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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
対決、闇ギルド!
60/111

対決、闇ギルド! 1

シリアス回開幕です。この章は残酷な表現が多々含まれる事があります。読む際はご注意を。ギルス視点がメインとなります。いつもの感じとは雰囲気が変わります。この章は、ほぼギルス視点です。

 ◆◆◆◆



「……これは、一体何だ?」

「……魔物?……原型は無い。だが、あまりにも禍々しい。」

「俺達の知らない魔物……」

「調べる必要がある。最近現れた妙な魔物と関係があるかもしれない。」



 ◆◆◆◆



「……闇ギルドの幹部?」

「ええ、今ギルド総本部にいるわ……まさか、自分から捕まりに来るなんてね。」


 シャルとリナリーは、ギルド総本部に向かいながら会話していた。突然、一緒に来て欲しいと言われ付いて来たが、その理由は驚くべき内容だった。


「罠の可能性は?」

「“影の心臓(シャドウハート)”や、他のメンバーも警戒してくれてるわ。今の所罠の線は低い。彼自身は抜け出して来たって言っているわ。」

「なるほど。」


 話によるとその闇ギルドの幹部は妙に協力的らしい、罠の可能性も疑ったがどうやらそういう訳でも無い様だ。


「だから、シャルちゃんにも判断してもらいたいの。本当に信用していい人物なのか。」

「分かりました。」


 シャルは頷き、リナリーと共にギルド総本部に向かった。



 〜ギルド総本部〜



「リナリーさん。」

「シリウス。」


 ギルド総本部に着くと、紺色のローブに灰色の仮面を着けた男が現れた。


「えっと?」

「シャルちゃんは初めてだったわね。彼は“シリウス”、“影の心臓(シャドウハート)”の団長よ。」

「初めましてシャルさん。」

「初めまして、宜しくお願いします。」


 二人は軽く挨拶を済ませ、


「あの男はどう?」

「色々と暴露しています。今まで手に入らなかった情報が嘘の様に手に入ります……信用して良いかどうか、判断に困りますね。」

「手荒な真似はしてない?」

「何も。攻撃の意思が全く感じられないので。」

「そう……ああ、シャルちゃんにも、判断してもらうから。」

「分かりました。では、こちらへ。」


 シリウスの案内の元、シャルとリナリーは闇ギルドの幹部の元へ向かう。



 ◆◆◆◆



「ヒナ。」

「団長!あ、リナリーさん……と、シャルさんね!」


 部屋に入ると、灰色のローブを着た桃色の髪の明るい雰囲気の女性がいた。


「シャルさんは初めましてね?私は“ヒナ”。“影の心臓(シャドウハート)”の副団長よ。」

「宜しくお願いします。」


(日本人の名前?)


「あの、“地球”って言葉知っていますか?」

「ちきゅう?何それ?」

「あ、いえ、何となく聞いただけで……」

「んん?」


(本当に知らないのね。またキューマスターが広めた名前ね。)


 見た目は日本人では無いが、ヒナという人物に会いもしかしたらと探りを入れたが、どうやら違う様だ。


「自己紹介は済んだかな?」

「はい、団長!」

「あの男はどんな状況かしら?」

「ちょうど一息ついた所です。少し休ませてますよ?どうやら闇ギルドの本部からここまでほとんど休まずに来たみたいですから。」

「そう……もう少しだけ頑張ってもらう必要があるわね。とりあえずシャルちゃんに会わせてみるわ。」

「はい!では案内します。」


 ヒナに案内され、奥へと進む。



 ギギィ、



「貴方にお客様よ。」

「……客?」

「さっきはどうも。」

「“氷帝”……そっちは、“隠者”の?」

「初めまして、シャルと言います。」

「……ギルスだ。」


 部屋に入ると、周りに何人か人がいた。そして席に一人の男が座っていた。男はリナリーとシャルに気付き、挨拶をしてきたシャルに対して自分の名前を言った。


「貴方が闇ギルドの幹部ね?」

「ああ、そうだ。」


(この人……本当に闇ギルドの幹部?)


 ギルスという男に会って思った最初の印象は、疑問だった。禍々しい雰囲気も無ければ犯罪に手を染めた人間が持つ独特な雰囲気も無かった。


「失礼だけど、闇ギルドの幹部にしては犯罪に手を染めてる感じがしないのだけど?」

「ああいう連中と一緒にされても困るがな……まぁ、幹部と言っても研究を自由にさせてもらっていただけだ。外法な研究ではあったが、俺自身は誰かに危害を加えた事は無い。ザードが勝手に指示していた様だ。」

「なるほど。」


(嘘は付いてない……彼は闇ギルドではどういう立ち位置だったのかしら?)


 話を聞くと、彼は純粋に何かの研究をしていただけの様だ。完全に誰かに危害を加えていないかは定かではないが、どうやらまともな人物みたいだが、


「それで?俺の頼みは聞いてくれるのか?」

「頼み?」

「彼が言うには、闇ギルドのボス……ザードという人物は何者かに操られているそうです。」

「操られている?」


 ギルスの話では、闇ギルドのボス、ザードは操られているとの事。以前はギルスと同じ純粋に研究をするだけの人間だったそうだ。


「俺とあいつは親友だった。昔のあいつをよく知っている。だからこそ、あの状態が異常である事は分かる。」

「操られている……その可能性は確かにありそう。」


(だとすれば、あの邪悪な力も説明がつく。)


 ザード本人が“ルーイン”の影響を受けた訳ではなく、ルーインの影響を受けた魔物がザードを操っている。前世でもあれは人間に憑く事は無かった。その可能性が濃厚だろう。


「出来れば、あいつを救いたい。勝手な話だというのは分かっている。それでも、俺はあの頃に戻りたいんだ。」

「…………。」


 彼の目は真剣そのものだった。彼からは裏を感じない。


「どう?シャルちゃん?」

「大丈夫です。彼は信用出来ます。」

「そう……ギルス、貴方は闇ギルドの幹部だったから。全員が完全に信用するのは難しいわ。でも、シャルちゃんがこう言ってるから、私も貴方を信用して協力する。」

「……ありがとう。」


 ギルスに協力する事が決まった。目的は闇ギルドの壊滅。そして、操られている者を救う事。



 ◆◆◆◆



「ギルス、あの魔物との関連性について分かった事がある。あれは普通の魔物ではない。数こそ少ないが意思を持ち、それぞれが強力な個体だ。今はその辺にいる冒険者や俺達でも倒せない事はないが、放っておけばどれだけ力をつけるか分からない。」

「それは本当かザード?もしそうなら、かなり危険な魔物だ。」

「ああ、もっと調べる必要がある。」



 ◆◆◆◆



「……夢か。」


 “氷帝”が手配してくれた宿のベッドで目を覚ます。常に誰かが見張りについている様だが、妙な動きをしない限り干渉してくる事はない。



(追っ手は来なかった……やはり表面上は俺と親友だったザードを演じていた様だが、俺自身に全く興味が無かったんだな。)



 ドラグニア王国に到着するまでの間、追っ手が来る気配は全く無かった。実力者揃いのドラグニア王国の人間が、怪しい人物は他に居なかったと言っていた。ザードが……ザードを操っている奴は俺に興味が無かったというのが分かる。



(実際、形だけの幹部だったからな……それにしても、実力者が集まる国“ドラグニア”。思っていた以上にとんでもない所だな。)



 来て初めて思った印象は、全員に余裕がある事だった。気を抜いている訳ではない、実力があるからこその余裕だ。“氷帝”は見た事があったが、それ以外の人物も並々ならない雰囲気を持っていた。



(特に“隠者”のシャルは謎が多いな。)



 “隠者”のシャル。噂でしか聞いていなかったが初めはその噂を疑った。突如現れた謎の大物ルーキー、瞬く間にCランクに昇格したかと思えば、リース大陸で一番の実力者の集まり『薔薇の集い』のメンバーに気に入られ、誰も入る事は叶わないと言われた薔薇の集いにあっさり加入した。山奥でずっと暮らしていたそうだが、立ち振る舞いから何処ぞの貴族の令嬢なのはほぼ間違いないだろう。顔は一切見えないが、驚く程の美声で隠しきれない気品。あれは確実に平民では無い。



(それにしても……まさか、俺達が調査していた魔物と戦った事があるなんてな。)



 元々ダンジョンの魔物の情報は少し掴んでいた。過去現れ、煙の様に消えた強力な個体。今まで調査した中で一番強力な個体だろうと思っていた。気になって聞いてみたが、あっさりと教えてくれた。彼女達は“ルーイン”と呼んでいた。破滅を呼ぶ魔物だと……確かにそうかもしれない。驚いたのは、それ以外にも強力な個体がいた事。



(ゴブリンキングにオーガキングの軍勢……限定的な強さを持つミノタウルスよりも危険な気がするが、“隠者”が一人で殲滅……)



 ミノタウルスも、ゴブリンキングとオーガキングも、その戦闘跡が凄まじい状態らしい。観光名所になっているのは別の意味で驚いたが、



(実力は申し分無い。信用してくれて本当に良かった。)



 下手をすれば……いや、彼女達でなければすぐに処罰されていた。



(猶予が出来ただけかもしれないが、それでも有り難い。)



 闇ギルドを完全に壊滅させる事が出来ればそれで良い。



 コンコン、



「入って良いかしら?」

「ああ。」



 ギギィ、



 “隠者”が起きた気配を感じたのか、ノックをして部屋に入ってきた。



「良く眠れた?」

「ああ、休ませてくれて助かった。あのままでは倒れそうだったからな。」

「組織から逃げ出して来たんじゃ、しょうがないかな?」



 “隠者”……彼女はこちらの様子を伺う様に聞いてきた。顔は見えないが、良く通る声と綺麗な動きで伝えてくるので分かりやすい。



「早速で悪いけど、ギルド総本部に向かうわ。」

「今すぐにか?」

「いいえ、ゆっくりで良いわ。準備が出来たら呼んで?」

「分かった。」



 彼女はそう言うと部屋から出て行った。こうしてゆっくり休めているのも、最終的に彼女が信用すると言ったからだ。だが、どうして俺自身は犯罪に関与していないと思ったんだ?



(ザードが研究の補佐が欲しいと人手を集める事手助けはした……結果は悲惨なものだった。直接では無いとはいえ、俺は間接的に人に危害を加える犯罪に手を染めてしまった。各国で許可が無いと出来ない魔物の研究や実験も許可無しに行っていた。)



 それを“隠者”に言ったわけでは無いが、疑う要素はあった筈。



(お陰でこうして休めるのだが、もう少し探りを入れるなりしても良い気がするが……)



 実際、シリウスという男は色々と聞いてきた。その内容は耳に入っている筈。



(……深く考えてもしょうがないな。)



 とにかく、これ以上考えても仕方の無い事だ。信用してくれているのなら、それに応えなければいけない。



 ◆◆◆◆



「無許可で魔物の研究……魔物の研究って許可がいるのね?」

「……知らないのか?単純な生態調査ならともかく、解剖や生体実験を行う場合は国の許可がいる。話によれば500年前から浸透している知識の筈だが?」

「500年前……なるほど。」


 ギルド総本部に向かう間、“隠者”と話をした。魔物といえど他者の命を自分の知識欲の為に研究する自分……更に間接的に犯罪に手を染めた自分を何故信用するのかやはり気になったので聞いてみたが、思わぬ返しをされた。


「シリウスさんの話はあの後聞いたけど、たとえそれを聞いた後に判断するとしても、過去に間接的に犯罪に手を染めたとはいえ、今の貴方を信用するかどうかの話だったから、ほとんど長年の勘で判断したの。」

「長年の……一体いくつなんだ?」

「15歳よ?」

「待て……思っていたよりも若いな?」

「ふふ、そうよね。」


 大人びた雰囲気からもっと上かと思ったが、どうやら違ったよう様だ。


「とにかく、私が信用すると言った以上、最後まで責任は持つわ。」

「仮に裏切ったら?」

「それは言わなくても分かるでしょ?私は甘さもあるけど、締める時は締めるわ。」


 一瞬だが彼女から殺気を感じた。本気では無い様だが、一瞬死んだかと思うくらい鋭い殺気だった。やはり気の抜けている様で、抜けている訳ではないんだな。


「そろそろ着くわ。一応言っておくけど、私が信用すると言っても皆が完全に信用する訳じゃない。だからこそ“影の心臓(シャドウハート)”の人達も自分の意思で貴方を監視している。」

「……分かっている。信用してもらえる様に正直に話すさ。」


 他の奴らは彼女に指示を受けた訳じゃないのか?裏切るつもりは毛頭無いが発言には気をつけるとしよう。



 ◆◆◆◆



「貴方がギルスですか?」

「ああ。」

「へぇ、闇ギルドの人間には見えないわね?」


 ギルド総本部の一室に何人か集まっていた。“氷帝”、“隠者”、“影の心臓(シャドウハート)”、会話をした人物もいるが、初めて会う奴も何人かいた。その中でも“聖女”と“賢者”はやはり格が違う気がした。


「シャルさんが信用するというなら、私は特に口出しは致しません。」

「私もよ。個人的には無許可で行った魔物の研究内容が気になるわ。相当危険な研究をしているって聞いたから。」


 二人は気にしないと言ったが、“賢者”は俺達の研究内容が気になる様だった。かなり真剣な様子が伺える。


「俺個人がしていた研究が、其方にとって何処まで危険かは分からないが、知っている事は全て話す。俺のしていた研究は、謎の黒い魔物についてだ。」

「「「「謎の黒い魔物?」」」」


 薔薇の集いの四人は首を傾げた。


「お前達が“ルーイン”と呼ぶ存在だ。血の代わりに黒い煙が出るのが特徴だが、現状黒い魔物は相当強力な個体に限って体の表面が黒くなる可能性が高いと判断した。」

「私が出逢った魔物は確かに黒い部分があったわね。」

「そうか、ちなみに予想では最も強力な個体は完全な黒に染まる筈だ。」

「その口振りだと、見た事があるの?」

「ああ、恐らくザードを操っているのは、その完全な黒の魔物で間違いない。」

「何故そう思うの?」

「魔物の調査の時に、偶然その完全な黒の魔物が封印されている場所に辿り着いた。そこで見た魔物は次にその場所に行った際いなくなっていた。ザードがおかしくなった後にな。」


 あの魔物を見た時から、俺達はその危険性を調べる為違法な研究を始めた。


「そして、その地の近くに闇ギルドの本部がある。」


 俺の話を聞いた四人は何かを考えている様だ。


「……封印……確かあの魔物も完全な黒だった……だとすれば今回の件は相当……」


 “賢者”が何かぶつぶつと言いながら考えていた。断片的にしか聞こえないが、あれ以外にも同じ様に封印されている魔物がいる様な事を言っている。本当なら、かなり良くない話だが。


「とにかく、今は闇ギルドよね。貴方の話が本当なら、万全の態勢で臨まなくてはいけないから。」


 “賢者”がそう言うと、皆が頷いた。“隠者”は彼女の呟いていた内容に首を傾げていた様だが、



「分かった。俺の持つ情報を改めて伝える。最初にギルドに正式に所属している人数は不明だ。ギルドを作ったのはあいつで、人を集めていたのもあいつだからな。比較的話が出来る奴や形だけ幹部になった奴とは話した事はあるが、正確な人数は分からない。」

「だいだいの予想ではどれくらいなの?」

「……そうだな、軍隊が出来るくらいの人数はいてもおかしくはない。」

「なら、その倍以上の数で備えないとね。」


 簡単に言っているが、この国だから……彼女達がいるから可能な事なのだろうな。過剰過ぎる気もするが、備えていて損はないだろう。


「次に闇ギルドがある場所、此処から北へしばらく行った所にある極寒の地、『氷原』に本部がある。」

「『氷原』?」


 俺が闇ギルドの場所の詳細を言い始めると、“隠者”が首を傾げた。


「常に凍っている地で、ちゃんとした装備じゃなければ、長時間いられないの。以前その地を調べた事があるけど、その地は何かしらの魔法で出来た可能性が高いの。」

「魔法で?」

「ええ周りの地形や気候を見る限り、その状態にはならない筈だし、あり得ない濃度の魔力が残っていたからね。でも、その場所にはそれ以外特別なものは無かった気がするけど?」


 “賢者”が説明をした。以前調べた事がある様だが、


「偶然と言ったろ?巧みに隠蔽された魔方陣か何かで幻を見せて、その場所に何も存在しない様に見せていた。俺もその場所への行き方だけを見つける事は出来たが、その原理を解明出来た訳じゃない。」

「……全く気付かなかったわ。看破には自信があるんだけな。」

「フランソワが気付かない程の魔法が施された所って……闇ギルドの本部が見つからない訳ね。」


 “氷帝”が納得した様に頷いた。“隠者”も理解した様な雰囲気を醸し出しているが、何かを考えている様に見える。


「問題はここからだ。何故かあれは“隠者”……」

「シャル。」

「……シャルを相当警戒していた。魔化を施して戦力を増やそうとしていた。その前に俺は抜け出して来たから、今闇ギルドがどれだけの戦力がいるかは想像出来ない。」

「シャルちゃんが黒幕の影と交戦したって言ってたから、その時に相当痛い目をみたのかしら?」

「皆さん何故こっちを悟った目で見てるんですか?戦ったのは影で、少し手応えがありましたが、逃がしてしまったんです。痛い目と言ってもかすり傷程度ですよ?」


(そういう問題なのか?)


 “隠者”は時々雰囲気からしても、他の連中とはズレている気がする。


「とにかく、その黒幕はシャルちゃんを完全に警戒しているから、逆に言えば私達の事は全く気にしていない可能性が高いわ。」

「ああ、俺があそこまで簡単に抜け出せたのもシャルを警戒していたからという可能性はあるだろうな。何かしら手を打たれてもおかしくはなかった。」


 単純に興味がなかったというのもあるとは思うが、


「向こうが私以外警戒していないなら、私を囮にして動きますか?」

「ううん、どちらかと言うと潜入して内側から混乱を招いてくれると助かるわ。シャルちゃんがやられることはまずないだろうし、相手も焦ると思うわ。」

「なるほど、良い手ですね。」

「ちなみに、行方不明になった人達もいますが、攫われた人がいる可能性は?」

「少なからずある……だが、可能性はゼロに等しいな。俺が隙をみて逃がした奴らもいるが、捕まった奴は実験台にされた。いたとしても、まともな状態ではないだろう。」

「……そうですか……救える人がいれば救いたい所ですが。」


 “聖女”は闇ギルドに攫われた人達が気になる様だ。逃げせる奴は逃がしたが、実験台になった人間は多い。あまり期待させない方がいいだろう。


「なら、我々がシャルさんと共に潜入して探りましょう。救える者がいれば出口へ誘導します。」

「お願いしますね。」

「私も闇ギルド全体の気配を探って指示を出します。任せて下さい。」


 シリウスだったか?あの男が“聖女”に提案した。“隠者”……シャルもやる気の様だ。闇ギルド全体の気配を探ると言っていたが、あの広い本部で可能なのか?


「あと、向こうの戦力だが、“魔化”を施された者が多くいる筈だ。」

「魔化……魔物の一部を体に移植する技術ね。」

「ああ、魔化を施された者は、身体能力が上がり強くなる。魔物の持つ特性も使えるらしいが、その代償は理性が失われる。中には理性を保つ者もいるらしいが、その力持っている時点でまともな思考はしていない。」

「試しに魔物の部分のみを切り離しましたが、身体そのものを弄っている様なので、元の状態に戻すのは難しいですね。」

「その辺りは私達が頑張ってみるわ。こっちに本当に敵対していない人達に関しては出来るだけ生きている状態で捕まえてくれる?魔化を解く方法があるかもしれない。」

「分かりました。」


 “賢者”は魔化を施された者達をどうにか救う方法を探す様だ。


「その時は俺も協力する。ザードが残した研究の情報が何処かにある筈だ。それも見つけておく。」

「頼むわね。」


 この後も作戦会議は続いた。初めに潜入部隊に俺とシャル、影の心臓(シャドウハート)の団長、副団長とその部下達。戦闘部隊に青の薔薇(ブルーローズ)竜の牙(ドラゴンファング)。補助部隊に星の手(スターハンド)白き賢人(ホワイトワイズマン)。この国で一番上位の組織が、ほぼ総出で参加する。それと、


「オリビアはどうしますか?」

「今回は緊急事態だし、呼べると思うわ。でも、あの子も出る必要は無いかも。」

「最後の砦にしましょうか?国そのものを攻められる可能性もありますから、オリビアに守ってもらえれば問題無いでしょう。」

「そうね。それが一番ね。」


 “竜騎姫”と騎士達の半分は国の守りに徹するそうだ。他の国への注意喚起も行うそうだが、


「他にも冒険者はいるし、今各国にドラグニアの冒険者も依頼でいるし、何かあれば連絡がとれる様にしておくわ。」

「分かりました。もう闇ギルド本部に向かいますか?」

「ええ、準備は終わってるし……ギルス、準備はする?」

「簡単な装備をもらえればそれで良い。」

「剣は使える?」

「ああ。」

「なら、剣の備えがあるので私の持っている剣を彼に渡します。」

「分かったわ。じゃあ皆、闇ギルドの本部に向かうわよ。」


「「「「「はい!」」」」」


 俺達は、闇ギルド本部のある『氷原』に向かった。

フランソワも真面目モードです。この章で物語全体の敵の詳細が明らかになるかも?

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