近代兵器の端っこ
「大分落ち着いたようで良かったです。僕はここでみんなと暮らす…」
と、名前を述べようとした瞬間「騎士様、あなたは騎士様です! 個別の名前何て…必要ありません! 少なくとも私の里ではそうでした」と遮る。
不思議そうに真利亜が「なんでお兄ちゃんが騎士様なの?」と問う。
シルフィは当然のように「騎士たる尊厳、そのレディへの振る舞い、高貴な言葉遣い、ああ、憧れの騎士様そのものです!」そういうと、頬を染めた。
…彼女は残念なエルフなのかもしれない…そんな選無き事を思った。
「兎も角、以前言っていた至高精神様って何なのだろう? 繰り返しになるけれど、君は地球人じゃないよね?」
シルフィは居住まいを正す。
「私たちは至高精神様の起源について良くわかりません。一言で神と呼ぶものもおります。この地球という惑星がその起源だという説が唱えられております。その事は、至高精神様に仕える皆が知っております。私はアルネと呼ばれる世界のものです」
「何か意図があって送られたのでは?」
「それが…」シルフィは頭を傾け「ここに送られた衝撃で忘れてしまいました」
皆が、ガクッとなる。
そこまで天然ボケじゃなくてもいいのに。
「お兄さんどうする?」
その表情は伺えないが、人知れず─消す─という選択肢も入っているのは短い付き合いでも分かった。
僕は首をぶんぶんと振りながら「みんなで様子をみようよ。みんな初めは初めてだったし」
と言うと岬に「お兄様、それはトートロジーですよ」とダメ出しを入れられた。
シルフィは分かっているのか居ないのか「御飯と寝る場所お願いします」とこくりと頭を下げた。
シルフィ自身に悪意は無いようだったので、倫は最後まで渋りがちだったが、受け容れることになった。
「お兄さんは本当、女たらしだね」と嫌味は言われたが。
シルフィの体が完全に回復すると、こちらの世界とあちらの世界の情報を交換する。
「こういうのって見た方が早いよねー」
真利亜は、シルフィの反応を楽しみにしている。
機関銃を倫は構え、右膝を地につけ、体を固定し、目標の材木に射撃する。
シルフィは耳が大きい分、大音響に弱いのだろう、耳を抑え蹲る。
「これがこちらの世界の機械工業が生み出した、武器。その端っこに過ぎない、安易な
道具」
倫はそう説明する。
説明するより見た方が早いだろという判断であった。




