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第三殲滅隊隊長は鬼教官  作者: 鳳月 眠人
3章──Flecti non potest, frangi potest.
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番外編:アイラとの過去

「にゃんにゃんしないと……出られない障壁?」


 お約束の、定番の部屋に閉じ込められた、男女の話──


 第二警衛隊長と第三殲滅隊長がまだ軍学校にいた時の、10代だったころのお話である。



「ユイガ……? "にゃんにゃん"ってなんだ? 猫……?」

「…………」


 きょとんとして振り返る、清みきったアイスブルーの瞳。

 対してユイガは、事の面倒臭さを直感していた。



「質の悪い冗談でしょう。こんな……障壁の応用にしては高度すぎる。行使者の魔力切れを待てば……」


「解除条件まで継続させるものだろ? 特恵(とっけい)が絡んでる可能性も……というか手っ取り早く"にゃんにゃん"とやらをした方が」


「アイラ先輩」


 だめだこれは。本当に知らないやつだ。

 ここははっきりと、そう、ハッキリと申し上げなければ。


「"にゃんにゃん"って言うのは……」


「うん?」


「ハァ……性交という意味です」


「成功?」


「違う」


「性行?」


「おしい」


「精巧……」


「交わる性と書く性交です。スラングの一種です」



「…………は、」


 さすがに理解したらしいアイラは口をぽかんと開ける。

 そしてどんどん、目を見開く。目に怒りが灯る──


「そ、ンな下らない企てを……」


 頬を染めているのは羞恥か怒りか。


「ユイガ! 2人で最大魔力で貫通させるぞ!」


 アイラは、頑丈そうには見えない障壁に向かって、すらりと抜刀した刀を向けて言い放った。




* * *




「アイラ、先輩、宵國魔力等級、何級です、か」


「……1級、神官予備……お前は」


「、っは、2級、神官予備……」


「神官予備2人で貫通しない壁は駄目だ……格が違う」


 どさ、と腰を下ろす、ふかふかの寝台。

 それも、憎らしい、と言う体力はなく、ボコッと一蹴りしてからアイラは身を投げた。



「暑……」


 ユイガは雷属性、アイラは光属性──魔力を出力すればするほど、周囲の温度は上がってしまう。密室ではそれが顕著だ。


 ユイガの視線は、暑さに服をはだけさせた彼女の胸元に誘われる。汗が、流れている──


「…………」

「ユイガは」


 ぽつり、と名を呼ばれて、ユイガは意識を戻した。何か言い澱む先輩からの、言葉を待つ。



「想いを寄せている(ひと)は……」

「…………、」


 それは、どういう問いかけなのか──

 とユイガが問う前に、弁明は返ってきた。



「言いたくなければ答えなくて良い。その……指示通りにしないといけない場合をちょっと、考えて、しまって……疲れてるな、少し休もう」


「アイラ先輩こそ、好きな(ヤツ)、いるん……ですか」


 聞き返してしまった。聞いてどうする。

 もし、いたら、どうする──



「…………強いて、言うなら」


 間を置いて、アイラは続ける。小さな、声で。



「お前のことは、好いてる……」


 クールでサッパリとした性格のアイラが、色白な肌を紅潮させて、絞り出すような声で、言った。

 俯き加減で、目線も合わない。


 けれどその表情も、声も、ユイガは初めて見るもので。


 らしくない。ユイガにとってアイラは、尊敬する先輩で、格好いいな、と憧れのあった先輩。

 そんな存在が急に、とても女性らしく、手を伸ばせば届くような──そんな感覚を覚えた。



 しかしここまで言わせて、意図に気付かないほど鈍感ではない。

 ユイガは心を決めて、先へ進むための言葉を選ぶ。



「…………俺が……先輩の、初めてを……」


 もらっても、と聞く前に、ユイガの頭にある可能性が過った。初めてではないかもしれない、もしかしたら。先輩、美人だし……


 何故かモヤッとしたものが胸につかえた時、言葉に詰まったのをどう捉えたのか、アイラはいつもは快活な表情の顔を、困ったように背けた。



「嫌、ですか? ……怖い?」


「……いやじゃないし、怖く、ない。ユイガは……信じるに足る(ヤツ)だ。でも、その……できるのか、私相手に。さっきまで演習で、お前のことぼっこぼこにしてたのに」



 ある程度身体が疲れている時の方が、そういう欲求は高まりやすい傾向にあるのを、純なところのある先輩は知らないらしい。


 そうでなくても、(あつら)えられたようなこの環境に、自分に好意を寄せてくれている美人の女性。

 思春期の身体に"反応するな"と言う方が無理な話だ。



「アイラ先輩は、綺麗ですから」


 男子が悪ふざけでつくる"女子ランキング"で、自分が常に上位にいることを、本人が知るはずもない。


「お前……そんなキザなキャラだったか?」

「恥ずかしいなら、もう何も言わないでおきますけど」



 隣に、腰かける。寝台が、二人分の重みで軋む。別にこんな距離、初めてじゃないのに、なぜこんなにも心臓が煩いのか。


 いつもアイラが、自身の夜色の髪を束ねている髪止めを──ユイガは許可を得ずに、外す。


 さらりと落ちて広がる髪を指ですく。

 少し汗ばんでいて、しっとりと果実のような香りがした。

 熱が、疼く。


 強いのに華奢な身体に、そっと触れる。

 ぴく、と引かれかけた動きに合わせて、迫る。柔らかく押し倒して、彼女に影を落とす──


 上気した顔が愛しい。

 大きく開かれ、見上げてくる綺麗な瞳に、自分はどんな風に写っているんだろう。


「お世辞とかじゃ、ないって──覚えといて、ください」



───



 とかいう過去があったらエモすぎてお砂糖吐く。

 アイラ隊長マジ年下キラー。

 完全なる作者の妄想です(*´ー`*) 女子向け文ですね……ふええ年齢指定の続き書きてぇぇぇ……


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おまけ

その他登場人物image画像(ちょっとずつ増える)*

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