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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
隠された封印、お助けシャルちゃん
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隠された封印、お助けシャルちゃん 18

「話題を変えるであります。ボチボチは冒険者でごぜーますか?」

「ああ、何処にも所属してない野良のAランクだ。」

「Aランク!?なのに何処にも所属出来ないなんて……」

「所属出来ないんじゃなくて、所属してないんだよ!」

「孤独を愛する?」

「違うから、何処に入るか考えてたら決められなくて、野良の冒険者になっちゃっただけだから。」

「孤独に愛されている?」

「やめて!?」


 ボルチと軽快なやり取りをしつつ、会話を続けている。


「この酒場に来る事に対して下心は?」

「無いと言えば嘘になる……見向きもされないけど。」

「……きっと良い出会いがあるでごぜーますよ。」

「急に優しくしないで?泣いちゃうよ?」

「まぁ、そんな事より。」

「そんなにすぐに切り替えないで?」

「わっちがシャル様に仕えているのは周知の事実。せっかくなので、一般冒険者であるボチボチにシャル様の印象を聞いてみたいでありますよ。」

「“隠者”のシャルについてか?」


(なんか、気になる会話が聞こえるわね。)


 厨房の外の会話が聞こえた方が良いかと思い、魔法で聞き耳を立てると、ボルチとフィーの会話が聞こえ、気になる内容を話していた。


「そうだなぁ……まず、冒険者になって最速で有名人になる所はとんでもないよな。」

「シャル様はチートでごぜーますからなぁ。」

「“ちーと”?よく分からないが凄いって事だな。」

「まぁ、そんな所でありますよ。」


「で、謎が多過ぎる。まず顔が一切見えないだろ?誰も素顔を見た事が無いって話だし。」

「シャル様が見せようとしない限り不可能でありますなぁ。」


「最初は山奥でずっと暮らしていたって噂だったけど、実際に本人に会ったら絶対に貴族のご令嬢として思えない程所作が綺麗で礼儀正しいし。」

「隠しきれない気品。」


「声が驚く程綺麗だろ?あんな透き通った声の人。初めて見たぜ?」

「あれもチートでごぜーます。」


(うーん……やっぱり自分だと声の事はよく分からないわね。)


 自分の声が周りから綺麗だと言われてはいるが、特に自分の声を聞いても感じないので正直よく分からなかった。


「そしてあの強さ。噂だとオリビア王女殿下より強いって話だろ?どうしたらあんなに強くなれるんだ?」

「それはわっちも知りたいでごぜーますよ。何をどうしたらあんな人知を超越した力を持てるでありますか?完璧という言葉の意味にシャル様が載っていても違和感が無くなるであります。」

「そ、そんなにか?」


(そんなになの?)


 それは過大評価じゃ無いだろうか?と思いながらも、ボルシチの仕上げに取り掛かる。


(……うん!味も大丈夫ね。フィーを呼ばないと……何で呼べば良いのかしら?)


 料理が完成しフィーを呼ぼうとしたが、声を掛けたら間違いなく自分だとばれてしまう。なので代わりに呼べる何かを探すと、


(あ、ベルがある。そっか、バッカスさんって寡黙らしいから、ベルで料理が出来た事伝えてるんだ。)



 チリンチリンッ、



「ぬぬ!?この響き渡る音色は!?シェフがわっちを呼んでいる!!」

「おっ、料理が出来たのか?」

「首を洗って待っているでありますよ!」

「それ料理を待つ台詞じゃないよね?」



 ◆



「シェフ!わっち推参!!」

「あ、これボルチさんにお願いね?」

「はぁん!?つまみ食いしたい!!」

「は〜い駄目です。行ってらっしゃい。」

「行ってくるであります!!」



 ◆



「お待たせぞい!冷めないうちに食べないとわっちが全部平らげるであります!!」

「すでにフォークを持ってるし!?俺の飯だから!……って、これは!?」

「え〜と?」



 ヒラヒラ……



「ほっ!?」



 パシッ、



「ふむふむ?『これは『ボルシチ』。美味しい煮込み料理です。一緒に置いてあるパンと一緒に召し上がって下さい』とシェフからメモが届いたでごぜーます。」

「え?何処から届いたの?」

「天空から?」

「天使ですか?シェフは天使何ですか?」


(咄嗟にメモを風魔法で送ったけど、まさかボルチさんも一緒にボケるとは思わなかったわ。)


 フィーに料理の説明を書いたメモを渡すのを忘れて慌てて風魔法で送ったが、何故か二人共ボケた。

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