戦火の行方
陽が最も高く輝く頃、フルクランダムの剣の広場は住民達で溢れていた。台座に立つ白いローブを纏ったモーリスは、住民を見渡すと静かに口を開く。
「今、陛下はファムファーレンに単身で向かわれておる」その言葉を受けた住民達は、事の重大さに騒めき立つ。ドルドガーラの侵攻については皆が知っている、そして、ファムファーレンが落ちる意味も。
「静粛に!」騒めきを力尽くで鎮める様に放つ。再び住民を見渡すと静かに口を切る。
「皆が陛下の力になりたい、共に戦いたいと思っている事は知っておる。それは陛下も同じ、だからこそ皆に助力を求めたのじゃ」
モーリスは徐に杖を頭上に掲げ、杖の先端に付けられた少々大きめの魔鉱石をキラリと光らせ「陛下の策の為、皆の声を借りたい!」そう告げると、住民達の沈黙が歓声に変わる。そして、モーリスの耳に付けられた魔鉱石のピアスから、凌二の名乗りが伝わる。
「今じゃ! 雄叫びを上げよ! 陛下をお助けするのだ!」
広場に天を貫き地を揺らさんばかりの声が響き渡る、その声は杖の魔鉱石から凌二の元に送られた。
暫くして、機動要塞グラン・タイラントの指令室に、撤退する戦車からの入電を報せるアラームが響く。兵士は迅速に対応し、其れを一段高い椅子に腰掛ける隻眼の男に報告する。
「失礼します。たった今報せが入り、黒騎士以外の騎士は全滅。援軍が迫り一時撤退するとの事です」
「ふむ、規模が解らんな」隻眼の男は観測兵に視線を向けると確認を促す。
「了解です。ですが「領域探索」外なので、もう少し近付かないと」そう観測兵は答えると、隻眼の男は諭す様に口を開く。
「地形などの詳細な情報は不要だ、それは先行部隊が持っている。今は敵の数。いや、有無を知りたいのだ。「熱源探索」を使って範囲を広げろ」
「はっ!」短く力強い返事を返すと、観測兵は迅速に索敵を始める。数秒後の探索結果を受けると隻眼の男は高々と笑い出した。
「戦を知らぬ、学者風情が戦場に立つからだ。にしても、騎士を屠る力を持っているにも関わらず、策を労するとは自惚れがない証拠。英雄王の生まれ変わりか……手合わせを願いたいものだな」
感嘆の声を呟くと笑いを堪えながら「ロドスの隊に報せてやれ」と、命令を下し。グラン・タイラントの全連絡網を開かせると口を切る。
「これより、ファムファーレン城へ侵攻を開始する、戦場は生き物だ何があるか解らん。各員、臨機応変に動く事を切に願う。以上だ」
そして、進路を機動要塞グラン・タイラント向け走る戦車はその脚を止める。
撤退しながらも、車内で治療を受けていたロドスは「ここは、何処だ……」そう呟くと、片腕の感覚がない事を知る。何事も無かったように身体を起こすと、連絡を受けた兵士が一礼し報告を行う。「は?」と声を漏らしたロドスは激昂し叫んだ。
「そうか! 我々は騙されたのか、あの「宗方 凌二」と言うクソ餓鬼に!! あの片眼の野郎も、さぞかし高笑いしてるだろう!! あの黒騎士もだ、下僕のくせに!! 馬鹿にしやがって、許さん、許さんぞおおおおお!!」
怒りを吐き出し、荒げた息を整えながら「後方の輸送部隊に城に入る様に、連絡をしなさい」と、命令を下し。思考を巡らせる為に、指をうねらせようとするが忘れていたのか、思い出したかの様に「腕も拾いに行かないといけませんね」冷静にそう呟くと、戦車の進路を城に向け走らせた。
草花や木々が生い茂る山中にて、道無き道を進み枝を踏み、草を掻き分ける音がする。それと共に、ガルドを恨む様な声も加わっていた。
「全く、張り切るのは良いんですけど、獣道ですら有りませんね。って、これは」
「全くね! 身体能力の差ってのを考えてないでしょ、あの人は!」
「あはは、ですが、後少しで抜けますから我慢して下さい」
ヨシュア、アリッサ、アドレアの三人は先行する凌二を追いかけ、鬱蒼とした森の中を進んでいた。少々湿った空気に気分を害されたのか、更にガルドに対する不満を語りながら気分を紛らわせ進む。そして、暫くすると木々の向こうから差し込む光が強くなり、吹き込む風が草原の香りを運び込んだ。
そして、森を抜け出し草原が目に広がると、ファムファーレンの城が目に入る。幾つもの荷馬車がフルクランダムに向け駆けて行き、そして、それを追い掛ける者が見当たらない事に安堵の息を吐く。
「さて、凌二君の策の運び具合はどうでしょうかね? 共に行ければ良かったのですが」
「あの時点では荷馬車しか無かったし、早馬を使っても半日は軽くかかるわ。選択の余地は無かったわね」
「サラさんが認識灯を創ってくれた事で、移動門を使ってこれたんです。良しとしましょう」
「でもね、置く場所ってのがね」とアリッサが呟くと、城の方から黒く大きな狼が向かって来る。それに跨り手を振る凌二の姿が見え、ヨシュアに声が掛けられる。「ヨシュア先生ーー! 怪我人いるからーー!」その声を聞くと、三人は凌二達の元に走り出した。
合流すると狼の口に咥えられていた王は、ぼとりとその場に落とされる。ヨシュアは直ぐに治療にあたるが、その王の扱いの雑さに凌二は心の中で「本っ当にスイマセン!」と、土下寝で何度も謝った。
そんな胸中を知っているのかいないのか、ガナードは凌二に言葉を掛ける。
「大丈夫ですよ凌二殿、うちの王はそんなに柔な方では無いですから」
乾いた笑い声で応えるが、唾液に塗れている王に視線をやると。「いや〜 そこじゃ無いんだ、俺が気にしてる所は。これ絶対に後で何か言われる!」心の中で声を大にして叫び、大事な事だけにもう一度叫ぼうと思う。
「本当に……本当に、凌二殿なのですか?」とエレナに問われる。真剣な眼差しに少し気圧されるが、凌二はその眼に失礼の無いように真剣な面持ちで応えた。
「はい、俺は宗方 凌二です。すみませんでした、もう少し早ければアミュレットが壊れる事は……」
だが、アミュレットお陰で軽傷で済んだ事は、正に幸運だった。カミラの仕事の凄さを見せ付けられた様な気がする。
そして、言葉を言い切る前に、エレナは凌二の胸に飛び込む。そして、今まで我慢していた涙を、全て流し尽くす様に泣き叫ぶ。その様子に皆、微笑みを浮かべ見守っていた。暫くして、治療を終えた王が凌二に声を掛ける。
「感動の再会中に悪いが、助けて貰った事に感謝する……援軍がこれだけか、中々のペテン師の様だな凌二殿」
「いや〜 俺は音声を出せる魔鉱石をばら撒いただけで、それだけじゃ無理だったかも知れません。上手くいったのはウチの住民達と、俺の策に合わせてくれたクラースさんのお陰です」
「まあ、折角仕掛けた爆弾を有効に使いたかった、ってのも有りますがね。凌二殿お帰りになられて、何よりです」
「クラースさんのお陰だよ。俺に出逢ってくれて、有難う御座います」深々と頭を下げ感謝すると、クラースは堰を切った様に泣き始めた。
宥める様に声を掛けている、アレンとバートも眼に涙を浮かべ。バートは凌二に視線を向けると「俺もアレンも凌二殿に出逢えたことを感謝してるよ」と、言葉を掛けてくれる。
人の繋がりの暖かさを噛み締め、瞳が潤みかけた時「で、これから如何なさいますか? 主人様」と、現実に引き戻す言葉が投げ掛けられた。一同は誰が喋っているのかと、辺りを見回す中。凌二の顔に流れる汗は滝の様になっていく。
「まさかとは思いますが……敵を一時的に撤退させた後は、何もお考えになっていらっしゃらないと? 時間を稼ぎ王を救出した事は賛辞に値しますが、敵も間抜けばかりでは御座いません。時間が経てば再び侵攻を始めるかと」
「何と……言いますか、俺的にはこれが……精一杯だって言うかね」と、刀に視線を向けあたふたと言い淀んでいる凌二を見て、声の主を辿る一同は凌二の腰に携わる刀に視線を向けると釘付けになった。
「おや、失礼しました。私は国綱、名は紬と申します。主人様と共々よろしくお願い申し上げます」
一同が驚き目を点にする中「やはり意思をお持ちでしたか」と、ヨシュアが言葉を溢すと紬は「そこらに転がる三流の伝説の剣と一緒にされると困りますわ」と、自分を誇るように言い返す。凌二には紬が高笑いをあげながら、胸を張る姿が眼に浮かぶようだった。
そんな中、「陛下〜」と、声をあげ城の方から此方に走って来る兵士が一人。
王は視線を向け「おっ、確かあの者は、物見櫓に居た兵か。無事逃げ出せて何よりだ」安堵の息を漏らし呟くが、走る姿に違和感を覚える。「大変ですーー!」と、声が掛かると共に城から轟音が響き渡る。
「どうやら、進軍が始まったようです……思ったより早かったですね、如何しますか陛下?」
ヨシュアは俺に視線を向けると、静かに言葉を掛けて来る。「陛下」と呼んだ事の意味は解ってるつもりだけど、さっき戦って解った。やはり俺は敵といえど、命を奪う事に抵抗を感じる。そして、仲間が命を落とす事だってある筈だ。王としての決断がこれ程重いものかと、戦火を前にして思い知らされる。
顔を歪め苦悩する凌二を置き去りにする様に、戦場は刻一刻と変化し与えられた時間を削り取っていく。
此方に駆けて来る兵の背後から再び轟音が響くと、城の城壁が崩れ其処から先程の二個中隊が雪崩れ込む。その様子を見た凌二は口を開くが、命を左右する重さに声が出てこない。
「宗方君、君は何を願い何を望むの?」と、背後からアリッサに問われる。視線を向けると両腕を組み、少し首を傾げ微笑みながら優しい眼差しを向けていた。
「自分の言った事、忘れたのかしら? 戦火を少なくする事を願い、同盟国を作り抑止力になる事を望んだ筈よ。そして、住……国民は貴方と共に歩みたいと願い、其れを勝ち取った。それは、貴方の願いを共に叶えると言っているのよ」
「そうですね、陛下の御心には胸を打たれます。ですが、陛下の願いを叶えるために必要な戦です。そして、戦場……いえ、戦乱の世では綺麗事ばかりでは無く、時には敵を討つと非情に努める必要も御座います」
解ってる、解っているんだ。それでも俺は……民を戦に導くなんて事はしたくない。
そう心で呟くと、見透かしたようにヨシュアは「王の我儘を聞き叶えるのも臣下の務め。御心のままに、それがどれほど過酷なものでも叶えてみせましょう」と、畏まりながら忠誠と言葉を凌二に贈る。
その言葉を受けると、凌二は諦めたように溜息をつく。今更ながら国民の願いの強さに畏れ入る「その言葉信じるよ」そう呟くと、王に視線を向け口を切る。
「緊迫した中で申し訳ないんですが。フルクランダムの王として、ファムファーレンへの同盟を申し込ませて下さい」
「は? 同盟も何も国は滅びたと言っても良い。凌二殿の益にはならん、考えるまでも無い筈だ。それに、機動要塞グラン・タイラントが後方に控えておる、進軍が始まったからには奴らも来る。あれを止める手立ては無い」
機動要塞グラン・タイラント名前の響は強そうだけど、城に入って直ぐに出たから見てないんだよね。正直なところ何も知らない、実物も見た訳じゃないから対策を練る事も出来ない。どうしよう?
凌二は、機動要塞グラン・タイラントって何? と言う感じでヨシュアに視線を送る。態とらしく一つ咳をすると、主人に恥を欠かせない様にアドレアに説明を始めた。
「ドルドガーラの魔導兵器、機動要塞グラン・タイラントですか。その姿は砂漠地帯の巨大な地龍を模した兵器でして、長距離魔導砲と対人魔導機関砲、非常に強固な装甲を持ち。対魔障壁にしても、高いレベルで備えています。難攻不落の要塞で、現存するのは一基ですが国を侵略するのには充分ですね」
腹を括り同盟を組む為に戦う事を決めたが、説明を聞きた途端に暗礁に乗り上げた。だけど、機動要塞グラン・タイラントをどうにかすれば、状況は好転するかも知れない。流石に外からどうにかなるとは思わないし、何とか内部に入って止める事が……
思考を遮る様に「陛下ーー! 逃げて下さーーい!」と声が耳に届く、視線を向けると物見櫓に居た兵が此方に辿り着こうとしていたが、敵兵もかなり近付いている。
「陛下、御命令を」とヨシュアが言葉を掛け、続ける様に「そうね、指示をお願いするわ」と、アリッサは微笑みながら口を開く。目を閉じ拳を握り締め、自分が出す命令により命が奪われる、その罪の重さを思い知る。そして、歯を噛み締め顔を歪ませると罪を背負う覚悟を決め、凌二は静かに瞼をあげ雄々しく言葉を響かせた。
「我が名を持って命を下す! この地はファムファーレンの王と民のものだ、侵攻する者共を押し戻せ! そして、誰一人として欠ける事無く、我が元に戻る事を厳命する!」
命令を謹んで受け入れる、そう意思を示す様にヨシュア達は静かに頷き、迫り来る敵兵の前に向け歩き出す。その中で微笑みを浮かべながら、嬉しそうにヨシュアは口を開く。
「いや〜 陛下からの厳命ですか、嬉しい限りです。敵兵の数は今の所二、三百と言った所ですね、私は何方かと言いますと複数戦向きでは無いのですが……」
「まあ、三人で相手する数じゃないわね、その辺は私が何とかするわ。問題は機動要塞グラン・タイラントね……対抗する魔法はあるけど、人の身だと放つのに時間が掛かるわね」
「それに関しては、何やらカミラさんに考えがあるみたいですよ?」
「そう言えば……サラも何か言ってたわね」世間話をする様に悠然と歩む三人に向け、敵兵は猛然と向かって来る。
アリッサは立ち止まると徐に腕を伸ばし、大地に掌を向け翳し詠唱を始め、幾つもの魔方陣が囲う様に浮かび上がり、黒い霧が現れ人の姿を現し始める。その数は五十を超え、魔導師として只ならぬ力を示す。
「ふう、以前はもっと多く出せたけど、人の身だとこんなものかしら」そう嘆くと、眷属達はヨシュアを中心に二手に分かれ、敵兵に向かって走り出した。ヨシュアは其れを横目に「陛下の御心に叶う戦をします。出来れば暴走させない様にお願いしますよ」意地の悪い笑みを浮かべながら言葉を掛け、歩調を崩さず散歩をするかの様に集団の中に向かう。
己を晒すように間合いに入ると、先頭の敵兵が雄叫びをあげヨシュアに剣で斬りつける。
縦に切り下ろされた斬撃は、何気ない歩法で躱され。ヨシュアが兵士の肘に掌を添える様に触れると、ダラリと肘から先が力無くぶら下がり関節を外される。更に笑顔を浮かべつつ、舞う様に位置を反転させると、兵士に残る腕の関節は音もなく外された。
息をつく暇も与えないと、背後に回った敵兵は手を緩めずヨシュアに斬りかかる。しかし、くるりと反転したかと思うと、振り下ろされる手首を掴まれた瞬間に関節を外され。そして、ヨシュアは歩法を使い兵の隣に並び立つ様に位置を取ると、「失礼しますよ」そう囁くと同時に反対の手首の関節を外した。
武器を持つ事が出来なくなった、二人の兵士は悲鳴と共に膝をつく。その声は戦場に響き渡り、敵兵団の戦意を削り動きを暫くの間止める事が出来た。ヨシュアは兵士達を視界に収めると、涼しげな表情で口を開いた。
「我が王の御心により、無駄な殺生はしません。お帰りの方は追いませんが、未だ戦意をお持ちの方は……そうですねえ、それなりに痛い思いをしてお帰り下さいね」
「戦い方も性格が出るわね。嫌味眼鏡」顳顬を押さえながらアリッサが皮肉を吐き捨てると、ヨシュアの前に二メートルも有ろうかと思う大男が、兵士達を掻き分け現れる。その手には長めのハンマーを持ち、間合いの長さは一目瞭然だった。
「貴様はどうやら、関節を外すのが得意らしいな。ならば、触れられなければ良いことよ!」
言葉を放つと共に大男は、ハンマーをヨシュアに向け薙ぎ払う。大きく逞しい体躯から繰り出されたハンマーの先端は、先程の斬撃とは比べ物にならない速さを見せる。そして、薙ぎ払う事により、ヨシュアを懐に入らせない工夫もされ、男の目には勝利を確信するものがあった。
高速で襲い来る鉄の塊、破壊力は想像を絶するものだろう。鎧すら紙と思うぐらいに簡単に形を変形させ、身に付ける者を砕く。単純であるが故に、当たれば確実に勝利を約束されていると言っても良い。
だが、そうはならなかった。ヨシュアは向かい来るハンマーを片手で受け止め、ゆっくりと眼鏡の位置を調整すると、微笑みながら飄々と口を開く。
「素手でハンマーを受け止めるのは、痛そうで嫌だったんですが。ダナさんと比べると、身体強化のレベルが違いすぎて驚きです」
大男は唖然とするも、再び撃ち込もうとハンマーを動かそうとするが、ビクともしない。ヨシュアの手は先端を掴むどころか掌で触れているだけ、何が起きているのか解らない男にヨシュアは言葉を掛ける。
「私は医者でして、医療魔法と気功……それと雷系の魔法も嗜みに憶えがありまして」その言葉を聞きながら男は顔から血が引くのを感じていた。
「気と微弱な電気信号を、武器を通じて流させて頂きまして。貴方の身体の自由を奪わせて貰いました」
男が「おっ! お前は「鮮血の死神ヨシュア」か!」そう叫ぶと同時に、ヨシュアは懐に潜り込み掌を鳩尾に当て、「ふんっ」と、気を込めると男は弾ける様に後ろに吹き飛び、他の兵も巻き込み薙ぎ倒しながら十メートルくらいの所で漸く止まる。
「やれやれ、医者に向かって死神とは失礼な方ですね。そういう人は拷……お仕置きですかね」
「「今、絶対拷問って言おうとしてた」」
アリッサとアドレアが心の中で突っ込むと、その二つ名を聞いた兵士達は、武器を投げ捨てると踵を返し脇目も振らず走り出す。十数年前に無手で戦場を渡り歩き、返り血でその身を染め上げた最凶の医師。その噂は色褪せる事はなく、戦場にいる者は出会わない様に祈る程の猛者であり。実力を目の当たりにして疑う事はなく、蜘蛛の子を散らす様に兵士は逃げて行く。
アリッサは「貴方、何したの?」と、呆れながら聞くとヨシュアは「いや〜 若気の至りといいますか、若さ故の過ち? と言いますか」頬を掻きながら誤魔化す様に答える。
「しかし、私の出番はありませんでしたね」そうアドレアが呟くと、「安心しなさい、これからが本番の様だわ」そう答えたアリッサは、向かって来るフルプレートの一団を視界に捉えていた。
その数は約六十程で、戦ではそこまで規模は大きい物では無い。しかし、それは魔導兵器であり、数以上の戦力である事は間違いなく、先程の敵兵団と比べる事は出来ない。そして、その後ろには失った腕を取り戻し、復讐に燃える憎悪の光を目に宿したロドスの姿が見え、歪んだ笑みを浮かべ口を開いた。
「私を馬鹿にした罪、死を持って償うがいい」
未だ勝利の糸口は見えず、王達を襲う新たな試練。鎧の不気味な音が戦場に響き渡る。




