炉端での一夜
雪が降り始めた。
自衛隊の駐屯地には当然、小さな手動の雪はね機ではなく、人間が乗って操作する雪はね機がどんと、用意されてた。
最初は倫に操作方法を聞き、これも僕自身の仕事とする。
これを毎日動かすことにより、何かが施設内に侵入したりした後や、変わったことがわかるので、3人とも変わるといってくれたがこれは譲らなかった。
日々は変わらず過ぎて行く。
倫のレクチャーで岬も真利亜も拳銃を使えるようになった。
実際に使う事が無い事を願うのみである。
実際に自衛隊員のもこもこの冬季服を着、練兵場で二人の射撃を見せてもらった。
岬も真利亜も冷静に、標的を打ち抜いていく。
僕より上手なくらいだった。
本も大体読み終え、僕たちは退屈した。
人間とは贅沢なもので、安全が確保されると、退屈するものらしい。
僕は、みんなの事を深く理解していない事に気付き、お互いの身上を話し合わないかと提案する。
皆、渋めだった。
倫だけは「うちらは運命共同体だし、もう恥も外聞もないんじゃない?」と言う。
「ま、良いわよ。岬はどう?」
岬はもじもじしながら「はい…」と小さく答えた。
「じゃ、僕から」
小学、中学、高校と何処も中間の偏差値で通い、大学も同じようなもの。
何か生きている実感が無く、親や教師に流されてきた。
その間に何時の間にか、神経症になり、安定剤の力を借りていることも話す。
今の状況が一番いきいきとしている。
「お兄さん、今まで生きてこなかったんだね」
倫は容赦無く、告げる。
でもと繋げた「今の修平お兄さんは好き。生きている感じがするし」
「私も修平お兄様が好きです」
「あ、私も私も」
岬と真利亜はそれぞれの表現で僕を認めてくれた。
正直、涙が出るほど嬉しい。
無条件で認められた事ってあっただろうか。




