軽くなる軽くなる
シルフィは唖然とする。
こんなに誰でも使える威力がある道具はアルネにはありません。でもと、口惜しそうにシルフィは続ける。
「でもでも、こんな事は出来るんですよ」
掌を中空に掲げ、何か詠唱する。
そして「騎士様と岬様の精神の精霊が乱れているのを感じます」と言い「私の出来る範囲で鎮めますね」と更に詠唱を続けた。
疲れた中サウナに入り、冷水浴をしたような、良く眠れた時の目覚めの時のような、爽快な気分が心に雪崩れ込む。
重い、石が精神から取り除かれたような軽さだ。
今なら、空を飛べる気がする。
岬も同じような感覚を味っていたようで、うっすらと瞳に涙すら浮かべていた。
僕はシルフィに深々と礼をする。
「心に淀んで蹲っていたものが消えた感じです。岬も同じような感を受けたようです。本当にありがとうございます」
「私にもお礼をいわせてください。ありがとうございます」
涙を拭いながら、岬も礼をする。
「こんな力があるんだったら、こんな機関銃なんて玩具みたいなもんだね。あーあ。でもお兄さんと岬、良かったね」
「私もこころ、かるーくなりたいよ」
真利亜は、にっこり笑いながらシルフィに無理強いをする。
「真利亜様の心に蟠りはありませんでした。今のままで大丈夫ですよ」
「冗談だよ、冗談。真利亜、今幸せだもの」
そういってくれると、保護者たる僕も嬉しい。
それにしても、シルフィの超常現象を体験した以上、異世界の存在は否定出来ないし、異世界では神とされているものがこの世界のものなのか、分からない事が多すぎた。
ある日、僕はふと、シルフィに尋ねる。
「記憶喪失のようだし、自分で自分を治す事は出来ないの?」
すると、真利亜と絵本を暢気に読んでいたシルフィは、驚いたように目を見張る。
「どうしてそれに気付かなかったんだろう…流石騎士様です!」




