ボイラー起動
近くにいた岬に聞く。
「ねえ、風呂入れたら入りたい?」
「突然ですね…でも、無理しないで良いですよ」
僕の考えは読まれてた。
「最初真利亜ちゃんにあったときに、臭いと言われたのはショックでしたが、今じゃ皆さん臭いがしますしね、無理は行けません」
「無理じゃないんだ。この駐屯所のボイラーさえ起動出来れば、風呂なんてすぐ沸かせるし、冬も温かいし」
岬はくりっとした目で視線を向け「私は修平お兄様の事を信じているし従うのみです」と言う。
ともあれ、断固としてボイラーの起動に力点を置くよう決意した。
次の日から早速ボイラー管理室で、操作法の基本中の基本から始めた。
部屋に籠った僕に、岬、真利亜、倫と交代で昼食を持ってきてくれる。
僕は感謝しつつも、何とか理解しようと心掛けた。
時間は最大の教師である。
数か月で、ボイラーの起動法と維持・管理の理解が出来た。
肝心なのは実践で通じるかどうか。
ボイラーを起動し、室温を上げる。
熱い。
3人が部屋に飛び込んできたのと同時だった。
「熱いよ!」
「暑いです…」
「あつーい」
三人十色で僕に不満を向ける。
「ボイラーが付いたんだ! これで風呂も入れるし、冬も寒くない!」
真利亜は「え、本当! やっと風呂入れるー」欣喜雀躍した。
倫と岬は、感情には表さないが、静かに微笑みを浮かべていた。
風呂云々よりこれで落ち着いた生活が少し出来ると安堵したのだろう。
これで冬についての不安も消えたし、外部からの侵入者もあり得ないので、駐屯地の散歩がけら、歩き回った。
4人一緒だが、手榴弾や各種拳銃、自衛隊のライフル(正式な名称は不明)が山と積まれている。
話し合った結果、岬と真利亜にも護身用をかねて、拳銃の操作を倫からレクチャーさせることになった。
それでなくても、暇で時間は余りある。
彼女たちが練習している間、自衛隊の狭い書庫に並ぶ本をぱらぱらとめくり、、みんなで読めるような本をピックアップし、おみやげとして持って帰った。
やはり一番喜んでくれたのは岬であった。
岬には負い目がある。
その野犬に噛まれた傷跡、縫う技術が無かったせいか、大きく残ってしまった。
岬は「命が助かっただけ儲けものです」と言ってくれた。
でも、それから僕も岬も安定剤を飲む量が増えた。




