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美少女! サバイバル!!  作者: お茶のみ(初心者晒し中)
見殺し
18/102

雨の日の憂鬱

 他の二人が少し後ろに離れて、何か話ふけってるのを確認し、倫に話しかけた。

 

「ガイガーカウンターで毎日測定しているんだけ、少しづつ上がってきているんだよね、どう思う?

 「冷却出来ないとアウトって父さんから聞いてたし、もうダメなんだろうね」

 「もっと離れないとということかな」


 倫は頭の後ろの腕を回し、軽く欠伸する。

「お兄さん考えすぎだよ。幸い、この辺りは原発が少ないし、私たちが生きている間は大丈夫っしょ」

 僕は頭をかいた。

「それじゃ、次の駐屯地を永住的な場所と見なして大丈夫という事だね」

「一つだけ問題があるけどね」

と、続ける。


「他に人が居て、共存が難しい場合、どうするか」

 僕の胸に暗雲が立ち込める。

 何も言えず僕は歩いていると、倫は更に続けた。

「そういう場合、デリートしかないよね」

 ゆっくりと車を運転しながら、先ほどの倫の言葉を反芻する。

「デリート」

 出来るか否かは分からないけれども、そういう事態になったら僕自身の手を染める事をその時、覚悟した。


 その日は曇天で、雨がぱらついていた。

 真利亜は窓を少し開け、手を出しながら、雨を手のひらに受けている。

 曇天の日は僕は調子が悪い。

 先ほど安定剤を飲んだので運転する以上、これ以上量は増やせず、鬱々と運転を続ける。

 岬ちゃんは本を読み、倫は寝室のルームで眠っていた。

「ねえ、岬…真利亜、もし、もしもだよこれから先、人に危害を加えることが自分たちを守ること繋がっていたら、出来るかな?」

 真利亜は窓を閉め、そっと嘆息した。

「出来るも出来ないも、やることになったら、やらなきゃならないでしょ、愚問よ愚問」


 岬ちゃんは、本に、栞し、その本をテーブルにおいて、僕の方に視線を向け、小首を傾げた。

「私たちが安心を求める以上、そういう事態になったら相手の安寧と私たちの安寧、即ち正義と正義の応酬だと思います」


 一息に言い、息をつぐむ。

「そうなったら正義と正義のぶつかり合いで、真の意味での正しさは無いのではないでしょうか」

 直接、僕の質問には答えず、間接的に答える岬。

 ふと、ベットルームから声が聞こえる。

「アンタたちって案外まともだね。その為の武器でもあるし、武器にはそれ以上の意味も価値もないから」

 

 倫は目を閉じていただけなのだろう、そう答えた。

 その後は沈黙が続き、ぽとぽとと、天井に雨粒がぶつかる音がする。

「どのくらい進んだかな」

 僕は倫に問う。

 地図を取り出し、開くと指で探りながら、答える。 

「お兄さん、残念。この調子だとまだまだ掛かるね

「そっかー、はぁ…」

 思わず嘆息した。

「雨は嫌ですね。過去のダメだったこと、嫌だった事が思い浮かびます

 岬は、ぽつり呟いた。

 真利亜も流石に、どんよりとした表情を浮かべている。

 先は、まだ長かった。

 当初はスマホに連動させたスピーカーでの呼び出しを続けていたが、そのうち辞めた。

 これ以上、人が集まっても、キャンピングカーに収容できない事と、偶然、女の子ばかり

集まってしまった僕たちの単位は、色々な意味で危険を秘めている。

 それに…一番の理由は、どうせダメだろうという諦念であった。

 「あーあ、憂鬱」

 真利亜は背伸びしながら、吐息した。

 岬はトランプで一人占いをしていたが、心ここにあらずという感であった。

 「雨の日は憂鬱って誰が決めた?」

 倫は、ベットから起き上がり、キャンピングカーのリビングに向かう。

 両手をポケットに差し込み、悪戯そうに笑っている。


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