薬局を探ってみる
そして、ぎゅっとこぶしを握り、目頭を拭う。
彼女なりに色々考えているんだろう、自分自身の弱さにいらだつ。
…実は住居や食糧、水源の確保よりも「薬」の事が気になった。
店に鍵が掛かっていれば、ドアノブを銃で撃つことにより、解錠であるだろうし、次は岬ちゃんも連れ、できるだけ大きな袋を用意して近くの薬局へと向かう。
午後の日はまだ髙かった。
近くの数件薬局が点在している場所で、まず一件目の薬局のドアを押すと、すうと開いた。
案外、こんなものかと拍子抜けして、普段は向かわない、レジの裏の薬の処方兼在庫の部屋の扉を開けようとすると、がちゃがちゃとびくともしなかった。
岬ちゃんは僕のセーターの端をぎゅっと掴んでいるので離すよう促し、薬局を出て、耳を塞いでいるよう説得し、岬ちゃんは了承すると、走って薬局の外に出て行った。
扉のガラス窓の部分に、少し離れて拳銃を打つと、何かのテレビ番組で以前見たように、綺麗に粉々となった。
そこからガラスで腕を傷つけないよう、気を付けながら腕を差し入れ、カギを解錠する。
開いたのを確認すると、岬ちゃんを呼び、薬の貯蔵庫へと足を踏み入れた。
「怖かった…? 何だかごめんね」
僕が謝ると、岬ちゃんはふるふると頭を振り、「大丈夫です」と虚勢を張る。
僕はふと、もし元に戻ったとしたら、僕はなんらかの罪状に問われるのだろうかと思い、それであっても、また人で満ち満ちた世界を僕は望んだ。
決して、居心地の良い世界では無かったけれども。
「凄いですね」
岬ちゃんは棚に並ぶ薬の群れに、驚いていた。
「これでも少ないほうなんだよ」
僕が通っていた薬局はもっと市内の病院が乱立している場所にある、大規模薬局であったから。
「そうなんですか」
岬ちゃんは目を輝かせている。
薬が好き…? いや、でも小学6年生で薬のお世話になることも少ないだろうに…と思っていると、心の声を聴いたように岬ちゃんは答える。
「私…発達障害なんです。良くわからないけど、3か月に一回くらいの割合で市外の大学病院に行ってました…」
「そうなんだ…実は僕も薬を必要とする体なんだ。精神が弱くて…」
無理に浮かべたような笑みを浮かべ、岬ちゃんは僕の右手を握り、「それでは仲間ですね」
と言ってくれた。
…最初に薬局を探ったのは正解のようだった。
二人とも薬を必要とする以上、それは生死に値する。
薬局の棚にあった医事薬辞典で探りながら、まずは抗生物質、解熱剤、下痢止め、そして、精神安定剤と、ようやく僕の薬と岬ちゃんが飲んでいた薬を見つけ出し、持参した大きな袋に入れていく。
全部入れると、思ったより重量があり、袋を背負うと、岬ちゃんは季節外れのサンタクロースみたいとほほ笑んでいた。
「それじゃあ、もう夕方だしコンビニによってから帰ろう」
岬ちゃんはこくりと頷くと、僕が背負った薬袋を後ろから支えてくれる。
二人して、息を荒げながら、アパートに帰り着いたのはぎりぎり夜の闇が夕方の光を侵食されるぎりぎりで、帰り着き、一応鍵をかけると、ほっと溜息が出た。
味気ない晩御飯を食べ、することが無いので、夜は懐中電灯を早めに消し、岬ちゃんとベットに入る。
薬の副作用か、精神的なものか、幸い性欲は湧かなかったので、自身内面で安堵していた。
ベットで横なりながら、後2件ある薬局の薬を拝借すること、そして警察署に拡声器が
あったので、不安はあるがこちらには拳銃がある、だからそれで近隣の家々にも誰かいるのではと生き残りを探るよう、大音量でがなりたてようとも思っている。
人間は所詮、不完全な群体で、社会活動が無いと気が狂ってしまう。
だから仲間探しは非常に重要なのであった。