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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
隠された封印、お助けシャルちゃん
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隠された封印、お助けシャルちゃん 11

料理の表現についてです。〜風や、〜に似たなどを使って表現します。異世界ならではの固有名は作者の表現力が乏しいので割愛します。

「じゃあ、色々仕込みをしていきますね。皆さんは、席で待ってて下さい。」


「「「「「は〜い。」」」」」


 シャルのがそう言うと、全員厨房を出てテーブル席に向かって行った。


(さて、煮込み料理とか色々用意しないとね。包丁はこの前ドッグさんに作ってもらったのを使って、調味料は……色んな種類の調味料があるわね。バッカスさん達が集めたのかな?あ、でもあの調味料が無いから収納から出そうかな?)


 屋敷でも料理はしているが、こういったお店で大勢の人に料理を振る舞うのは初めてなので、正直ちょっとワクワクしていた。


(開店まで時間はあるから、少し時間を掛けて作る料理も作れるかな?)


 前世での料理の知識、今世でアルスの残した資料から得た料理の知識。それをフルで活かせるチャンスはそうそう無い。そして今世でシャルの料理の味をまともに知っているのはフィーだけ。なのでシャルは浮かれていた。



 ◆



(まずはスカーレットさんの『お酒のつまみになる様な簡単な料理』か。)


 シャルは目の前に並べた材料を見ながら考える。


(鯖みたいな味のする魚を使った味噌煮?あ、焼き鳥とか良いかな?一口サイズに切って味を付けて焼くだけだし。)


 料理が出来る人の感覚ではあるが、実際作るのは料理人。なら、定番の料理を振舞っても良いだろう。


(それと、ナッツ類を焼いた『焼きナッツ』も香ばしくて良いと思うのよね。)


 シャルは前世ではお酒は飲めない事は無いが、基本は飲まないタイプの人間だった。ただ、料理をするにあたって美味しい組み合わせとかは研究していたので、個人的に合いそうだなという料理のプランがあった。


(焼き鳥って、塩が好きな人が多いけど、タレも色々こだわって配合出来るからタレも良いのよね……うん、両方とも用意しよう。)


 まず手に取ったのは鳥(食用の魔物)。細かく切って一口サイズにする。塩を練り込む事で身が引き締まり美味しくなる。塩も単純に加えるだけでなく香料も加える。


(タレは醤油ベースにしよう。アルスさんって調味料は充実させてるのよね。料理は意外と広まって無いけど。)


 もしかしたら残しているのかもしれないが、誰も正解を知らなくて作られていない可能性もありそうだ。そう考えながら、シャルは醤油を取り出して甘く味付けをする。甘ダレが個人的には好きだからだ。



 ジュ〜……、



『はう!?良い匂いがするのにゃ!!』

『『あ、本当だ。』』

『あ、三人ともずるい!』

『ふっふっふ。鼻が良いのは確かにずるいかもしれないでごぜーますが、料理が出てくる時間は変わらないから、逆に料理を待つ時間を長く感じて辛くなるでありますよ!』

『『『はっ!?』』』


(フィー、活き活きしているわね。)


 焼き鳥を作りながら、厨房の外から聞こえる会話を聞くシャル。テンションが上がっているのだろう。フィーの活き活きとした声が聞こえる。



(次は焼きナッツね。フライパンで炒るのも良いけど、オーブンで焼くのも意外と良いのよね。)


 あまりやると焦げてしまうが、少し焼き目が付くのが美味しい焼きナッツだ。今回はフライパンでちゃちゃっと作る事にした。


(……うん!スカーレットさんの料理はこれで良いかな。鍋の準備も良い感じだし、とりあえず食べてもらおう。)


 他の料理の準備も進めつつ、スカーレットの料理が完成した。





厨房の外に料理を持ってくると。


「スカーレットさん。まずはスカーレットさんの希望の料理が出来ました。」

「おっ、あたいの料理かい?」

「はい、『焼き鳥』と『焼きナッツ』です。」


「「「「「……美味しそう。」」」」」


 スカーレットの前に塩とたれの『焼き鳥』、『焼きナッツ』を置いた。


「へぇ〜、串に鳥の身を刺して焼いて、こっちは木の実を焼いたのかい?」

「そうです。どっちも簡単に作れるんですよ?」

「なるほどね〜。料理が出来るってのは本当なんだね。じゃあ、早速頂くよ。」

「どうぞ、召し上がれ。」


「「「「「じぃ〜〜。」」」」」


 フィーを含めた八人の物欲しそうな視線がかなり気になるが、今回は材料の関係もあるが、一人分しか用意していない。スカーレットは八人をガン無視して、出された料理を食べる事にした。


「まずは『焼き鳥』からだね……どれどれ。」


 パクッ、


「!!?」


 その瞬間、スカーレットに衝撃が走った。


「どう、ですか?」

「……な、な……」


「「「「「な?」」」」」


「なんて美味しいんだい!!?」


 スカーレットは酒場全体に響く様な声で叫んだ。


「ただ鳥肉を焼いただけかと思いきや、噛めば噛む程味が出て口の中で香りが広がって……ああ……美味しいねぇ!」


 スカーレットはそう言いながら焼き鳥を豪快に頬張る。


「……よし!お酒を一本空けよう……」

「スカーレットさん!開店前なのでお酒は禁止ですよ!!」


 あまりの美味しさにお酒が欲しくなって手を伸ばすが、ミントに止められた。


「くっ!ミント、なんで止めるんだい!?こんな美味しいつまみが出たら飲まないと……」

「駄目です!バッカスさんに留守の間はスカーレットさんがお酒を飲み過ぎない様に面倒をみてくれと頼まれてるんですから!」

「まだ一杯も飲んで無いじゃないか!?」

「飲んだら止まらなそうな勢いだから、止めてるんです!!」

「……分かったよ。」


 ミントに怒られ、渋々お酒を飲むのを諦めたスカーレット。


「次は焼きナッツだね……!?こ、これもかい!?ただ焼いただけなのになんでこんなに香ばしくて美味しいんだい!?」

「少し香りの良い油で炒ってるので、普通より香ばしいんですよ。」

「……ミント〜。」

「駄目です!」


 お酒が飲みたくてたまらなくてミントを見るが、折れる気はなさそうだ。


「……本当に料理が上手なんだねぇ。もう合格でも……」


「「「「「まだですよ!」」」」」


 スカーレットがこのままシャルに合格を告げようとしたが、他のメンバーから待ったが掛かった。


「スカーレットさんだけ料理を食べてずるい……じゃなくて!竜の尻尾ドラゴンテイルには色んなお客様が来店するので、沢山の種類の料理を作れないと対応出来ないですよ?なので私達の希望した料理も作ってもらう必要があります!!」


「「「「「そうですよ!!」」」」」


「そ、そうだねぇ。」


 ミントのもっともらしい言い分と、従業員達の圧力に納得するスカーレット。


「シャル様!スイーツ!!」

「はいはい、下準備は進めてるからもう少し待ってね。」

「わ〜い!!」


 その横でいつも屋敷でやっているやり取りをするシャル。


「「「「「シャルちゃん!次の料理を!!」」」」」


「は〜い、今準備しますね。」


 シャルはミント達に急かされて、厨房に戻って行った。

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