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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
上陸、魔大陸!魔王と四魔公
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上陸、魔大陸!魔王と四魔公 2

章編集完了しました。1ページの文字数が増えております。

「封印の調査……ですか?」

「そう、封印の調査よ。」



 二人が話している場所は、フランソワが経営する洋服店“フランソワーズ本店”。新しいデザインの服が出来たので、シャルに着てもらおうとフランソワが誘ったのがきっかけで、今シャルとフランソワの二人がお店にいる。もちろん、フランソワがいるのがバレると大騒ぎなので秘密裏に。



「ちなみに何故フランソワさんが?」

「それはね?」



 そう言いつつ、シャルに新作の服を渡す。



「魔大陸は知ってる?」

「魔大陸ですか?」



 聞いたことがある気がするが、すぐに思い出せず首を傾げるシャル。



「やっぱり知らないのね……」

「あ、いえウォット大陸ですよね?」

「知ってるの!?」

「はい、つい最近知りました。」

「つい最近知ったの?」



 知っている事に驚いたのはちょっと失礼な気がするが、普段が普段だったので、しょうがないかなとは思った。ただ、最近知ったという言葉を聞いて何故か生暖かい目で見つめるフランソワ。



「何で生暖かい目で見るんですか?」

「シャルちゃん。知らなかった事多すぎない?少し心配になるわ。」

「大丈夫ですよ。これから学んでいけばいいんです。」

「そ、そうね。」



 シャルの意気込みに押されつつも、フランソワは話を進める事にした。



「実は私達薔薇の集いはね?この世界に災厄をもたらした存在を封印する地を監視する役目を担っているの。私は色んな所に行くから、中心となって監視してるの。」

「え?」


(それってどこまでのラインなのかしら?)



 自分が持っている情報は、あの機械音声、イビル・マリオネット、フィーから得た情報と、自身の前世の経験から予測される情報を合わせ持っているが、フランソワ達が持っている情報はどこまで踏み込んだものなのか、



「黒い煙を放つ魔物がその災厄をもたらした存在と関係してたのは最近知ったんだけど、死霊術師も文献を見る限り、どうやら私達が見た存在と同じ系統の存在なのは明白。伝承には倒されたと書いていたから、まさか封印されていて、しかもその封印が解けていたなんて知らなかったわ。」



 フランソワは真剣な表情で話を進める。



「でね?私達が知っているのは二つ。魔大陸、“ウォット大陸”に封印されている【魔剣】。竜が住む大陸、“ネオ大陸”に封印されている【邪竜】。この二体は封印を管理する存在がいて封印がいつ解けても対応出来る様に見張っているの。」

「封印を管理する存在ですか。」



 心当たりがあったが、フランソワが語ったのは、その封印を守る二つの存在の名前だった。



「ウォット大陸は前魔王である“ガングリフォン・Dダーク・イレスター”。ネオ大陸はエンシェントドラゴンの“エンド”。彼らが封印を管理しているわ。」



 恐らく、アルスの残した記録にあった、【太古の竜】と【古の魔王】事だろう。



「ただ、最近ガングリフォンさんは封印に人を近付けたがらなくて、不用意に立ち寄る事が出来ないの。私達も追い返されちゃって。エンドさんは封印されたとされる日からずっと寝たきり。一応ネオ大陸に関しては代理の竜が対応しているらしいから、封印の状況は分かるんだけど、ウォット大陸がね……」



 そこまで聞いて、自分にお願いしたい事が分かり、シャルは答えた。



「なるほど、詳細が分からないから調査したいと。」

「そう、今回の死霊術師の件を考えると状況が分からないウォット大陸が心配で。」



 今まで定期的に情報を得ていたのに出来なくなった。封印が解けていてもおかしく無い状況で、心配になるのも頷ける。



「シャルちゃんなら死霊術師を倒したていう英雄すら成し遂げられなかった偉業をさらりと成し遂げてるし、説得出来るかと思って。あわよくば【魔剣】を倒して欲しいわ。」

「偉業って、そんな……」

「はい謙遜しない!自分のやった事の重大さを自覚して!」

「わ、わかりました。」


(出来る事をしたまで、とか言わない方が良さそうね。)



 偉業などと言われるとつい謙遜してしまうが、フランソワの真剣な表情にこれ以上思った事を言うのはやめておいた。



「長期の滞在になると思うから、フィーちゃんにも伝えてね?良ければ私が留守の間泊まっても……」

「フィーに拒否されている以上難しいんじゃないですか?」

「シャルちゃんどうか交渉を。」

「フィーに言って下さいね?」



 真剣な話をしておいて、すぐに自分の住んでいる屋敷について好奇心いっぱいの目になるのはどうなんだろうと思いながらも、やんわりと断っておいた。



「所でシャルちゃん?」

「はい?」

「黒い魔物の正体について知ってたりする?」

「この前お話したかと思うんですけど?」



 フランソワはふと、思い出しかの様に黒い魔物について聞いてきた。話せない部分を除いて全て話しているので、これ以上話す事は無いのだが、フランソワはシャルの返答を聞いて少し唸った。



「う〜ん、シャルちゃん顔が一切見えないから表情が読めないのよねぇ〜。私の感が何か知っていると囁いている気がするんだけど。」


(鋭い……普段はアレだけど“賢者”と言われているだけの事はあるわ。)



 若干失礼な事を考えてはいるが、洞察力の高いフランソワに関心するシャル。フランソワは物凄く聞きたそうな顔をしていたが、シャルがこれ以上喋らない事を悟ると、



「まぁ、シャルちゃんの事だし何か考えがあるんでしょ?いつか話せる時に聞かせてね?」

「はい、いつかお話します。」



 特に追求する事はしなかった。そして、新作の服を全て試した後、シャルに魔大陸に行くにあたって説明をした。



「まず、第一に今回秘密裏にウォット大陸に行ってもらうわ。」

「下手すると追い返されちゃうからですね?」

「そう、第二にもし魔王と謁見する事になったら、“白薔薇のエンブレム”を見せる事。」

「これ、向こうの大陸でも通用するんですか?」

「するわよ?自分で言うのもなんだけど、私達有名だし、シャルちゃんの噂も向こうに伝わってるからね?容姿でバレる事はまず会った事の無い人には不可能だと思うからそこは大丈夫だと思うわ。」



 白薔薇のエンブレム。収納魔法などが便利なので日常的に使っているが、よく考えたら身分を証明するのにも使える貴重な魔導具だったのをすっかり忘れていた。



「第三に、封印を守るガングリフォンさんは堅物よ。現魔王の計らいで封印を調べる事が出来たけど、私達に全然心を開いてくれないわ。話す時は気を付けてね。」

「そうなんですか……分かりました。」



 恐らく、アルスと関わりのある前魔王ガングリフォン。出来れば色々と話したい所だが、フランソワの印象を聞く限り、詳しい事は聞けないかもしれない。少し心配につつも、シャルはフランソワの説明を聞き終わると、貰った新作の服を着て、魔大陸に向けて準備をする為に店を出た。



「あっ!屋敷の留守番の件、検討しといてね!!」

「去り際に今日イチ大きな声でお願いしないで下さい!あと、フィーに言って下さいね?」



 ◆◆◆◆



「ほほう、遂にウォット大陸に行くのでごぜーますな?」

「うん、出発は明日の早朝。今回秘密裏に行くから船でこっそり行こうと思うの。」



 シャルは屋敷に戻った後、フィーにウォット大陸に行く事を告げた。例の封印の事もあるので、すぐにフィーは納得してくれたが、少し心配していた。



「シャル様は向こうでも有名人なのではあーりませんか?」



 そう、シャルの顔は一切見えないが、ローブにフード姿の人物はいない事はないが、どこの大陸でも目立つ気がする。



「向こうでもフード付きのローブ着てる人が居るらしいから、紛れ込めると思うわ。それにすぐに中心地に足を踏み入れる訳じゃ無いし、こっそり……魔王殿下って呼び方で良いのかしら?接触するつもりだし。」

「ふーむ?まぁ、シャル様なら何が起きても大丈夫な気がするでごぜーますが。前に言っていたイビル・ナイトメアとやらには気を付けるでありますよ?もし、封印が解けていたら、キューマスターから聞いた限りでは、恐らくあの死霊術師とは別の意味で厄介でごぜーますから。」



 精神支配、死霊術とはまた系統の違う力を持つ存在。どれ程の能力を有しているかは、ほぼ不明である。



「うん、細心の注意を払っておくわ。」



 シャルは真剣な表情で頷いた。



「そうそう、シャル様。」

「何?」

「ウォット大陸に行く前に、エルエルとベリベリにも声を掛けておくでありますよ?」

「どうして?」

「どうしてって……それはですなぁ。」



 ◆



「あたしの父親と、ベリーの母親が四魔公の一人だからだ!」

「そういう事なの。」

「えぇ?」



 フィーに言われるがまま、竜の酒場ドラゴンテイルにやって来たシャル。休憩室で休憩中の二人にウォット大陸の事を話すと、シャルの知らなかった衝撃の事実が明かされた。エルはそう言った後に、厨房の方へ行ったかと思うと、とある食材を持ってきた。



「ウォット大陸に行くなら、父上にこれを持って行って欲しい!」

「これは……干し肉?」



 エルが持ってきたのは干し肉だった。



「おうさ、父上も肉が好きなんだが、流石に生肉はいつ渡せるかも分からないし腐るだろ?なので干し肉を用意した。」

「なるほど、それにしても……大量ね。」



 袋一杯に用意された干し肉を見て思わず呟く、恐らく厨房から持ってきたのだろうが、



「厨房から持って大丈夫だったんですか?酒場で出す用じゃあ……」

「買ったから大丈夫だ!たまに大量に個人購入するから在庫が多めにあるんだ。母上の分もあるぞ!」

「な、なるほど。本当に好きなんですね。」

「おうさ!」



 エルと会話していると、今度はベリーがシャルの元へ近寄り、



「私は、これを。」

「これは?」



 一冊の本の様な物を渡して来た。手作り感が強く、女子力の高そうな装飾が施されていた。



「シャルちゃんに聞いた男を落とす料理のレシピをまとめたものよ。」

「落とす?好きそうなじゃ無かったですか?」

「効果はバッチリだったわ!」

「あと、肉じゃが意外に教えた覚えがないのですが?」

「他のシャルちゃんの料理もバッチリだったわ!」


(それって、美味しければ何でも良かったのでは?」



 ベリーが物凄く嬉しそうな表情で伝えてきたので、あえて深く突っ込まなかった。男を落とせるかどうかは確証はないが、シャルの作った料理のレシピの一部が書かれているそうだ。

 ウォット大陸に行くとは言ったが、今回は依頼で行くので、これは受け取るのはどうかと思ったが、エルとベリーはシャルにしっかりと荷物を渡した後、



「「とういう訳で宜しく!」」



 と言ってきた。



「あの〜、別に遊びに行く訳でも、四魔公に会いに行く訳でも……」


「「宜しく!」」

「……分かりました。」



 そして勢いに押されて頷くシャル。どうしたものかと思っていると、フィーが近寄って来て、



「……シャル様?多分バレるのは必然でごぜーますから、多少口実の種は増やした方が良いというわっちからの助言でありますよ。」

「あ、そういう事。ありがと、フィー。」

「ふっふっふ、伊達に長生きしてないでごぜーますからなぁ。」

「とても500年以上生きている人生の先輩とは思えない程、幼い時もあるけどね。」

「わっちの心にダイレクトアタック!?」

「どういう事?」



 フィーをからかいつつ、エルとベリーに親への手土産を渡されたシャルは、次に武器の新調をする為にドッグの所へと向かった。


 ◆◆◆◆



 カーン、カーン、



「こんにちは、ドッグさん。」

「おぉ、シャルの嬢ちゃんか。」



 シャルはドッグの工房にやって来た。シャルの姿を見ると、嬉しそうにドッグは答えた。



「刀の製作は進んでますか?」

「ああ、こいつを見てみな。」

「これは……」



 そう言ってドッグは、布に包まれた一本の刀を渡した。包みを解くと、刃文がしっかりとあり、全てが銀一色ではない、鍔も鞘もしっかりと別の素材が使われ、重さも太さも丁度いい正に刀と呼ばれる物がそこにあった。



「凄いです!これはどこからどう見ても刀ですよ!」

「はっはっは!そうかそうか!」



 シャルは嬉しそうに刀を見る。ドッグもシャルの反応を見て嬉しそうに笑った。



「玉鋼、何とかなったんですね。」

「おう、嬢ちゃんの言っていた性質に近い金属があってな。何度か失敗はしたが、何とか形になった。後は鞘の装飾だったり、もう少し強度を上げたりとか、細かい所になってくるな。」

「そうですね。もし、安定して作れる様になったら、今度最高の材料を手に入れて依頼しますね。」



 そう言ってドッグの方を見たが、



「あぁ……その事なんだが。」

「?」



 ドッグは難しい表情をして、言いづらそうにシャルに言った。



「シャルの嬢ちゃん。試しにこのカタナで思いっきり試し斬りしてみてくれ。」

「はぁ……良いんですか?」

「ああ、やってみてくれ。」



 ドッグに言われるがまま、試し斬りをしに裏庭に行く。



 〜裏庭〜



「それじゃあいきますね?」

「ああ。」



 裏庭に来たシャルとドッグは、木の人形の前に立った。そして刀を構え、居合の体勢を取ると。



「……ふっ!!」



 キキキキーン!!……ピキッ!



「あ、ヒビが。」

「やっぱりかぁ。」



 思いっきり刀を振って見た。人形は問題なく切れた。しかし、シャルの持っていた刀にはヒビが入ってしまった。



「どうやらシャルの嬢ちゃんの力が強過ぎてカタナが耐えられないみたいだな。」

「か、怪力って事ですか?」



 ドッグの発言を聞いて、実はちょっと怪力なんじゃないかと気にしていたので、思わずドッグに聞いてしまった。その言葉を聞いたドッグは慌てて首を振ると、



「いやいや、もしかしたら多少関係してるかもしれないが、多分嬢ちゃん自身が持ってる魔力だったりとか、色んな事が関係してるんじゃないか?強度のある武器を使っても。思いっきり使うと必ずヒビが入る。嬢ちゃんがいつも手加減してるのは見ていて分かるが、毎回ヒビが入るのは明らかにおかしい。」

「……そう、ですよね。」



 多少関係しているって事は、怪力だと思われていた事に若干ショックを受けつつも、ドッグの話を聞く、



「このままだと、恐らく普通に良い素材でカタナを作っても。すぐに壊れる可能性が高い。」

「う〜ん、どうしたら良いんですかね?」



 まともに武器を振るえないのは割と深刻な問題だった。黒い魔物の事も考えると万が一もあるのでその問題は解決したかった。魔導の籠手はあるが、刀術で出来る事が多いので、出来れば刀が欲しかった。二人で悩んでいると、ふとドッグが呟いた。



「一つだけ心当たりがある。」

「心当たりですか?」



 シャルが聞き返すと、その心当たりについて話し出した。



「竜の住む大陸、“ネオ大陸”にある“試練の洞窟”に行けば解決するかもしれないぞ。」

「“試練の洞窟”?」


「嬢ちゃん以外の薔薇の集いが持っている武器。普通の武器とは違う感じだったろ?」

「確か、“不壊”の武器でしたか?」



 薔薇の集いが持つ武器が不壊の武器である事はガーネットやリナリーから聞いていた。特別な力を持ち他の武器と比べて明らかに強力な武器。



「そう、その“不壊”の武器ってのは、その試練の洞窟で手に入るんだ。」

「え!?」


(確か、あのアルスさんの残した石碑も武器が欲しいならネオ大陸に行くといいって書いてあったわ。)



 あの言葉を残したという事は、その試練の洞窟はアルスが遺した物となる。



「この世界中で持っているのは今の所あの四人だけなんだ。何でも資格がなきゃ試練すら受けられないらしいが……詳しい事はあの四人が知っているから、今度聞いてみると良い。」

「分かりました。」



 今すぐには行けないが、魔大陸から戻ったら四人に聞く必要がある。



「鍛冶屋泣かせの代物だがな、シャルの嬢ちゃんがまともに武器を振るえるとしたら、そのくらいの代物じゃなきゃ無理だろう。」

「ドッグさん色々と考えてくれてありがとうございます。今度他にドッグさんの知らない武器や防具があればお伝えしますね。」

「おぉ!それは嬉しいな!楽しみにしてるぞ!」



 自分の知らない武器や防具と聞いて子供の様に無邪気に喜ぶドッグ。今度日本の鎧でも教えようと思っていたので、その表情をみて顔は見えないが、シャルは微笑んだ。



「そういえば、何か用があったんじゃないか?」



 ドッグが、シャルに用件を尋ねた。刀を見に来ただけじゃない事は雰囲気で分かっていたので、気になって聞いて来た。



「あ、そうだドッグさん。私、魔大陸にちょっと依頼で行くんですけど、あるだけ剣やカタナが欲しいんです。長旅になるので。」



 シャルも本来の用件を思い出し、武器があるだけ欲しい事を伝える。



「おっ、そうか。ならいくつか作ってある筈だから好きなだけ持って行きな。金は……嬢ちゃんなら心配いらないか。」

「はい、ホルンさんのお陰で困らないぐらい貰ってますから。」



 そう言って魔道具の収納から金貨が大量に入った袋を見せるシャル。シャンプー、トリートメントの売り上げは普段の冒険者の収入を軽く超えていた。



「嬢ちゃん……もう、冒険者以外でやっていけるんじゃないか?」

「冒険者は楽しいですよ?」

「はっはっは!そうか、ならこれ以上は何も言わないさ。」



 ドッグと楽しく雑談をした後、シャルは店を出て明日に備えて買い物をした。屋敷に戻ったシャルは早めに就寝し、朝を迎えた。

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