隠された封印、お助けシャルちゃん 12
◆
(次はどうしよう?あの感じだと、一人ずつ出すより、一度に作って出した方が良さそうね。)
あまりにもシャルの作った料理を食べたそうにしていたので、一人ずつ出して待たすと良くなさそうだった。
(よし、実際酒場が営業開始したら色んな料理を一度に作る事になるんだし、いっぺんに作っちゃおう。)
料理を全て完成させてから持っていく事に決めて、改めて気合いを入れて料理を始めた。
(さてと、とりあえず時間の掛かる料理から作らないと、モカさんの『心が落ち着く料理』、ライチさんの『健康に良さそうな料理』、ベリーさんの『男の人が好きそうな料理』かな?)
実はその希望を聞いて厨房に入ってから下準備は進めていた。
(モカさんは『ホワイトシチュー』、ライチさんは『かぼちゃのポタージュ』、ベリーさんは定番の『肉じゃが』。)
そう考えながら、予め煮込んでおいた『ホワイトシチュー』用の鍋を見る。
(地球でもそうなんだろうけど、牧場が近くにあるから牛乳とかって新鮮で美味しいのよね。うん、良い感じに野菜も柔らかくなってる。どんな風に仕上げようかな。よくテレビで見て美味しそうだったのは、シチューの表面にチーズをまぶして焼いて、カリッカリのパン生地の中にシチューを包むやつかな?)
普通にホワイトシチューでも良いが、せっかくだし見た目にもこだわりたいシャル。
(天然酵母は……無いのね。私が持ってるのを使うか。チーズは自家製ので……)
さり気なく野営用にいつも持ち歩いている料理の材料を使うシャル。食事をきちんと取らないといざとう時に力が出ないので、いつも用意はしていた。但し今日は酒場で料理をするとの事だったので、普段は持ち歩かない食材もあった。
(……乙戯流体術“掌”の型……“蓮華”!!)
パァァン!
『な、何今の音!?』
『多分パン生地を捏ねているでごぜーます。屋敷でパンを作る時によく聞く音でありますよ。』
『『『『『パン生地を捏ねているの!?』』』』』
(うん!良い感じ!)
前世でも乙戯流の技が料理に応用出来る事は実験済みだったので何の迷いも無く技を使うシャル。しかし、普段からこの音に聞き慣れていない人からすれば驚くのも無理もない。
(普通に発酵するまで待っても良いけど、早く仕上げないといけないから……“発酵”!)
魔法を使ってパン生地を手早く発酵させるシャル。魔法を自在に使えるからこその芸当だ。そのままパン生地でホワイトシチュー用の器を作っていく、
(よし、器は完成っと……ホワイトシチューを入れてチーズを塗して……表面をちょっと魔法で焼いてから、生地で完全に覆う。後はオーブンで焼けば完成ね。食べる時にまたチーズの乗ったホワイトシチューの表面を炙るのも良いわね。)
ホワイトシチューの準備が整い、次に手をつけるのが『かぼちゃのポタージュ』。
(かぼちゃは栄養満点だから、健康にもダイエットにも良いのよね。皮ごと食べられるし。)
そう考えながらかぼちゃに似た食材を蒸してペースト状にしていくシャル。
(うん、良い感じ。後は鍋に入れて軽く調味料を入れて……じっくりと煮込めば完成ね。)
工程そのものは時間は掛かるが、やり方さえ分かれば手軽に作れるのが、かぼちゃ料理の良い点でもある。 準備が整ったので、次は肉じゃがの準備を始めた。
(次は『肉じゃが』か、前世だとテレビで男の人が好きな料理だってよく見かけたのよね。男の人に直接意見を聞いたわけじゃ無いけど。)
パッと思い付いたのが肉じゃがだったので、それを作る事に決めたが、実際男の人が好きなのかはよく分かっていない。
(何を入れよう?じゃがいもと、人参と、牛肉と、玉ねぎ、しらたきに似た奴といんげんに似た野菜……シンプルにそれだけで良いかな?)
シンプルというかど定番だが、一口サイズに切ったり、細く切ったりと、材料を切り揃えていくシャル。
(めんつゆってあったかな……無いよね。手軽に作るならそれがあると色々便利なんだけどな。今度自家製のストックしておこう。)
肉じゃが用のつゆを鍋に入れて作りながら火を通す。
(後は火の通り難い物から入れてゆっくり煮込めば完成。魔導コンロがいくつかあるから鍋とか沢山使ってるけど、よく考えると凄い事よね。うちも沢山欲しいな……今度買おうかな?)
基本フィーと二人暮らしで、誰に料理を振る舞う気なのかは知らないが、シャルの料理欲に若干火が付くのだった。
〜乙戯流解説〜
〜体術〜
掌の型“蓮華”:花が開く様に中央から外側に均等に衝撃を与える技。決して料理に使う生易しい技では無いが、シャルにとってはパン生地を捏ねるのに適した型。




