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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
隠された封印、お助けシャルちゃん
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隠された封印、お助けシャルちゃん 23

世の中思い通りにいかないですね。お待たせしました。続きになります。

「はいっ!シャル様が作っている所をじっくり見たいでごぜーます!」

「そう?分かったわ。危ないからそこで見ててね?」

「そんなに危険なのでごぜーますか?」

「ううん。単純に火とか使うからあまり近くで見ると火傷するかもしれないから。」

「過保護でごぜーますなぁ。わっちこれでも年長者でありますよ?」

「どちらかと言うと、近くでふざけられると私の手が滑っちゃうかもしれないからね?」

「危険が危ない!?」

「どう言う意味?」



フィーに突っ込みを入れつつ、ケチャップライスをまず作るシャル。せっかくなので解説をしながら作業してみる。



「まずケチャップライスをヒヨコの形にします。」

「この時点ではヒヨコの形をした何かでごぜーますなぁ。」



赤い色をした謎の生物にも見えなくはないが、形は可愛くデフォルメされたヒヨコになった。このままではヒヨコに見えない。



「次に卵を薄ーく焼いて、ヒヨコを覆う皮を作ります。」

「ほほう?」

「そしてケチャップライスのヒヨコを薄く焼いた卵で覆います。」

「ほほう!」

「すると見た目がヒヨコっぽくなります。」

「何と!?」



赤いヒヨコの体を黄色くて薄い卵焼きで覆う事で、目くちばしは無いが、ヒヨコに見えなくもない。さらにシャルは、一緒に作っていた茹で卵を取り出した。



「そして茹で卵を半分に切ってギザギザの切れ込みを入れて帽子を作って被せます。」

「か、可愛い!」

「あとは残った茹で卵の黄身でクチバシを白身で靴みたいのを作って、周りを飾り付けます。」

「ファンタスティック!」



茹で卵のギザギザ帽子を被り、黄色い黄身のくちばしを付け、白身の靴を履かせた。



「はい、『オムライス・ヒヨコ』の完成です。」

「魔法みたいでごぜーますなぁ。」

「確かに、人によっては魔法みたいに見えるわね。」



料理をした事がある人は出来るかもしれないが、料理を知らない人からすれば、可愛く飾り付けされて作られた『オムライス・ヒヨコ』は不思議に見えるだろう。



「じゃあ、フィー。よろしくね?」

「任されたでごぜーます!!」



お皿にドームカバーを被せ、料理を収納するフィー。可愛い物好きのリナリーの元へと向かった。





シャッ!



「リナッち!出来たでごぜーますよ!」

「ねぇ、今更だけど声を抑えてくれない?多分外に丸聞こえなんだけど。」

「皆料理に夢中でそれどころではなかったでありますよ?」

「これだけ騒いで?」

「もちっ!」

「もち?」



フィーの声は外のフロアに届いてはいるが、今現在も料理に夢中な冒険者達は、リナリーの来店には気付いていなかった。そして、フィーはドームカバーに覆われた料理を取り出した。



「リナッちの要望を叶えてくれたでごぜーますよ。」

「へぇ〜、どんな料理なの?」



興味は少しあるが、実際食べるだけなのでそんなに期待していないリナリー。そんなリナリーをよそに、料理を見せる前からドヤ顔のフィーがドラムロール的な音を言いながら声を張る。



「デデデデデン!しかと見るが良い!でごぜーます!!」



パカッ、



「こ、これは!?」

「ふふん!『オムライス・ヒヨコ』でごぜーます!」



そしてリナリーの前に現れた『オムライス・ヒヨコ』。



「……え、何これ?凄く可愛いんだけど。」



あまりの可愛さにスイッチが入るリナリー。食べる気満々だったのでスプーンを持つ手がプルプルと震えている。そんなリナリーに、フィーが一言。



「さぁ!召し上がれ!」

「え?この可愛い鳥の雛を食べろと?あんた何言ってるの?」



割と本気でキレ気味にフィーに反論するリナリー。確かに『可愛い料理』を希望したが、こんなに食べるのをためらう見た目の料理が出て来るとは思っていなかった。



「無機物かシャル様以外に反応しないくせに何を言っているでごぜーますか?」

「普通に可愛いのは好きなんだけど!?くっ!?でも美味しい匂いが!!」



突っ込みながらスプーンを置こうとするリナリー、しかしお腹が空いているのと、『オムライス・ヒヨコ』から発せられる美味しい匂いに抗えなくなっていた。自然と料理に手が伸びる。



「くっ!静まれ私の右手!料理の誘惑に負けては駄目!ああ!?そんな!?」

「とても料理を食べに来た人の台詞ではないでありますなぁ。」



自分の中の何かと戦いながら、スプーンを料理に伸ばすのを止めようとするリナリー。でも、とてもお腹が空いていたので無情にもスプーンは料理に届く、



「ええい!」



そして意を決して料理を口に運ぶ。



パクッ!



「!!?」



パクパクパクッ!!



「食べ物なのは分かっているでごぜーますが、中々シュールな絵面でありますなぁ。」



リナリーの食事する光景をみて感想を漏らすフィー。その間も黙々と凄い勢いで料理を食べるリナリー。



カチャッ、



「……美味しかったわ。何これ、王都でもこんな料理食べた事がないわよ?」

「まぁ、一流のシェフでごぜーますからなぁ。それにしてもスイッチが入った人間が料理を食べると正気に戻るのでありますなぁ。」

「何気に失礼な事言ってない?」



あまりの料理の美味しさに冷静になったリナリーが感想を漏らしつつ、突っ込みを入れる。そして冷静になった所で改めて疑問が生じた。



「これ作っているの本当に誰なの?会って感想を言いたいんだけど?気になってしょうがないんだけど?」

「う〜む……リナッちは逆に言っといた方が安全でごぜーますか。」

「え?良いの?」

「本来はシメなきゃいけないでごぜーます。」

「物騒ね?」

「でも、リナッちでありますからなぁ。やろうと思えば止めれられるでごぜーますが、後が怖いでありますからなぁ。」

「良いの?」



(え?リナリー団長連れて来るの?)



「という訳で、リナッちご案な〜い!」

「ねぇ?あたしは一応忍んで来てるんだけど?」



もはや普通に個室の外に連れ出されたリナリー。流石にフロアが騒ついた。だが、スカーレット睨みを効かせた所で騒ぎは落ち着いた。



「全く、騒がしいと思ったら……フィー、リナリーに教える気かい?」

「身の安全の為にであります。」

「まぁ、リナリーなら大丈夫だね。」

「リナッちは大丈夫でごぜーますが、料理人は大丈夫じゃないかもしれないでありますなぁ。」


(えっと、防音系の魔法で出来るのかしら?って今更よね……防音!)



流石に厨房で大きな声を出されたらバレるので急いで防音を施すシャル。そして、それと同時にフィーとリナリーが厨房に入ってきた。



「シェフ!シェフ!ご対面プリーズ!」

「初めまして、私は……」



リナリーは止まった。



「……シャルちゃん!?」

「……どうも、リナリー団長。」

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