謎のルーキー end
ガラガラガラ・・・、
(大都市“ブルーマリン”か)
馬車に揺られながら、新たな地に思いを馳せるシャル。王種二体、そしてその配下を倒した彼女がそのまま街で活動出来る訳が無かった。
後日合流した増援の冒険者達が聞いたのは、たった一人のルーキーが魔物の軍勢を倒した事。そしてその話しをしていた時、そこには大都市のギルド関係者がいた。
「彼女にはCランクの昇格を受けて貰い、すぐさまCランクになって貰います。実績からしたら、Aランクを受けるべきですが、ギルドの決まりで今受けられるランクはCランクまでですから。」
シャルの今のランクはDランク、たった一人で王種二体とその配下を倒せる実力はSクラスだが、ギルドの決まりで、Cランク以上は一定数依頼をこなさなければたとえ強くても昇格できない特殊な決まりがあった。元々昇格出来る条件は揃っていたが、クレメンスでは昇格試験を行っていなかったのと、個人的な事情で後回しにしていたが、流石にそのままいく事は周りの人間が許さなかった。
「えっと、シャルちゃん?で良いのかしら?」
「あ、はい“コリン”さん。」
「大都市に着いたら、うちの団長に会って貰うからそのつもりで」
「はい、分かりました。」
今回増援で来た冒険者達は、ギルド直属の組織“青の薔薇”と“竜の牙”など、総勢千人近くの大所帯だった。事の顛末を聞いたトップの人間は、謎多き素顔見えないルーキーをスカウトしようと声を掛けたが、“青の薔薇”団の副団長“コリン”の笑顔(威圧)によって、平和的に彼女がシャルを大都市の案内と団への勧誘をすることになった。
「“リナリー”団長さんでしたっけ?団とか入った事とか無いのでどういう所か楽しみです。」
「・・・そういえば、さっきの自己紹介で行くの?」
「はい!」
さっきの自己紹介というのは、シャルが大都市の冒険者達に、『山奥でずっと暮らしてた“シャル”です。山奥で暮らしていたので世間に知らずです!』と皆に生暖かい視線を受けながら、元気良く自己紹介した事だった。もうちょっと何かひねって欲しいコリンだが、会えて直接言わなかった。
「まぁ良いけど、大都市に着いたら色々忙しいからよろしくね。」
「はい!」
寂しそうな顔をしたラルやミリー、門番のディックやクレメンスの街の人達に別れを告げ、シャルは新たな場所へと向かう。
──大都市に着いた後、彼女は知る事になる。王種二体率いる魔物の軍勢を単騎で倒した謎のルーキー“隠者”のシャルという異名が大都市中に広がっているという事に。
第一章〜完〜です。第二章からメインキャラ達が登場します。安定した投稿の為、ストックを作りたいので、約一週間執筆作業に入ります。