薬飲み
外に出て、車の傍で、三人で座りながら、昼食を摂る。
風が気持ちいい。
でも、僕は決して気を抜かず、西部劇のガンマンのように何時でも拳銃を抜けるように、腰に付けている。
自然は残酷だが悪意はないのだろう。
だけども、人間の悪意は果てしない。
こうなったからにはすきにするさ、という人間も多いのではと推察していた。
が、しかし推察は推察であり、もうこの世界は空っぽで僕たち以外誰も居ないのかもしれない。
本当の所は何も分からない。
小休止を終え、車で走り続ける。
郊外の風景が広がり、実った作物は収穫されず、朽ちていく運命なのだろう。
僕は少し憂鬱になり、薬を飲みこむ。
音楽のチャージャーを操作し、少し前に流行った流行歌に変える。
「もう、なんで曲変えるのよ!」
後部の座席で岬ちゃんとトランプをしていた真利亜はトランプを一枚僕に投げつけた。
「ロックはもう良いよ。それよりも疲れない曲が聞きたいから」
珍しく僕が意見したので、文句を言いつつ、真利亜はトランプに戻っていく。
軽いエンジン音と、小さめに絞った流行歌を聞きながら、僕はゆっくりと運転していく。
考えるべき事はたくさんある。
まず第一に、何故他の人が居なくなったのか。
こういう話がある。
キリスト教原理主義では、空中携挙という概念があり、最終戦争前に、義人は肉体を持って神の国に導かれ、残るのは悪人。
悪人はサタンに導かれ、争い続ける。
僕はその話を聞いた時、冷笑したものだが、今となっては笑えない。
なぜ、なぜ、なぜ…。
少なくとも答えを探すことだけに専念する余裕は無く、生き残る為に必死にあがき続けなければならない。
野生の中では、考える事、それ自体が贅沢品なのだから。
日が暮れる前に、車を道の端に停める。
レトルトカレーを温め、温水で温めるご飯に乗せて晩御飯とした。
「カレーって飽きないわよね」
真利亜はもぐもぐと美味しそうに食べている。
岬ちゃんは食欲が無いのか、食べるペースが遅い。
僕は安定剤を半分にし、岬ちゃんに渡す。
「ありがとうございます、何だか憂鬱で」
「もう無理をする必要は無いよ。使えるものは使っていこう」
真利亜はちんちんと、皿にスプーンを打ち付ける。
「仲の宜しい事で。岬、アンタって薬中なんだ」
岬ちゃんは何も言えず、俯いている。
「人は必要だから薬を飲む。飲みすぎなければ、生きていく手助けになるよ。風邪ひいたら真利亜も風邪薬飲むだろ? それと同じだよ」
岬ちゃんがかわいそうに思ったのか、真利亜は追及を止めた。
「ま、良いわ、私には関係無いし」




