異世界の住人と出会う
僕は暇つぶしで戦車の動作法を熱心にマニュアルで学んでいる倫と、ぽんやりとしながらも、最近は風呂掃除などもするようになった真利亜をにやにやと見守りながら、僕達は日々をやり過ごしていった。
そんな暢気な日々を送り糧秣の管理から、次に向かう自衛隊の駐屯地の選定などそれなりに忙しい日々を送っていた。
倫は相変わらず、戦車の運転に没頭している。
岬は女の子らしく、パッチワークを行ったり、本を読んで時間を過ごしている。
一番、退屈そうなのが真利亜で、あっちにいったりこっちにいったり、その冬を迎えた自衛隊の駐屯地の内外の場所や施設を一番、知っていたのは真利亜だっただろう。
その真利亜が「大変大変!」と、本当に慌てた様子で向かってくる。
「真利亜、どうしたの?」
僕は甘く見ていた
真利亜の観察力の鋭さを。
「駐屯地の南側の鉄条網に穴が開いてたでしょ。何となくその辺を散歩してたら雪まみれで汚い恰好をしている人が居たのよ!」
僕達は急いでそこに向かう。
倫は慌てず、拳銃を装備する。
岬は相手に被せて上げる、上着を持って走った。
周りに他に人が居ないか確認し、その子の前に駆け寄る。
酷い様子だった。
髪は油でぎどぎどで、固まっている。
体も垢で黒ずんでいた。
兎も角、慌てて上着で包み、後の事は後で考える事にして、ボイラーで温かい駐屯地へと招き入れる。
真利亜に熱い風呂を沸かすように告げ、倫は何気なく、その運び込まれた女性であろう人から鋭い視線を外さない。
岬は、炊事場で粥を作っていている。
「彼女の耳を見て、お兄さん。この人、人間じゃないね」
と、倫は冷たく告げた。




