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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
竜騎姫と闇ギルドの影
53/111

竜騎姫と闇ギルドの影 4

 ◆◆◆◆


「……妾の負けじゃ……シャルよ、お主は妾が思っていた以上に強かった。」

「ありがとうオリビア、貴方も強かったわ。多分今まで・・・会った人の中で一番かも。」

「……おぉ、そうかシャル。今度ゆっくり互いの武勇について語ろうでは……」

「でも現実逃避する前に今は素直に怒られましょう?」


「「オリビア!シャルちゃん(さん)!」」

「「はい!申し訳御座いませんでした!!」」


 オリビアとの手合わせの後、シャルはオリビアと一緒に正座させられていた。目の前にはリナリーとホルン。その周りには先程知り合ったジードルトと騎士達、そして……


「ま、まぁ大事なかったのであろう?その辺りで許してやってはくれぬか?」

「ルディ?今回はシャルさんが“リビー”の技を全て受け止めたから、被害がここまでで済んだのですよ?貴方によく似て戦い好きなのが今回の騒ぎの原因でしょう?」

「……うっ、しかしだなリア……」

「んん?」

「……す、すまぬ“リビー”。儂に出来る事は無い様じゃ。」



 国王殿下と王妃殿下、両陛下がいた。


(まさか、こんな形で両陛下と謁見する事になるなんて思わなかったわ。)


 手合わせが終わった後、物凄い早さでリナリーとホルンに掴まれて怒られた。その後にジードルトや騎士達も安全を確認しながら合流し、その後にオリビアの両親……両陛下が参られ、別室に案内された後、オリビアと一緒に正座をさせられて小一時間リナリーとホルンを中心に怒られた。


「シャルさん?リナリーとホルンも落ち着いたみたいだから改めてご挨拶させて貰いますね?どうぞ立って下さい。」

「は、はい!」


 シャルは正座したままだったので、すぐに立ち上がり答えた。


「ぬ?シャルが立ったという事は妾も……」

「リビー?誰が立って良いと言ったかしら?」

「は、母上!?駄目なのか!?」

「せ・い・ざ!」

「ぬぅ!?」


 リビーことオリビアは、シャルが立つのと同時に立とうとしたが、王妃殿下に座り直させられた。


「では、シャルさん。私がこのドラグニア王国の国王……今私の隣に居る“ゴルディア・ディル・ドラグニア”の正妃、“リーリア・ディル・ドラグニア”です。娘が迷惑を掛けてごめんなさいね。」

「い、いえ!迷惑だなんてそんな……」


 銀髪の美女、リーリアがシャルに頭を下げて謝った。王妃殿下から挨拶されたのも焦ったが、頭を下げられて余計に焦ってしまった。


「良いのよ?元はと言えばリビーが仕掛けた事ですから。」

「母上……仕掛けたとはちょっと言い方が……」

「何か言ったかしら?」

「な、何も言っておらぬ!」


 リーリア王妃殿下の威圧でたじろぐオリビア、国で一番強いのはオリビアらしいが、言葉の戦いでは母親には敵わない様だ。


「え〜、儂も良いか?……シャルと言ったな?リアからも紹介があった通り、儂はこのドラグニア王国の国王、“ゴルディア・ディル・ドラグニア”じゃ、宜しくな。」

「は、はい!シャルと申します!宜しくお願い致します!」


 赤髪のダンディな国王陛下から声を掛けられた。シャルは両陛下からの挨拶に失礼の無い様に頭を下げて挨拶をする。


「何故そんなに緊張しておるのじゃ?シャルよ。」

「えっ……両陛下に挨拶されたら誰でもこうなると思うけど?」

「妾の時は、随分と落ち着いて丁寧な挨拶をしたのにか?」

「あの時はちょっと戦闘態勢に入ってたし。」

「そういうものなのか?」


 未だ正座をさせられているオリビアからの疑問に答えながらも、姿勢を正すシャル。


((それでも、フードは取らないのね。))


 そんなシャルに、リナリーとホルンは心の中で突っ込んだ。ジードルトや騎士達も思ってはいたが、両陛下は元々シャルの噂は聞いていたので気にしていない様だ。だが、黒尽くめの顔の完全に見えない人間相手に頭を下げて挨拶する光景は変だった。


「今回、騒ぎを起こしてしまって大変申し訳ございません。オリビアが本気を出したのは、私が煽ったのも原因ですし。」

「良いのよ。本気を出したのは久し振りに見たけど、城の一部が壊れる事は日常茶飯事よ?今回城はほぼ無傷だし、もう慣れたわ。」

「そ、そうですか。」


(日常茶飯事なの?オリビア。)


 騎士達と訓練するのは日課だと言っていたが、城の一部が壊れるのも日常茶飯事なのはどうなのか、シャルはそんな事を考えながらオリビアを見たが、オリビアはシャルが思った事がなんとなく分かったのか、シャルから目を逸らした。


「さて、私達はこれで部屋に戻りますが、シャルさんはどうぞゆっくりしていってください。オリビアの話相手になってくれると助かるわ。最近訓練のやり過ぎだったみたいだから。」

「シャルよ、頼んだぞ。」

「かしこまりました。」


 何故こんなにも信頼してくれるのかは分からなかったが、両陛下にオリビアの話相手をお願いされて事をするシャル。


「では姫様、ご友人とお茶会が終わり次第、王女としての嗜みを叩き込みますので覚悟してくだされ。」

「……ぬぅ、分かった。」

「「「「「では姫様、我々も失礼致します。」」」」」


 ジードルトはオリビアに睨みをきかせ、騎士達はしおらしくなったオリビアを微笑みながら見た後、頭を下げて両陛下の後を追う様に出て行った。


「さて、オリビアもシャルちゃんも十分反省した様だし、お茶会を開きましょっか?」

「そうですわね、ゆっくりしましょう。」


 そしてシャル達四人はお茶会を開く為、中庭に出るのだった。



 ◆◆◆◆



「「「ようこそ!“薔薇の集い”へ!」」」

「待って下さい、私薔薇の集いに入るなんて一言も言ってないんですけど?」


 シャル達四人は中庭に出て屋根付きのお茶会スペースへと足を運んだ。そして、城のメイドらしき者達がお菓子や紅茶を用意して、お茶会が始まる瞬間にリナリー、ホルン、オリビアの三人から予想外の言葉を告げられた。


「ぬ?確定じゃぞ?」

「えっと、オリビア?何故確定なのかしら?」

「シャルちゃん。そもそも白薔薇のエンブレムを受け取った時点で、薔薇の集いに相応しい人物かどうか試験してたのよ?」

「確かにそんな不穏な言葉を匂わせていましたけど、私入りませんよ?」

「シャルさん、すでに新たな薔薇の集いのメンバーを正式に発表する準備は整えてあります。私達もシャルさんを認めていますし、諦めてください。」

「目立ちたくないんですが!?」


 新たなメンバーの発表準備は、おそらく試験を始める前に既に準備が整っていそうだったが、半ば諦めていたとはいえ、これ以上目立つのは避けたくて突っ込むシャル。


「フランソワに気に入られ、リナリーに勝ち、ホルンを認めさせ、妾の力を遥かに凌駕する実力を見せた。最早シャルが薔薇の集いへに入るのは必然だったのじゃ。」

「もう、逃げられないのね?」


「うむ!」

「はい。」

「ええ。」


「……わかりました。」


 逃げれば地の果てまで追いかける。そんな覚悟が伝わってくるほど熱い視線で見られては、シャルも諦めるしかなかった。


「では、シャルよ。改めて自己紹介を頼むぞ。」

「え?」

「全てを話して……とは言わないけど、フランソワから聞いた話をシャルちゃんの口から聞きたいわ。」

「私も同じ気持ちです。」


 どうやら本当の真実は話せないにしても、フランソワに話した真実に近い話を直接聞きたい様だった。


「……分かりました。」


 そしてシャルは、他国のプリンセスである事、幽閉された所を抜け出した事を隠してフランソワに話した内容に細かい補足を付け加え話した。家出した他国の貴族の令嬢で、家出して一年以上になる事、その一年間は山籠りして鍛えていたという事、そして家の人間に見つかりたくないので素顔を隠している事など、


「……家出して一年。」

「……その一年は山に篭ってひたすら鍛錬。」

「……家の人間に見つかりたくないから、家から持ち出した魔導具で顔を隠した。」


「はい。」

「「「とても貴族の令嬢が起こす行動ではないと思う。」」」

「そ、そうですか?」


 あまり人の事を言えない王女もいるが、シャルの話を聞いて三人とも複雑な表情をした。


「と、とにかく、そういう事情があるので薔薇の集いには相応しくは……」

「うむ!何も問題は無い!」

「えぇ?」

「そうね、家出して一年。何があったかは知らないけど、私達が今話しているシャルちゃんは顔が一切見えない、どこの貴族?を除けば、何も問題ない人物よ。」

「そうですわね。顔が見えずとも他者を惹きつける魅力を持つシャルさんは、少なくとも私達にとっては素晴らしい女性です。」


「「「とういう訳で、改めて“薔薇の集い”へようこそ!」」」

「……は、はい。」


 彼女達にとって、シャルという人物を判断するのは過去ではなく、今現在のシャルが基準の様だ。なので、彼女達の言葉でシャルは頷くしかなかった。


(ほとんど強制的にだけど、仲間が出来るって良いものね。)


 前世では相棒はいたが、実質ずっと一人で戦ってきたシャル。組織に所属し、仲間が出来る感覚は新鮮だった。


「さて、ゆっくりと今後について談義しようではない……」


『『『姫様!姫様!!』』』


「なんじゃ?」


 シャル達四人がゆっくりとお茶を楽しもうとした時、怪我をした騎士達が慌てた様子で中庭に入って来た。


「どうした?随分と騒々しいが、何かあったのか?」

「姫様!姫様が!!」

「ぬ?」

「落ち着きなさい。」

「リ、リナリー様!?」

「随分と酷い怪我……治療を行います。じっとしてください。」

「……ホ、ホルン様。」

「何があったの?あまり良くない事の様だけど。」


 慌てる騎士達を諌め、話を聞こうとするリナリー。騎士達の怪我の様子からして、只事ではない様だ。


「それが……ミルディア王女殿下が……」

「ミルディアがどうした?」


 ミルディアという名前を聞き、オリビアが真剣な表情で聞き返すと、


「……ミルディア王女殿下が……攫われました。」



 ドンッ!



「……何だと?」


 騎士達の一言でオリビアが凄まじい圧を周囲に放った。


「……オリビア?ミルディア王女殿下って……」


 シャルが初めて聞く名前に疑問の声を上げると、


「……ミルディア王女殿下は、オリビアの妹よ?確かまだ6歳だった筈だけど……」


 シャルの疑問にリナリーが答え、事情を騎士達に聞こうとするが、


「……妹が攫われた?一体どういう事じゃ!!」



 ビリビリビリ!



 オリビアの怒声で中庭全体が揺れた。下手をすれば怪我人が出そうな様子だ。


「……ミ、ミルディア王女殿下は、本日は城の近くの庭園で散歩しておりました。我々も付いていたのですが、突如ローブを纏った集団に襲われ、抵抗したのですが……」

「そのローブ奴らは何処じゃ!八つ裂きにしてくれる!!」

「落ち着いてオリビア、まずは騎士達の怪我の治療が先よ?すぐに知らせに来てくれてありがとう、オリビアなら何とかしてくれるんじゃないかって、急いで此処に来たのよね?」

「は、はい!」


 すぐにでも飛び出して行きそうなオリビアを止め、シャルは怪我をした騎士達の治療を手伝った。



「……怪我の治療は終わりましたわ。」

「もう、大丈夫そうですね。」

「ホルン様、皆様、ありがとうございます。」


 治療を終え、改めてミルディア王女殿下が攫われた経緯を騎士達から聞く、


「鼠色のローブを来た集団……」

「……はい。怪我をしたのは我々だけなのですが、ミルディア王女殿下が……」

「こんな事をするのは、闇ギルドの連中しかありえないわね。」

「闇ギルド?」

「このリース大陸で活動していると噂される罪人の集まりよ。その全容は掴めていないけど、道を外れた行いをする連中だから、人攫いや闇取引、それ以外にも色々とやってるみたいなのよ。何度か闇ギルドに所属する者は捕まえた事があるけど、黒幕の尻尾は掴めないままなの。」


 闇ギルド、この世界に存在する犯罪組織。リナリーから説明を聞いたシャルは考えを巡らせる。


「今回、ミルディア王女殿下を攫ったのも何か目的が?」

「おそらく、オリビアを誘き出す為じゃないかしら?ミルディアはまだ6歳、あの子自身は闇ギルドにとっては脅威では無い。でもオリビアは国で一番強かった。だから、闇ギルドにとっては脅威のはずよ?身内を人質にとる事によって、オリビアの理性を失わせ誘き寄せて、どうにかするつもりだったんじゃないかしら?」

「……ぐっ、奴らめ、非道な手を。」


 リナリーの話を聞いたオリビアは拳を握り、更に怒りの表情をあらわにした。


「両陛下に報告はしましたか?」

「……いえ、姫様に先に御報告すれば何か対策が立てられるのではないかと思いまして……」

「……分かった。お前達は父上と母上にこの事を伝えよ。妾達は妹を救出する為動く、攫われた場所は近くの庭園じゃな?」

「はい、すぐに姿が見えなくなった所を見ると、抜け道があるのではないかと……探してはみたのですが、何処にも。」

「うむ、それだけ分かれば充分じゃ。済まぬが、リナリー、ホルン、シャル。協力してくれるか?」


「「「もちろん!」」」


「よし、ではまずは庭園に向かうぞ。」


 シャル達は、ミルディア王女殿下が攫われた庭園へと向かった。



 ◆◆◆◆



「ザード様、ミルディア王女を攫う事に成功しました。」


『ご苦労、あの竜騎姫の様子はどうだ?』


「報告によると、薔薇の集いの二人ともう一人を連れて、攫われた庭園に向かっているとの事。」


『ヒヒヒ……丁度良い、拠点に誘き出せ。そして奴らを拘束する魔法陣や、私がお前達に与えた力を存分に使って奴らを殺せ。』


「御意。」



 ◆◆◆◆



「…………オリビア、先に庭園に向かってくれる?」

「どうしたのじゃ?シャル。」

「ちょっと気になる事があるの。確かめた後、必ず向かうわ。」

「ふむ……分かった。出来るだけ早く来るようにな。」

「ええ。」


 庭園に向かう途中、シャルは不意に立ち止まりオリビアに声を掛けた。オリビアは不思議そうな顔をしたが、シャルを行かせる事にした。



 ◆



「…………。」



 ガッ!



「……貴方、闇ギルドの人間ね?」

「な!?いつの間に!?」


 庭園に向かう途中、視線を感じてその場所に向かってみた。鼠色のローブを来た怪しい男がいたので、拘束して質問をした。



 ギリッ、



「……答えて?」

「ぐっ!?貴様に答える事は無い!」

「……そう。」



 ギリギリッ、



「これでも答えたくない?」

「ぐっ!?うう!?わ、分かった!分かったから拘束を解け!」


 男があまりの痛みに観念した様なので拘束を緩めた。


「それで?貴方、闇ギルドの人間なのね?」

「そうだ!偉大なるお方にお仕えする。崇高なるギルドの一員だ!」

「偉大ね……ミルディア王女殿下は何処?」

「あの小娘は我々の拠点へと連れて行った。」

「そう……あの庭園には抜け道があるの?」

「……ああ、あそこには抜け道がある。庭園近くの岩の下にな。」

「貴方のボスの名前は?」

「それは……ぐっ!?」

「な!?」


 ザッ!


 突如男が苦しみ出し、嫌な予感がしたシャルは即座に男から離れた。


「ググ!?ガァ!?」


(嫌な気配は最初からしていたけど、まさか人にもあれは影響をもたらすの?……いえ、とういうより……)


 男からは、荒野やダンジョンの時に感じた気配が漂っていた。ローブが外れ、男の体をよく見ると、


「……魔物の腕を取り付けているの?」


 男の右腕は、人の物ではなかった。明らかに魔物の腕を取り付けた状態だった。そして、あの気配は男の腕から漂っていた。


(人の道を外れた行いをするギルド……思ってた以上に根が深そうね。)


「ガッ、ガァァ!!」


 理性を失った男はシャルに襲いかかって来た。


「……斬。」



 キンッ、



(これ以上の情報収集は無理みたいね。闇ギルドのトップの名前を聞こうとしたら、あの気配が強くなった。口止めの為に暴走させたのね。)


 闇ギルド、想像していたよりも厄介な存在の様だ。


(オリビアと合流しないと、多分拠点には罠がある。抜け道を見つける前に止めないと。)


 抜け道を聞くまで、男の様子が変わる事はなかった。それはつまり、拠点の場所がばれても問題無い何かがあるという事。


(オリビアやリナリー団長、ホルンさんの実力がいくらあったとしても、あれはどんな力を持つのか予想が出来ない。もしかしたら彼女達でも太刀打ち出来ないかもしれない。)


 とにかく、急ぐ必要があった。



 ◆



「どうじゃ?リナリー。」

「……見当たらないわ。」

「認識阻害の魔法が掛けられている可能性もありますわ。」

「フランソワがいれば……」



 ザッ、



「オリビア。」

「おお、シャル!早かったな。一体何処に行っておったのじゃ?」

「此処に来る途中視線を感じたの。確認したら、闇ギルドの人間がいたの。」

「なんじゃと!?そやつは何処に!?」

「それは……」


 オリビア達と合流したシャル、遭遇した闇ギルドの人間について事情を説明した。


「……人の体に魔物の体の一部を?」

「はい。」

「……なんて非道な。」

「……今まで捕まえた闇ギルドの一員にそんなのは居なかったわ。」

「闇ギルド……相当に危険なギルドの様じゃな。」


 話を聞いたオリビア達は、怒りの表情をあらわにした。


「それで、抜け道なんだけど……」

「よし、早速乗り込むのじゃな?」

「ううん、四人で行くのは避けた方が良いわ。」

「……何故じゃ?」


 オリビアは今にもミルディア王女殿下を救い出すために動き出しそうであったが、シャルの一言を聞いてかなり不機嫌な様子だった。


「罠の可能性が高いのね?」

「はい。下手に乗り込めば、ミルディア王女殿下に危険があるかもしれません。」

「……ならば、どうすれば良いのじゃ?」

「私一人で忍び込みます。」


「「「え?」」」


 シャルが一人で忍び込む。その言葉を聞いて三人が聞き返した。


「私は黒尽くめで顔が見えないし、しっかりと着込めば全身を暗闇に紛れさせる事が出来ます。」

「確かにシャルちゃんなら適任かもしれないけど。」

「一人は危険では?」

「シャルよ、それはいくら何でも……」

「どんな罠があるか分からないし、この国で重要な三人に何かあったらいけないから、私が一人で行ってもし戻って来なかったらその時はお願い。」


 シャルは真剣な声で三人に言った。


「……シャル。」

「ミルディア王女殿下の安全は、私が必ず確保するから。」

「…………分かった。もし拠点に妾達が乗り込めそうなら、合図を頼むぞ。」

「ありがと、オリビア。」

「無理はしない様に。」

「はい、リナリー団長。」

「お気を付けて、治癒魔法はいつでも掛けられる準備をしておきます。」

「お願いします。ホルンさん。」


 闇ギルドの人間が話していた岩の下の抜け道を開き、シャルは闇ギルドの拠点へと向かった。



 ◆◆◆◆



 タタタタッ、


(今回はミルディア王女殿下の救出が最優先。闇ギルドについて調べるのはまた今度になりそうね。)


 シャルは抜け道を走りながら考えていた。荒野やミノタウロスの時の様な強力な力を持った存在が闇ギルドに潜んでいるのは、あの魔物の腕を取り付けられた男を見れば一目瞭然だった。闇ギルドを壊滅させる必要もあるが、オリビアの妹、ミルディア王女殿下を救い出すのが最優先だ。


(それにしても……あの気配が濃くなってる。気配だけでもミノタウロスの時以上に危険な感じがするけど……本体は多分、今から向かう拠点にはいない。)


 何となく気配で目的の相手がいるかは判断出来るが、前世を含めて経験で判断すれば、本体が拠点にいない事は分かった。


(おそらく、さっきの男の人と同じ様な人が沢山いる……本当、気分が悪くなるわね。)


 意思を持つ分、前世にいた化物より邪悪な力を持っている。それを考えるだけでも、嫌な気分になる。


(そろそろ着くわね。気配を出来るだけ消さないと……空の型“遊影ゆうえい”。)



 スッ、



 シャルは遊影を使って、気配を消しながら素早く動いた。おそらく相当な実力者でない限り、闇に紛れたシャルを見付けるの不可能に近い状態だった。



 ◆◆◆◆



(拠点と言っても、そこまでしっかりした作りでは無いのね。逆に罠を仕掛けるなら、絶好の場所なんでしょうけど。)


 シャルは闇ギルドの拠点に着いた。岩の下に抜け道があったので、大体の予想はしていたが、穴蔵の様な作りの拠点だった。


(ミルディア王女殿下は多分無事ね。この拠点で唯一邪悪な気配がしてない人……かなり下の方にいるみたいだけど。)


 気配からして、ミルディア王女殿下らしき気配はしていた。だがその場所はかなり下の方の様で、辿り着くには相当上手く隠れる必要があった。


(全員気絶させる?でも、あの男の人みたいに暴走されても困るわね。オリビアに合図を送る事も考えたいけど、こんな穴蔵じゃ難しそうね。)


 色々と考えを巡らせるが、一番騒ぎを起こさずに辿り着くには、誰にも見付からない事が一番安全な様だ。


(まずは下を目指さないと。)


 シャルは出来るだけ気配を消しつつ、ミルディア王女殿下らしき気配がする方向へ進む。



『オリビア王女の様子はどうなんだ?』

『監視役の奴がやられたらしい、フォルズさんが予想はしていたって言っていたが、状況は分からなくなった。でもまぁ、あの王女ならすぐに乗り込んで来るさ。』


(やっぱり、人数が少ないわね。フォルズっていう人がここでは一番偉いのかしら?)


 気配から感じるに、この拠点にいる闇ギルドの人間は十人程度だった。人数が少ないのに疑問はあるが、闇ギルドの人間の会話を聞く限り、フォルズという人間が上司の様だ。

両陛下のオリビアの呼び方は何となく響きで決めました。

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