表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠者のプリンセス  作者: ツバメ
集結、青の薔薇!!スター商会とホルンの試験
48/111

幕間〜未来へ託す物〜

「う〜ん、偏ってるなぁ。」


 彼は一冊の本を前に唸っていた。


「流石に定番の商品とか載せた方が良いかな……でもなぁ、あんまり地球の文明を広めてもらってもなぁ……この世界の色に染めてもらいたいし……」


 彼は悩んでいた。親友に自分の持つ知識の一部をプレゼントしようと思ってある本を作った。その本は、前世での便利な商品やら商売のワンポイントアドバイスを書いた本。簡単に分かる様にしてしまえばただ本の知識を丸パクリしたつまらない物が広まってしまう。なので、文字は日本語にして写真だけで伝わる様にした。

 そこまでは良いのだが、内容が自分好みに偏っていて、かつ定番の商品で載せていない物もあった。定番の商品を載せても良いが、あまり地球の色に染まって欲しく無かった。


「……お、そうだ!これにも(・・・・)隠し機能を付けよう!」


 彼は閃いた。ちょっと捻くれた性格の彼だからこその発想。


「条件は……その物に近い物をイメージしながら名前を言うと解放される仕組みで……これは鬼畜だな……ま、いっか!!」


 隠し機能は、完全に同郷の転生者でなければ解放されない鬼畜仕様だった。


「……メチスの奴、こんな本を遺していたって知ったら驚くかな?その前に写真でしか解読出来ない玄人仕様にキレるか……まぁ、あいつなら……あいつの意志を受け継ぐ奴なら、隠し機能の商品はともかく、解読出来そうな気がするが……」


 彼は、本に手を加える。


「最後にメッセージを遺しておくか……ええと【親友、メチス・リー・スターに捧ぐ、商品開発に役立つ本】っと、他は日本語でいっか……恥ずかしいし。」


 こうして一冊の本が完成した。親友に捧げる永遠の友情の証。そして、未来の世代へと繋ぐ、彼の想いが込もった繁栄の証。


「ちゃんと役立てろよ?メチス。」



 ◆◆◆◆



「……あいつ、こんな物を遺していたのか……」


 親友が居なくなって数週間、俺は自分の道を見失った。商人の修行の為、旅商人として各地を巡り、親友に出会い、兎人族の妻も迎えた。商人としても各地で有効な関係を築けた。俺だけではここまで来れなかった。あいつの協力があってこそだ。

 あいつが世界を救う為に何処かへ旅立ち、還らぬ人になったと察した時、これからどうすれば良いか分からなくなった。そんな時、この本が俺の元へ届いた。あいつの望む、誰もが笑顔で暮らせる平和な世界への道標。


「……まったく、落ち込んでた俺が馬鹿みたいじゃないか…。」


 本の最後には【親友、メチス・リー・スターに捧ぐ、商品開発に役立つ本】と書いてあった。他にも何か書いている様だったが、解読は出来なかった。だが、何となく想いは伝わった。


「……お前の意志は俺が継いでみせる。」


 それからは怒涛の日々だった。捻くれた性格の奴が普通にこういった物を遺す筈が無いとは思っていたが……まさか文章が解読出来ない謎の言語が使われ、妙に精巧な絵だけでも伝わる様にしているとは……あいつらしいと言えば、あいつらしい。



「あいつから話は聞いている。あいつの残した物を守っていきたい。どうか、この辺りに街を作らせて欲しい。」



 枯れた大地を再生する為に、誰も住めなくなったこの地に家を建てたというのは聞いていた。まさかあそこまで大地を再生して、あんな大きい屋敷を建てていたとは思わなかったが、


「ふ〜む?わっちにその権限は無いでごぜーますが、具体的にどの範囲を希望するでごぜーますか?」

「中央に行ったら、水の精霊に森の大部分を残して欲しいって言われてな。この屋敷からもっと離れた所に作るつもりだ。」

「そうでごぜーますか。なら勝手にすると良いであります。マスターも元々は人や動物も暮らせる様にこの辺りの大地を再生する取り組みをしていたでごぜーますからなぁ。」

「ありがとう。」

「ちなみにこの屋敷に住むでごぜーますか?メッちんなら大歓迎であります。」

「メッちん!?……あぁいや、嬉しい誘いだが、俺は魔力がそこまで高くないし、この屋敷を維持するには力が足りない。だから、せめて近くに街を作ってあいつの守りたいものを守ろうと思ってな。」

「イケメンだ!?イケメンがここにおる!?」

「え、何!?いけめんって何!?」


 あいつと親交の深いシルキーにも会った。話してみると、中々面白い妖精だった。俺は水の精霊とフィーに許可を貰い近くに街を作った。そして、自らの商会を立ち上げた。



「さて、此処から始めよう。」



 あいつの守りたいもの、あいつがやりたかった事を俺が出来る範囲で、出来る限り全力で取り組む。



──未来の世代がもっと楽しく暮らせる世界の為に。



 ◆◆◆◆



「フィーさん!何か本に向かって言ってください!もしかしたら新たなページが!」

「ご勘弁を!でごぜーます!!その台詞何度目でありますか!?いい加減落ち着くであります!!」


 それから約500年後、見違える程繁栄したこの地で、メチスの子孫は商品作りに励んでいた。


「そんな事を言わずに!フィーさんならきっと出来ます!」

「助けてリナッち!シャル様!!」



 全ては、より良い未来の為に。

ちょっとした幕間は此処までです。明日は登場人物紹介です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ