募る、不安
ご飯を食べ、眠る準備を済ませると、電池式の電灯を消す。
深淵の闇が広がり、星々が明るく輝いてる。
夏の大三角形、あ、北斗七星も見える。
夏の夜空は綺麗だけど、吸い込まれそうな冷たさを感じた。
岬ちゃんと真利亜も同じ感想を得たらしく「もう寝ませんか?」という岬ちゃんの言葉に同意し、眠りについた。
次の日は少し曇天であった。
何だか、天気の悪い日は調子が悪い。
しかし、移動のペースは上がり、その日の午後には政令都市に到着した。
案じていたように町全体が燃え盛っている事も無く、道路には放棄された自動車が散らばり、街中に入ると、かさかさと音を立て、軽いゴミが道路に散らばっている。
カラスの鳴き声だけが、鋭く響いていた。
まずは予定どうり、この街を抜け、郊外にある自衛隊の駐屯基地に向かった。
岬ちゃんは窓際から外を見、身を竦ませている。
以前、行ったように拡声器での残存した人を探す行為は行う。
反響音に刺激されるのか、カラスが上空を乱舞している。
真利亜も空中で旋回乱舞するカラスの群れが気持ち悪いのか、視線を上げずゲームに逃避していた。
「岬ちゃん、真利亜、大丈夫かい?」
岬ちゃんは無理に微笑み「大丈夫です」と告げる。
真利亜は、「こんな事くらい平気よ」と強気に告げた。
街を進んでいくと、放棄された自動車やゴミで中々進みにくい。
街中で動いている人工物が僕たちの車だけのこともあり、カラスは兎も角、後ろに付けてくる野犬の群れが不気味であった。
ぽつりぽつりと、雨が降り出す。
暗澹たる風景を、更に暗くする雨。
そんな中をゆっくり運転で、街を横断し、郊外へと向かう。
「…何だか不気味」
真利亜がそう呟く。
「そうですね…人気が無いこういう場所って初めてです」
僕はあえて陽気に「渋滞が無くて良いよ」とバカみたいなことを言った。
真利亜はじとっとした視線を飛ばす。
「あんたは良いから前を見て運転していてよ。事故ったらお終いよ」
岬ちゃんもはらはらするかのように、両手を固く握り結んでいる。
「はいはい。運転手はおとなしく運転しますよ」
政令都市を抜けたのはその日の午後だった。
時間的にこれから暗くなるので、自衛隊の基地への侵入は明日にすることになった。
「こればっかりね最近」レトルトのカレーを口にしながら真利亜は嘆息する。
「でも美味しいですよ、これ」
岬ちゃんはフォローするかのように言ってくれるが、確かに食生活は貧弱そのものである。
早急に改善しなくてはならないが、もしかしたらば自衛隊の基地に人が居て、この悪夢のような世界から脱出することが出来るかもしれない。
砂粒のように淡い願いではあったが。
その日の夜は、郊外にあるガソリンスタンドで夜を明かした。
当然、給油は欠かさずに行う。
暗くなるまでは、3人でトランプやジェンガで遊び、お互いの不安を打ち消しあった。
暗くなると何もできない。
電灯を消し、眠りながら朝を待つ。
岬ちゃんに眠剤を渡し私、僕も自分の分を飲み込み、眠りにつきながら朝を待つ。
ガソリンを入れ、駐屯所を目指す。




