熊、襲来
この家にあった地図で、動物病院の場所を確認する。
家から数キロの位置にそれはあった。
事前に簡単な食糧を持ち、銃火器の確認をすませ、キャンピングカーに乗り込む。
岬と真利亜は不安そうな表情を浮かべているので、無理に笑みを作り、大丈夫大丈夫と告げ、手を振りながら、動物病院へと向かう。
野犬やらカラスが騒いてたが、車の中に居る限り、安心。
それにしても、人が消えた街は急速に寂れていく。
僕が知っている街ではもう無かった。
倫はサングラスをかけ、口笛を吹いていた。
何と聞くまでも居なく、ワルキューレの騎行、悪趣味だと僕は思う。
動物病院に到着する。
周囲を確認し、僕と倫は車から降りた。
何故、割れたのだろう、風にでも煽られたのか、動物病院のドアガラスは無残に割れていた。
「これで解錠する羽目省けるね」
「でも、どうして割れたんだろうなあ」
僕は不思議に思った。
そして、病院内に侵入する。
窓口は無視し、薬品庫を探す。
すぐに血清は見つかったが、施錠されてた。
「鍵って大体窓口にあるよ、お兄さん見てみよ」
案外簡単に、様々な鍵束が受付につるしてあった。
「ええと、薬品庫…薬品っと」
薬剤保管庫という名称で、鍵がぶら下がっていた。
それを取ると、薬剤保管庫へと向かう。
かちり、という音がし、薬剤保管庫の扉は開いた。
二名で必死に、狂犬病の血清を探す。
これは歳の項というべきか、僕が血清を見つけた。
在るだけカバンに詰めると、部屋をで、外に出ようとしたとき、車と入り口の間にツキノワグマであろう、巨体がどんよりした視線で僕たちを見つめている。
何時、その巨体がドアを打ち破り、中にはいってくるか分からない状態である。
思わず唾を飲み込む。
倫は少し震えながら、サブマシンガンを包んでいる布切れから取り出し、熊に向かい、右膝を地面につけ、銃口を熊に向ける。
と、倫が迎え撃つ態勢体制を取るのと、熊がドアのガラスを打ち破り、僕たちに襲い掛かるのはほぼ同時であった。
サブマシンガンの銃声が響き、熊は一声叫ぶと、自らが作った血だまりに倒れこんだ。
倫は真剣な声で「まだ居るかもしれないから、早く車に戻ろうお兄さん」と言った。
僕たちは慌てて、車に向かい、乗車した。
二人とも息を荒げ、しばらく動くことも出来なかった。




