真利亜の決意
本当に、人間をなめ腐った自称神には何れ一撃を加えてやる。
僕は密かに決意した。
それからまた暫く待ちの段階が続いた。
地雷を再敷設し、地雷の爆破により破れた鉄条網を貼りなおした。
倫と岬は、少し言葉少なめになった。
声をかけると「大丈夫ですよ、修平お兄様。訓練頑張ります。負けてはいられません」と岬は少し弱めの声を出す。
逆に倫は「大丈夫だよ、お兄さん。訓練頑張るね!」と岬と同じようなことを、自らを励ますかのように、そう言った。
やはり、実際の戦闘は辛いのだろう、僕も少し弱気になっている。
でも、ここで負けることは死と屈服を意味する。
それだけは、それだけは避けなくてはならない。
一番、落ち込んでいたのは真利亜だった。
予想していた事だが、銃を握るだけで震えが来る。
シルフィの治癒にも常に頼るわけにいかない。
真利亜は戦闘には参加させないほうが良いのではと考えていると、ふと、シルフィが物珍しく真剣な瞳を僕に向け、告げる。
「ちっちゃい子達の中でも、真利亜ちゃんが一番、辛いようです。どうでしょう、騎士様、彼女を私の弟子にしませんか?」
「あの…シルフィさん、それはどういう事でしょうか?」
「こういう事です」
と、シルフィの後ろ背から真利亜がちょこんと顔を出し、泣き笑いの表情を浮かべていた。
「お兄ちゃん、私ね…考えたの。このままではみんなの足手まといになるし、そんなのは嫌。だから、シルフィ姉ちゃんに相談したんだ。そしたら、私もシルフィ姉ちゃんみたいな力を持てたらなーって言ったら、シルフィ姉ちゃんが一言言ってくれたの」
「真利亜さんさえよければ、騎士様が許すならば、私の弟子になりましょうねー」と。
僕は混乱した。
弟子になれば、シルフィのような所謂治癒に留まらない魔法を使うことが出来るのか否か。
それは敵である神の力に縋ることでは。
僕の気持ちを察したようにシルフィは告げる。
「魔法は世界に遍在するマナと精霊の力を借りる、この世界の自然法則の応用、つまり一つの技術─アルテ─であって、自らに内在する力の応用です。神様の力を借りているわけではありませんよ。私は一応巫女ですけどねえー」
僕は更に混乱する。
「シルフィさんってその、巫女…神に仕える存在では?」
「私たちエルフって魔法や精霊とは仲が良いんですけど、神様とはあんまり仲が良くないんです。私も嫌なことは嫌ですしねー」
その言葉を聞き、僕は決意する。
「真利亜。本当にやるんだな」
「うん、真利亜、頑張るね。みんなの事癒して上げたいの」
それから真利亜は武器の訓練から離れ、シルフィの元、見たことのない文字や聞いたことの無い概念の勉強をしていた。
真利亜の場合、ふわふわとした子なので、もしかしたら断念してしまうのではと思っていたが、熱心にシルフィから与えられる知識を吸収していった。




