岬、発熱
そしてその日、岬が激しく発熱した。
当初は食欲が無いという事だったが、それが続くので体温計で熱を測ると、高温であり、僕は慌てて最初期に薬品から手に入れた抗生剤と解熱剤を与え、ゆっくり休むよう言いつける。
岬は熱で潤んだ視線を向け「…申し訳ありません……私、弱くて」と弱弱しく呟いた。
「何言ってるのよ、風邪位早く治しなさいよね」
倫は何言わず、部屋の隅で両手を組みながら、それでも心配そうに視線を向けている。
「いや、僕が悪かったんだ。無理させたから」
「大丈夫ですよ。私、すぐに治りますから」
その晩は眠れず、他の二人が寝た後も、僕は本をよみながら、氷を取り返えたり、たまに体温を測ったりしていた。
朝方が近づきうとうとしていたのだろう、ふと僕を呼ぶ声が聞こえる。
「…朝ですよ、修平お兄様。風邪、だいぶ良くなったみたいです。本当に…ありがとうございいました」
岬の顔を見ると、つぅと涙が流れていた。
僕は困惑したが「何でもないよ、それよりも岬が良くなって良かった」と、、涙には触れず、安堵の言葉を告げた。
このような状況が続き、心身が弱い岬が一番に弱ってしまったのだろう。
僕はこれからはメンバーの心身の状況も頭に入れなくてはと思った。
これから長い冬が始まる。
物資の面は貯めに貯めて余るくらいだが、一日中、コテージに籠っても鬱々とするだろう。
僕は次に外出する際は他の3人でおもちゃ屋に寄り、みんなで出来るゲームを拝借しよ
うと考えた。
岬の額に手を乗せると、まだ微熱が感じられる。
もう少し眠って休むよう言いつけ、どたばたと、朝食を作っている倫と真利亜にはあっさりとした朝食をリクエストしたがどうなることやら。
味噌で味付けたおかゆと、僕たち用にパンと缶詰のコンビーフが用意されていた。
あの二人では上出来だなと思い、褒める。
「馬鹿ね。この位簡単よ」
「野菜が足りないけど我慢してね」
それぞれのセリフと共に、本当にささやかな朝食を摂った。
岬はみんなに風邪が移るとまずいので、可哀そうだが、ベットルームで一人で食べてもらっている。
明日にはみんなで食べることも出来るだろう。
翌朝になると、岬も元気を取り戻し、皆でまた行動することが出来るようになった。




