拠点場所
でも、僕たちは一つ確かな事を掴んだ。
この膨大な糧食も、安全な場所にしまいこまなくては、ダメになる可能性もある。
「それにしても私たちって苦労性よね、消えちゃった人が恨ましいわ」
本音ではない事は分かっていたが、真利亜の気持ちの一部であることには痛感した。
「…私もそんな事、思うときがありますよ」
岬ちゃんも うんざりとして答える。
出来るだけの事はしているつもりだが、そうなんだろうなあと、僕は少し落ち込む。
お兄さんが落ち込むこと無いって。精一杯やってるし、私たちに手も出さないでしょ」
倫は二人を見渡す。
「良いも悪いも二人が残っているという事は、お兄さんは良くやってくれてるよ。それだけは自覚しなくちゃね」
「岬は微笑みながら、修平お兄様には感謝していますよ。ただ、薬の影響でネガティブになってしまうこともあって。ごめんなさい」
こくりと頭を下げる。
真利亜はふんと、両手を組みながら「そりゃー、感謝しているわよ。感謝感激だし。私みたいな美少女には苦難は尽きないわ、まったく」そして冗談ぽく破笑した。
さて、僕は残りの糧秣を何度も往復しても、違う場所に移す算段であった。
4人で何だかんだ話し合いが続けると、岬が一つの意見を出した。
この近くに別荘街がありますし、私の家のもあります。
そこを一種の拠点としてはいかがでしょうか?
賛成多数で、その別荘街を拠点とすることが是とされた。
倫は「山奥だし人気も無いだろうしね。火事にもならないし一石二鳥だよ」と続け、
「何かあったらこれが火を噴くから」と布に含まれたサブマシンガンを掲げる。
僕は無理に「熊とか野犬にも使えるしねとフォローした。
真利亜は山に虫がいるーとか、畑仕事とかするんじゃないでしょうねと、ぶつくさ文句を言っていた。
恒常的に命を繋ぐには作物栽培は欠かせないだろうという意見でとりあえず一致はしている。
別荘街にはそれぞれ井戸が装備され、その点も安全だ。
ここに付いた時、ガイガーカウンターで数値を測定したが、前回とさほど変わりなく、一人で安堵したものだ。
このあたりを拠点とすることには問題が無いように思われた。




