除雪作業
キャンピングカーは夏用タイヤなので、スタッドレスタイヤに替えなければならないのだが、 説明書を読んでも良く分からない。
仕方がないという風で、倫は取り替え方を指示してくれて、何とか、計6本のタイヤを換え終えた時は、汗でびっしょりだった。
僕が風邪を引くわけにはいかないので、体を清拭した後、毛布に包まり、ソフォーに座り込んでいた。
「ちょっと! ご飯はどうするのよ!」
真利亜は、僕を見下ろしながら、詰る。
「私みたいに風邪を引いたら困りますし…どうせ缶や真空袋を空けるだけなので…私たちでも出来ますよね」
岬は、珍しく真利亜に反論した。
「まあまあ、そんなもめる事でもないでしょ。お兄さんの分もドンと作りましょ」
倫はそんなことをいい、結局、三人といれば意見もそれぞれ個性が違うんだなと思った。
コーンポタージュと乾パンと缶詰のソーセージがその日の朝食だった。
文句は言えないが、全部開けるものじゃないかなあと思ったが、三人が誇らしげに笑みを浮かべていたので、僕は何も言わず、朝食を全部平らげた。
「除雪車も来ないし、雪はねをしないとね」
僕は食後のコーヒーを飲みながら言った。
「でもこの人数でこの広さの駐屯所を除雪するの大変ですね」
岬は、心配げにいう。
何でも無いように倫は告げる。
「あ、それ心配ないよ。物置を探ったら除雪機があったから」
「どうしてそういう大事な事言ってくれないかなあ」
僕は思わずぼやいた。
それに構わず倫は「暖房は薪を使うとして、灯油も相当量あるから春までは大丈夫だし、言うまでも無いでしょ」とのたまう。
「だからあんた、ほうれんそうって知らないの?」
真利亜がそういうも、倫は馬耳東風であった。
冬は深まっていく。
カレンダーだけは忘れずに捲って行ったので、今日が何月何日かは分かった。
そのようなささやかな儀式を行なわないと、自分たちの居る寄る辺が無くなってしまうようで怖かった。
雪はねは自然と僕の仕事になった。
倫などは体力を保つために、やりたいとせびったが、刃物がついている以上、12歳児にさせる仕事ではない。
それに最近は外は野犬のうろつく場となり、拳銃を持って出かけなければ、怖くて仕方が無かった。
僕は雪を撥ねながら、何時も考える。
考えても仕方の無い事だが、何故こういう事態に陥ったのか、他の人たちは、一体どこへ消えてしまったのか。
答えは出ず、何時も白い雪の中で、僕の思考はぼやけていった。




