。
僕も「寝れないねえ」と呟き、弱い眠剤を半分に割り、片方を岬ちゃんに渡す。
二人して、こくりと飲み込み、再び寝床に就く。
「明日は少し緊張するね…大丈夫?」
「はい。母も父ももういないと思います。車はあると思うのですが」
キャンピングカーと聞いていた。
運転は苦手だが、他に車が居ない以上、ゆっくりと運転すれば大丈夫であろう。
「岬ちゃんは…その、寂しいよね」
ふと、口をつく言葉。
隣で、少し身じろぎし、岬ちゃんは呟く。
「そんなには」
「どうして?」
僕は何時も安易に言葉を使い、誤ってしまう。
「…仲、良くなかったですから。こういう風になって少し安心している自分がいます」
何と答えれば分からず、僕は「そっか」とだけ呟いた。
沈黙が、続くうちに僕たちは眠りについた。