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異世界事情は意外に身近な所で廻っている?  作者: 渋谷 彰
第二章

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王と国民

ほんのりセピア色が入った白い世界、周りを見渡せば小さな黒い星が浮いていて、自分の知っている宇宙が反転した様な光景が広がっている。そんな中、海を(ただよ)う様に横たわり身を任せている俺は、生徒会室からフルクランダムへ絶賛(ぜっさん)世界転移中だ。


門と言うからには、(くぐ)った先には階段とか廊下とかあって、それを進むイメージを抱いていたんだけどな。(ふた)を開ければ、黒い星から別の星へ(つな)がる光の河の流れに(みちび)かれている。


白い世界は言葉で説明できるものではないが、きっと黒い星々は広大な宇宙だと思う。それは数えるのを(あきら)めさせるぐらいに多く、自分自身が如何(いか)に小さいものかと嫌でも実感させる。そして、氷見野(ひみの)式世界転移門のおかげで安定したのか、最初の様に手荒いものでないのが非常に有難い。浮遊感がちょっと(くせ)になりそうなくらい心地良いが、時間的な感覚が少々狂ってしまうのが玉に(きず)


まあ、一瞬なのか数時間なのかはわからないが、この転移の間に俺は先生の言葉を思い出し、戦火を少なくすると言う目標について思考を巡らせる。


同盟を組んだ事による戦火の拡大。多分だけど、敵国やそれを脅威(きょうい)に感じた国も同じ事を考えると思う。


戦が少なくなったとしても、これじゃ意味がなく。むしろ、同盟による技術開発が行われ、それぞれの同盟が新兵器を使用するとなれば、それ以上の被害拡大も有り得る。


「俺の考えが浅はかだったか、穴があり過ぎて笑えてくる。戦の結果が思いの外良かったし、少々浮かれてたのかもしれない……」


だけど、ドルドガーラの侵攻を阻止する為に組んだ同盟は間違いじゃないと思う。

問題はこれからだ、同盟国を増やすかどうかはガルドさん達に相談しながら決めるとして……後はそうだな、現状を把握(はあく)して何が出来るのかって所か。


そう結論を出すと同時に、凌二は黒い星に光の河と共に吸い込まれ、(しばら)く緩やかに降下すると足が地に着いた感覚を得る。そして、優しく背中を押され、階段を降りる様に水晶の外に出ると、そこはフルクランダムの古城で水晶の間と名付けられた場所だった。


古城の修繕(しゅうぜん)で最初に手を付けられたのがここであり、床に視線を向けると難しそうな文字と模様(もよう)が所狭しと描かれている。世界転移門を安定させる為に水晶を中心とし、先生から教えられた魔法陣をサラさんが徹夜(てつや)で書き上げたそうだ。


ここ最近、授業中に眠そうだったのはこのせいか……先生も無茶振りするよな。サラさんお疲れ様でした、今度ドーナツセットをプレゼントさせて下さい。


そう心の中で(つぶや)き、水晶の間を出ると(ほこり)だらけだった以前と比べ、綺麗(きれい)な石飾りや床には絨毯(じゅうたん)と本来の美しさを取り戻した通路が姿を現した。その先には見知った青年の顔があり、凌二を視界に(とら)えると笑顔と共に声を掛けてくる。


「お疲れ様です陛……」そう言いかけると、青年の後ろから「おいおい、ここは公式の場じゃねえからな」と声が掛かる。声の主に視線を向けると、そこにはダナの一番の古株の弟子ロナウドさんが居た。


「おう、(りょう)ちゃんおかえり」その声で気が付いた作業中の職人達も手を止め「凌ちゃんお疲れ様〜」と挨拶をしてくる。


正直な所、こういった事に慣れていないから(くすぐ)ったい。どう返していいのかわからないんだが……


「えっと、た、ただいま帰りました。城の修繕お疲れ様です、すごく綺麗になってて驚きました」顔に熱を感じながらも返事を返すが、変な感じになっていないだろうか?


「へっへぇ、凌ちゃん。俺達みてえな職人にぁ〜よ、城の修繕をする事は夢の様な事だからな。気合い入れて作業させてもらってるぜ」


右腕に力瘤(ちからこぶ)を作り、それを左手で叩き辺りに響き渡る音を立てる。それを合図にしたかの様に、後ろの若い職人達も頷く者や、鼻を(こす)りながら得意げな表情をする者と様々だった。


「そう言えば、今日はファムファーレン王が御訪問されたらしいが、急がなくてもいいのかい凌ちゃん?」


(わざ)とらしく咳を一つしてから放ったロナウドの言葉を受けると、同時にスマホのメール音が鳴り響いた。


「ちょっと、すいません」そう言うとメールに目を通す。


差出人はアドレアであり、そこには「お疲れ様です、ファムファーレン王はもうお帰りになりましたよ。「凌二殿によろしく」だそうです〜」


スマホの電源を落とし、上着のポケットにしまい溜息(ためいき)をつくと苦笑いを浮かべ弱々しく口を開く。


「間に合わなかったみたいです……」


「おっ、おう……残念だったなぁ。まっまあ凌ちゃんも忙しいし、しょうがないんじゃないか?」


その(なぐさ)めの言葉を受け、口角がヒクヒクと引きつりだす。


言えない! 先生の雑用をしていたなんて、口が裂けても言えない! 本当に俺が王様なんて間違ってるんじゃないのか……戦火を少なくする考えも浅はかな物だし、もっと相応(ふさわ)しい人がいると思う。


心でそう呟くと表情に出てしまっていたのか、力強く親指を立て男前な笑顔でロナウドは言い放つ。


「国は王様だけじゃ出来ないんだぜ。国民が王についていく、俺達が支えるから国になるんだ。他所の国の事は知らんが此処ではそうだ、凌ちゃんの気持ちも解るが気にする事はねえよ。」


その言葉に、自分の負の感情が討ち払われ。更には、職人達の賛同の声に心を奮い立たされる。


「有り難うございます! 俺、頑張りますので今後とも宜しくお願いします!」


凌二はそう言い勢いよく一礼をした後、「行ってきます」と元気よく言い放ち、たらふく亭に向かう。そして、だんだんと小さくなるその背中に、職人達の声援が惜しみなく贈られた。

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