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短編・習作集

僕の猫好き彼女

作者: 綿花音和

 僕の彼女は、猫好きだが猫に嫌われる。野良は勿論のこと、猫カフェに行っても猫の島でも見事に逃げられる。

 猫の島の世話役のおばちゃんが、

「あなたは、色々重いのよ」

 と指摘していた。

 確かに彼女の愛はやや重い。ついでに身体も重い。それでも好きだ。

 

 美人じゃないし、可愛い方でも一般的にはないのだろう。

 

 逃げられてもつれなくされてもめげずに猫を追いかける姿がいっそ清々しくて僕は嫌いじゃない。策を弄さず、ひたすら猫に近付きアタックする滑稽な姿も好ましく思っている。

 僕は勝手に猫が寄って来る体質だ。二人の間では『にゃん徳』があるとかないとか言ったりする。

 きっと僕は素っ気ないフリが出来るから猫の気が引けるんではなかろうかと考えたりする。本当のところは猫でないからわからないけれど。

 

「なぁ、なんで君は猫がそんなに好きなの?」

 ある日訊いてみた。

「可愛いから」

 即答する。彼女は、それから言葉を続けた。

「可愛くてね、素っ気ないところ」

「それは君に、にゃん徳がないからだろう。僕にはすり寄って来るよ」

 勝ち誇って自慢してみる。

「ブー。それは言わないお約束。振り向かないからこそ余計に惹かれるんだよ。恋は追う方が楽しいって言うじゃない」

 まさか恋愛論が飛び出すとは。ちなみに彼女は射手座だ。

 僕は星占いは信じない。けれど彼女は占星術の本をよく読んでいる。だから一通り星座の特徴をそらで言えるのだ。

 射手座は飽きっぽくて釣った魚に餌はやらない。相手の気持ちを自分の方に向けたら関心がなくなるそうだ。あくまでも星占いによればだ。

 僕は蠍座。秘密主義で嫉妬深いらしい。実は割と当たっている。

 

 友人たちとの飲み会で、彼女が気を遣って男友だちに話を振って楽しそうにしていると胸がざわつく。猫には好かれないが、人間には好かれる。

 そんな彼女が愛しくもあり気に食わないときもある。

 美人ではない。顔立ちも平凡かもしれない。でも、彼女の周りには人が集まる。

 きっと前世は犬だったんだ。それも大型犬。

 

 思い切り笑う君。食べっぷりがいい君。愛が重い、愛情深い僕の彼女。


 彼女は家族の話をほとんどしない。ただ、五年付き合ってきて両親が存命なこと、二人姉弟だということは教えてもらった。

 実家にはサバトラの猫がいたことも。

 

 長いこと一人暮らしをしているようだが、僕と付き合うまで、お盆もお正月も毎年一人で過ごしてきたようだ。人懐っこい人だから寂しい思いもしてきただろう。

 ある日、僕は慎重に訊いてみた。

「寂しくないかい?」

「そんなことないよー」

 彼女は笑って答えた。


 今はただ、僕は恋人をせいいっぱい大切にする。

 そしていつか一緒に猫を飼おう。猫に嫉妬するかもしれない。それもいいなと思う。

 僕は彼女を愛しちゃってる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 猫好きだけれども猫には逃げられてしまう。彼女さんと同じタイプだなとしみじみ思いました。「にゃん徳」を持っていることも羨ましいですが、ふたりの関係性も羨ましいです。  ほっこりした気持ちに…
[一言] 将来僕と彼女で猫を飼ったら、きっと『にゃん徳』の僕に彼女が嫉妬しちゃったりするのかなと想像したりして楽しかったです。 穏やかな、けれど生き生きとした何気ない日常生活が感じられて拝読後に気…
[良い点] 微笑ましいというか、ほっこりする作品ですね。 お互いに想い合っている様が伝わってきて、 優しい気持ちになります。 「にゃん徳」という言葉を使って展開されているのが 面白いと同時に、ふたり…
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