隠された封印、お助けシャルちゃん 17
「で?妖精の嬢ちゃん……」
「フィーと呼ぶでありますよ!」
「フィーの嬢ちゃん。席に案内してくれねぇか?腹ペコ何だが。」
「しょうがないでありますなぁ。ボッチのボルチにはカウンターの隅っこの席がお似合いでごぜーますよ。」
「“ボッチ”って何!?」
「孤独を愛する人の事でありますよ。」
「孤独じゃねぇから!?愛してねぇから!友達いるから!ていうかカウンターの隅っこの席に案内しようとするな!何でさっきから言葉に棘があるんだよ!?」
「羞恥の目に晒されながら一人カウンターの隅っこに移動する勇者“ボッチ”ご案な〜い!」
「お前の所為だろ!?あと“ボルチ”だから!!」
最初に入って来たのはボルチだが、此処は大酒場。次々とお客が入って来てはボルチとフィーのやり取りを暖かい目で見たり、笑いながら通り過ぎっていった。
◆
「ふぅぃ〜、一仕事終えたでありますよ。」
「フィー、何であの人をあんなにからかったの?」
「いじって下さいと言わんばりのオーラを放っていたからでありますよ。」
「何それ不憫。」
厨房に入って来たフィーは、満足そうな表情だった。
『お〜い!注文は!?』
「フィー、ボルチさんが呼んでるわよ?」
「あ、注文取ってなかったでごぜーます。」
「からかう事に全力を注がないで?」
「今行くでありますよ〜!」
◆
「何を食べるでありますか?」
「そうだな……あ、そう言えばバッカスさん達って王都に行ってていないんだよな?誰が料理作ってるんだ?」
「超一流のシェフが今回臨時で勤めているでありますよ。」
「何だそれ?一流のシェフって誰だ?」
「世の中には知らなくて良い事もあるでごぜーますよ?」
「どう言う事!?知ったら命はないみたいなトーンで言うの止めて!?」
「細かい事を気にするとツルツルになるでありますよ?」
「何処が!?……いや!見ないで!?まだ大丈夫だけど、親父の事を考えたら将来有望だから見ないで!?」
ボキッ、ボキッ、
「どっちからど突かれたいんだい?」
「「ごめんなさい。」」
流石に騒ぎ過ぎたのか、割と本気でスカーレットに睨まれてしゅんとする二人。
「……注文は?」
「えっと、バッカスさん達が居ないなら料理人の得意なやつで良いんだが。何が美味しいか分からないし。」
「安心しな、全部美味しいよ。」
「ス、スカーレットさんのお墨付き!?え、となると余計に何が良いか迷うんだけど。」
「それなら、希望を言ってもらえれば多分希望に沿った料理を作ってくれるよ。」
「お!なら『温かい料理』で!」
「……完全にお任せだね……はいよ!フィー、厨房に伝えて来ておくれ。」
「あいあいさー!!」
◆
「注文取って来たでありますよ。」
「何を注文したの?」
「『温かい料理』でごぜーます。」
「温かければ何でも良いのかしら?」
「『温かい飲み物』だけでも許されるであります!」
「許しちゃ駄目でしょ?ちゃんと作るからね。」
「ではその間、わっちのトークで時が過ぎるのを忘れさせるであります!」
「行ってらっしゃい。」
フィーは元気良く厨房から出て行った。シャルはボルチに何の料理を作るか考え始めた。
(何が良いかな?『温かい料理』か、完全に好きな様に作って良いって事だけど……ボルチさんに作る料理……ボルチ?… …あ、『ボルシチ』!)
完全に響きで料理が決まったが、特に細かい指定も無いので、『ボルシチ』を作る事に決めた。
(“ビーツ”に似た食材ってあるのかな?……う〜ん、これなら紅くなりそうだけど冒険してみようかな?でも、トマトで何とかした方が良いかも。)
悩む所ではあるが、初日で苦情が出ても困るので、トマトに似た食材を使う事にした。
(よし、煮込んで行こう。)
トトトッ、
「シャルちゃん。こっちも注文が入ったんだけど大丈夫?」
「あ、ミントさん。大丈夫ですよ、どんどん作ります。」
◆
「さぁ、ボチボチ。わっちに遠慮なく悩み相談するでありますよ?」
「悩んでる前提!?いや、まぁ悩みと言えば出会いが無いのが……」
「ごめんなさい。」
「諦めないで!?」
カウンターの隅っこの席に座るボルチと向かい合って話をするフィー、最初のトークは彼女には荷が重かったので断った。




