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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
対決、闇ギルド!
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対決、闇ギルド! 2

 ◆◆◆◆



「やっぱり、いつ来ても寒いわ。」

「そうなんですね。」

「シャルちゃん、そのローブやっぱり高性能ね?纏うだけで『氷原』の寒さから体全体を守れる魔導具は私もまだ作れてないのよ?」

「フランソワさん、今は闇ギルドを壊滅させる事に集中しましょう。」

「……そうね。今は、諦めましょう。」


 数日後、俺達は『氷原』に着いた。全てが凍った大地、装備と道具さえ整えればこの寒さを凌げる。シャルが着ているローブは魔導具らしいが、魔導具に関しては右に出る者がいないと言われている“賢者”さえ作れない魔導具を身に纏っている彼女は一体……


「それで?何処に闇ギルドの本部があるの?」

「このまま真っ直ぐ行くと辿り着く。とは言っても、何もしなければ方向感覚を鈍らせられて、何も無い所を歩かされるが。」

「本当によく気付いたわね?」

「この辺りの魔物の生態調査をしていたらな、黒い煙を纏った魔物が突然目の前から消えたんだ。気になってザードと色々試してみたら行けたんだ。」

「その行き方は?」

「説明する。」


 しばらく歩いた後、とある場所で立ち止まる。


「ここだ。ここから行き方を説明する。まず、地面の氷を砕く、そして砕いた氷を持って真っ直ぐ歩く。」

「氷を持つの?」

「この氷には魔力が宿っている。恐らく、この氷原を作った魔力の持ち主と、あの場所を隠した魔力の持ち主が同一人物であるのが理由だ。持っていると、その魔力に共鳴して道が開く。」


 そう言って全員が氷を砕いて手に持った。


「……なるほど、これは予想外ね。」

「道が見えるわ。」


 手に氷を持つと、妙に整備された真っ直ぐな道が現れた。まぁ、現れたと言っても、初めからここにあるのだが。


「……この道……隠れてたんだ。」

「何か言ったか?」

「いいえ、このまま真っ直ぐ歩けば良いのね?」

「ああ。」


 “隠者”が首を傾げていたが、特に問題は無い様だ。


「そういえば、氷は砕いて無くならないの?」

「ああ、氷は魔力で形成されているからな自然と再生する。原理はよく分からないが。」

「それが本来あり得ない現象だから、私もここを調べてたんだけど。分かったのは、この場所を作ったのは尋常じゃない魔力を持った存在って事だけね。氷は魔導具の素材にたまに持っていくけど、再生する理由は解明されてないわ。こんな奥で氷持ったまま歩くなんて考えた事もなかったし。でも、危険な魔物を封印する為にこの場所を作ったのなら、もっと色々解明出来てもおかしくはないわ。」


 “賢者”はやはりこの『氷原』が気になっていた様だ。俺もここにいた間は調べていたが、あの魔物が封印されていた事、氷は砕くと再生する事、ここを作った奴が尋常じゃない魔力を持っていた事。何か理由があってここを隠していたという事くらいしか分からなかった。他者が聞けばそれでも充分じゃないかと言われるかもしれないが、核心に迫る答えが見つかっていない以上、充分ではない。


「それにしても、この辺りで仕掛けて来ても良さそうだけど、何もして来ないわね?」

「気配を探ってみたんですけど、待ち構えているって感じですね。色んな気配が混じってますけど、ほとんど一箇所に集まってるみたいです。」

「……分かるの?何も感じないけど?」

「そうですか?」

「幻を作っている魔方陣か何かの影響で、そういった系統の事はほぼ不可能な筈なんだが……」

「シャルちゃんは常識で判断しちゃいけないのね?」

「……拗ねますよ?」


 実力者が多いというのもあるのか、これから大きな戦いがあるとは思えないくらい緩やかな雰囲気になった気がした。気がしただけで、全員警戒しているが、


「さて、最後だ。目の前に見えない壁がある。」

「壁?」

「……確かに、前に進めない。」

「その壁に向かって持っている氷を目の前に投げる。」



 ピシッ、



「そうすると亀裂が入るから、その亀裂にめがけて突っ込めばいい。」


 そう言って俺は、壁の向こう側へ抜けた。



 タタッ、



「へぇ、不思議な仕掛けね。」

「普通では辿り着けないですわね?」

「……調べてみたいけど、また今度になりそうね。」


 それに続いて、次々と壁を抜けて来る薔薇の集いと冒険者達……そして、


「……やっぱり私、無効化してる?」


 何かを呟きながら壁を抜けて来るシャル。彼女が入ってきた時だけ氷が飛んで来なかった気がするが……気のせいだろう。


「さぁ、見えたぞ。あれが闇ギルドだ。」

「……かなり大きいわね。」

「今なら禍々しい気配をはっきりと感じます。」


 全体的に黒を基準にした大きな黒い建物。闇ギルド本部……もう来たくはなかったが、あれとは決着をつける必要がある。


「……ギルスさん?あっちの建物は?」


 シャルが闇ギルド本部とは別の方を見て聞いてきた。だが、そっちには、


「何を言っている?何もない筈だが?」

「シャルちゃん?何か見えてるの?」

「うん?……う〜ん……ごめんなさい、私の気のせいでした。何もありませんね。」


 彼女は何か見えた様だが、俺達は何も見えない為首を傾げるしかなかった。実際、彼女の見ていた方には何もない筈だ。ザードが操られていると認識した時も、ザードを操っていたらしき奴は闇ギルド本部以外に何かある様には言っていなかった。


「ええっと、闇ギルドの入り口近くに、沢山人がいます殆ど一つの軍隊ですね。魔化を施された人がほとんどです。それ以外は魔物らしき者とよく分からない者がいます。」

「よく分からない者?」

「はい、混じっていると言った方がいいかもしれません。人ではなく完全に魔物みたいですが。」

「“キメラ”だな。」

「“キメラ”?」


 シャルが気を取り直して闇ギルド本部の気配を探った。魔化を施された人、魔物、そして“キメラ”がいる様だ。


「違う種族の魔物同士を合成した存在の事を言う。ザードが研究していた筈だが、奴はその技術すらも利用している様だ。」

「貴方は研究してたの?」

「いや、交配をさせた事はあるが、物理的に混ぜた事は無い。どちらも外法ではあるがな。」

「……そう、とにかく警戒した方が良さそうね。」


 “賢者”が質問をしてきたので答えたが、正直に答え過ぎたか?何か言いたそうだったが、今は無視してくれるみたいだ。


「どうします?」

「あの数と配置は、完全に来る事が分かってる配置ね。あたし達が真正面から突っ込むからその間にシャルちゃん達は潜入した方が良いわ。潜入と言うよりは、浸入かもしれないけど。」

「分かりました。浸入した後、皆さんが入りやすい様に道を確保します。」

「宜しくね。」

「では私達は援護に入ります。」

「任せてね?」

「はい。」


 薔薇の集いは軽く作戦と立てると動き出した。


青の薔薇(ブルーローズ)!、竜の牙(ドラゴンファング)!突撃!!」


「「「「「おぉ〜!!」」」」」


 “氷帝”の掛け声と共に冒険者達が突っ込む、無謀かもしれないが実力者揃いの組織なら問題はなさそうだ。


『来タゾ!冒険者達ダ!!』

『迎エ討テ!!』


 妙な言葉遣いの者が冒険者達に気付き声を上げた。


「我々も行きましょう。」

「シャルちゃん、先導よろしく。」

「任せて下さい!ギルスさん。」

「ああ。」


 影の心臓(シャドウハート)とシャル。俺達はこの戦いに乗じて闇ギルド本部に乗り込んだ。


「案外、すんなりと乗り込めたな?」

「誘ってるみたいですね。表の戦力はあくまで軽い時間稼ぎ、リナリー団長もそれが分かって突撃したんだと思います。それに、どうやら自分の意思を持っている人は居ないみたいです。」

「どうゆう事だ?」

「さっきの魔化を施された人達、意識を失って操られていたみたいですから。」


 確かに妙な言葉遣いではあったが、操られていたのか。


「奥の方により強力な力を持った人達がいます。恐らく幹部の人達かと、後は各所に人と魔物とキメラが散らばっていますね。もしかしたらその人達は実験台にされた人が殆どかもしれないです。」

「……シャル君。気配だけでそこまで詳細に分かるのかい?」

「私達の仕事が無くなりそうね。」


 確かに、シャルの気配察知は常人の域を達している。向こうも浸入される事を予測出来ても、すぐに配置まで読まれるとは思わないだろう。


「指示を出している存在は私とギルスさんが気を引けば何とかなります。これから、影の心臓(シャドウハート)の皆さんには魔化を施された人達と、実験台になった人達を捕獲してもらいます。魔化の方の対策ですが、取り付けられた魔物の一部を切り離せば操られる影響が少なって捕獲しやすくなる筈です。殆ど魔物化している人は、魔法で弱らせて拘束具で捕まえるしかなさそうですね。」

「切り離した場所が再生する事は?」

「使った魔物によるとは思いますが、基本的には無い筈です。魔化そのものは感覚での判断ですが不完全な状態な気がするのでその能力を持った魔物を使ったとしても能力引き出せない気がします。」

「感覚でよくそこまで見抜くものだな。研究資料を以前見た事があるが、シャルの言った通りの筈だ。何故奴が不完全な研究を使ったのかは不明だが、あんた達ならその辺りにいる奴らは簡単に捕獲出来る筈だ。」

「分かった。では四人一組で別れて捕獲に向かう。シャル君とギルスは、ある程度安全が確保出来たら外に人達に合図を頼む。」

「分かりました。」

「ああ。」


 シャルから散らばっている人達の大体の位置を聞いた影の心臓(シャドウハート)の団員達は、各方面に散っていった。


「それにしても、本来正面から突破しようとしたり、少数で幹部を討とうなど無茶な話だな。」

「人命が最優先ですからね。それに、絶対に何とかするっていう決意がありますから。」

「それを実現出来るからこそ、無茶な事も任せられるのだろうな。」

「ええ、信頼が成せる事ですね。」


 顔は見えないが、その雰囲気から強い意志を感じる。真に英雄と呼ばれるのはこういった所でも安心出来る心の強さを持つ者の事を言うのだろうな。


「私達も行きましょう。」

「ああ、だが一つお願いしたい事がある。」

「お願いしたい事?」

「さん付けでなくていい、敬語も無しだ。最初に会った時はそうだったろ?」

「えと、その時は警戒してたので……」

「嘘だな。敬語じゃ無い方が素だろ?敬語で話されるのには慣れていないから、出来れば最初の時の方が助かる。」

「……分かったわ。行きましょう、ギルス。」

「ああ。」


 シャルと共に幹部の待つ場所へと向かった。



 ◆◆◆◆



「闇ギルドにいた人の中に、仲が良かった人はいるの?」

「純粋に研究について質問してくる奴や手伝ってくれる奴もいた。後々そいつらは狂った様に研究に没頭し始めて、正気では無くなったが。」

「……そう。」

「このギルドに所属する時点で、まともな道は歩んでいないさ。例え話の分かる奴でも、何かのきっかけでおかしくなる事もある。俺だって、まともな分類には入らないさ。」

「貴方は純粋に研究がしたかっただけなんでしょ?まともかどうかは重要じゃないと思うわ。重要なのは、他人を害さず己を磨ける事。それに今貴方は、他者を救う為に自分の身を削っている。きっと貴方を評価してくれる人も居るわ。少なくとも私は貴方を悪く評価はしない。」

「……そうか、そう言ってもらえるだけありがたいな。」


 彼女と話していると、勇気が湧いてくる。彼女は恐らく人を見た目では判断しない。その者の本質を見て判断している様だ。正直こう言ってもらえたのは初めてだ。


「この先にいるみたい。どうする?私が貴方を守りながら全て片付けても良いけど。」

「任せた……と言いたい所だが、俺もちゃんと戦える。自分の身は自分で守るさ。」

「そう、なら気にせずに戦わせてもらうわね?」

「ああ。」


 奥に進むと、悠然と立つ見知った者達がいた。


「よう、裏切り者。よくもまぁ抜け抜けと戻って来たもんだな?」

「ギルス先輩?裏切り者には血の制裁ですよ?」

「変なローブの野郎もいるが、すぐに片が付く。」


「久し振りだな“ファイブ”、“シックス”、“セブン”。」


 目に前にはかつてまともに研究していた三人の幹部がいた。


「ギルス、その呼び名ってあだ名みたいなもの?」

「ああ、そうだ。確かその方が覚えやすいとか言って奴が付けていた。」


 あの三人は比較的最初はまともな方だった。奴と共同で研究を始めてから変わってしまったが。


「何故裏切った?こっちの研究に全く手を貸さないのは最初からいけ好かなかったが。まさか、組織を潰しに来るとはなぁ。」

「なに、変わってしまったお前達の目を覚まさせてやろうと思ってな。」

「変わった?変わったのはギルス先輩の方でしょう?ザード様が嘆いていたよ?」

「むしろ俺達の方がザード様に頼まれたんだ『親友の目を覚まさせてやってくれ』とな。」

「……やれやれ、一番の元凶がそんな馬鹿みたいな事を言うとはな。」


「「「ああ?」」」


 少し煽ったつもりだったが、どうやら癇に触った様だ。


「やっぱりお前は気にいらねぇ!ぶち殺してやる!」

「ザード様を悪く言うなんて、やっぱり変わったのはあんたの方だな!」

「喰い殺す!」


 その叫びが合図となったのか、奥からあいつらの部下が出てきた。全員普通の姿だった。そういえば、幹部であるこいつらも魔化を施されているのか?見た目は普通の人間にしか見えないが。


「まぁ、魔化で強化された程度じゃ相手にすらならないが。」

「ああん?……おおっと!そうだ怒りで忘れる所だったぜ。」

「ん?」

「どうせお前は魔化程度とか思ってるんだろ?」

「あはは!残念!試験段階だった実験は完成したんだよ!未完成の“フォルズ君”とは違ってねぇ!」

「試験段階?それは一体……」

「こういう事だ。」



 メキメキメキ!!



 奴らの見た目が変化していく、だが魔化の様な不完全な姿ではない……これは、


「これがザード様が完成させた研究“魔人化”だ!!」


 ファイブは獅子、シックスは鳥、セブンは狼の魔物の特徴を持つ人型の完成された存在になった。


「“魔人化”?」

「そうさ!魔族とは違う分類の存在!強力な力を持つ魔物を完璧に取り込み制御する事によって完成される至高の姿!!」

「ここいる全員が魔人化出来るのさ!あんた達二人くらいなら容易く殺せる!!」

「さぁ、大人しく俺らに喰われな!!」


 そう言って奴らは一斉に攻撃を仕掛けてきた。



「……はぁぁ!!」


「「「「「グゥ!?」」」」」


 だが、シャルの剣撃で全員が吹き飛ばされた。


「“魔人化”……ね。確かに強力な力を持っているみたいだけど、舐めてもらったら困るわ。」

「……一撃で全員を吹き飛ばすとはな。」

「これくらいどうってことはないわ。大人しく話を聞いていたけど、ろくな研究してないわね。」

「まぁ、闇ギルドだからな。」

「どうする?ギルス。」

「幹部の三人は俺が相手をしたい。」

「一対三だけどいけるの?」

「ああ、問題無い。」

「捕獲する?」

「出来ればそうしたいが難しいだろうな。可能な限りで良い。」

「分かったわ。他の人達の相手は任せて。」


 俺とシャルは剣を構える。吹き飛ばされた奴らが起き上がる。


「クソが!何なんだテメェは!?」

「吹き飛ばしたくらいでいい気になるなよ!!」

「殺す!!」


 吹き飛ばされた程度じゃ怯まなかったみたいだな。奴らは体勢を立て直すとこっちに向かって来た。


「ファイブ、シックス、セブン。お前達は俺が相手しよう……火よ、貫け……ファイヤーランス!」



 ゴォォ!



「ああ?」

「届くわけ無いでしょ?」

「ふん!」


 ファイブには効かず。シックスは空を飛び避け、セブンは拳一つで魔法を消した。


「さっきはあの野郎の攻撃に油断したが、その程度の攻撃でどうにかするつもり……」


「ギルス!後は宜しくね!」


 その間にシャルは他の者達を別の方に吹き飛ばしていた。仕事が早いな、


「あの野郎!」



 ブン!



「チィ!ギルス!テメェ!」

「おいおい、言ったろ?お前達は俺が相手をするって?」

「だったらすぐに殺してあげますよ!」


 そう言ってシックスは空中から風の魔法を繰り出した。俺はそれをギリギリで躱す。


「喰らえ!」

「……ロックウォール。」



 ドォン!



 セブンの拳を土の魔法で防ぐ、どうやら三人の気を引く事には成功した様だ。


(さて……)


 三人同時に相手をする。単純に考えれば無茶な話だが、勝算はある。あいつらが魔人化とかいう実験に成功したお陰で余計にな。


「これだけは言っておかないとな。」

「ああ?」

「お前達は強い。」

「おいおい、今更怖気付いたのか?」

「命乞いでもしますか?」

「いや?それは必要無い。魔人化という実験結果は予測出来ていた。本当(・・)のザードが残した資料でな。」

「本当の?……あんた何を言っているんだ?」


 俺の言っている事に首を傾げる三人。戦う事よりも俺の言葉に興味を持つ、


「あいつがまだ少しだけおかしかった頃、魔化の研究をしていたあいつは言っていた。『この研究は無意味だ。』とな。」


 闇ギルドを作る前の……完全に操られる前のザードが残した研究資料だが、魔化について細かく記されていた。人と魔物融合。単純に考えれば、二つの力が合わさりより強力な力を得られると、だがそんな上手い話がある訳が無い。


「完成された至高の姿?見た目は改善されたかもしれない、力も強くなったかもしれない。それでも、お前達を倒す事は容易い。」


「やってみろよ?」

「ただのハッタリでしょう?」

「所詮雑魚の戯言だ。」


「なら、証明してやる。」



 バッ!



「……フレイムボム。」



 ドォォン!



「「「?!」」」



 短く詠唱して、目の前で爆発を起こす。


「まずはファイブ。お前だ。」

「な?!」



 ギィィン!



 不意を付いて剣を振り下ろす。だが、魔人化で強化された腕に弾かれる。


「はっ!剣も通せないで何が容易い……」

「獅子の魔物の特徴は力が強く、肉体の強度が高い。純粋な力比べでは勝てない。」

「だろ?だから俺には……」

「ただ動きが単調で読み易く、目視で獲物を追いやすい。よって……」



 ザァ!



「うぐ!?目が!?うわぁ!?」

「目潰しが非常に有効で、フェイントにかかりやすい。」


 土の魔法で少し尖った砂を生み出してファイブの目に掛けた。目を潰されたファイブは両手で目を抑えながらバランスを崩して後ろ向きに倒れた。


「ファイブ!?この!」


 次にシックスが空から攻撃を仕掛けてきた。セブンはまだフレイムボムの影響を受けている様だ。



 ギィン!



「鳥の魔物、シックスのは死の鳥と呼ばれる毒を持った個体の様だな。」

「だから何だって言うんですか!」

「死の鳥は飛行能力に長け、毒の爪で相手を時間をかけて仕留める厄介な魔物だ。攻撃しようにも空を優雅に飛び回る飛行能力の高さで中々倒せない。」

「喰らえ!」


 シックスが毒の爪で攻撃を再度仕掛けてくる。


「……ロックウォール。」



 ガキッ!



「ちぃ!」

「厄介な相手ではあるんだがな、鳥型の魔物ほぼ全てに当てはまる事だが……」

「もう一度……」

「……フラッシュライト。」



 ピカッ!



「な!?」

「光に弱く、そして……フレイムボム!」



 ドォォン!



 シックスの目を眩まし、フレイムボムの衝撃波でシックスよりも高く跳ぶ。


「空を飛べる事に優位性を感じているのか、真上からの攻撃には弱い。」



 ガァン!



「ぐわぁ!?」



 シックスは間抜けな声と共に地面に叩きつけられた。


「後はセブンだな。」



 ブォン!



「……おっと。」

「ギルス!喰い殺してやる!!」


 怒り狂ったセブンが飛び掛って来た。


「狼の魔物は嗅覚に優れ、動きが素早い。五感に優れている強力な魔物だ。」

「喰い殺す!」


 やはりさっきの特殊なフレイムボムが効いていたのか、相当怒って我を忘れている。


「今体験した様に狼の魔物は嗅覚が優れている為、普通の人間が耐えられる少し酷い臭いにも耐えられない。」

「ガァァ!!」

「そして暑さにも弱い……フレイムサークル!」

「ぐぅ!?これで勝ったつもり……」

「おかわりだ。特別製だぞ?」



 ポン!



「ぐわぁぁぁ!?」


 昔実験で偶然出来た酷い臭いのポーションを炎の陣の中で拡散させた。炎の陣によって陣の外に臭いは来ないが、中は地獄だろう。



「ぐっ……」



 バタンッ!


「研究者を舐めるなよ?伊達に魔物の生態を知っている訳じゃない。魔人化は強くなるが、魔物の弱点と人間の弱点が合わさり弱くもなる。対策もろくに立てていないお前達なんて脅威でも何でも無い。」


 地面に倒れてジタバタしている三人を“賢者”から預かった拘束用の魔導具で動きを封じる。あれだけ威勢のいい事を言っていたのに呆気ないものだ。

魔物の生態は、作者の独断と偏見で書いています。

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