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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
集結、青の薔薇!!スター商会とホルンの試験
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集結、青の薔薇!!スター商会とホルンの試験 1

四章、始まります。

 チュンチュン……、



「グッモーニング!シャルさ……」


 トトトト……、


「ら〜♪」

「て、天使の歌声!?」

「あら?おはようフィー。もうすぐ朝ご飯出来るわよ?」

「かしこまりでごぜーます!……シャル様、歌も上手いとか反則級であります。」

「うん?別にそこまでじゃ無いと思うけど。」

「自覚無し?!」


 ダンジョンの探索を終え数日、シャルが朝ご飯を作るいつもの朝を迎えていた。


「今日は何でごぜーますか?」


 コト、


「オムレツとパンと、ミネストローネ風のスープよ?後はサラダね。」

「なな?!オムレツとパンがフワフワ?!ミネストローネ風って……はんっ!何て良い匂いで美味しそうでありますか!頂きます!!」

「はい、召し上がれ。」


 ガツガツ!


「ふぉいひぃでふぉふぇーふぁす!」

「ふふ、詰め込み過ぎよ。」

「ふぉん!」


 フィーは、頬袋いっぱいに料理を詰め込み幸せそうに噛みしめていた。シャルは微笑みながらその様子を眺め朝食をとる。


 リンリーン、


「うん?この音は何かしら?」


 朝食を終えてゆっくりしていると、屋敷中に綺麗なベルの音が響き渡った。


「来客者が来ると知らせるベルでごぜーます。庭まで結界が張ってあって玄関まで来れないでありますから、キューマスターが一応作っていたでごぜーますが、使う機会が無く機能をオフにしていたであります。昨日の夜に思い出してオンにしたでごぜーます。」

「なるほど、じゃあ誰か来たのね?」

「そうでごぜーます。ちなみに宿敵が来ると、違う音が鳴るように設定しているでありますから、どうやら普通の来客者でごぜーますね。」

「……どういう音に設定しているのかしら?まぁ、とにかく行きましょっか?」

「了解であります!」


 シャルは、フランソワ用の音が気になりつつも、フィーと庭の方に向かった。



 〜庭の入り口〜



「あ、リナリー団長。おはようございます。」

「おはよう、シャルちゃん。それとフィーもね?」

「おお、リナッちでごぜーますか!ウェルカム、ウェルカム!」

「何なのその言葉?」

「歓迎してくれているんだと思いま……リナッち?」


 庭の入り口方へ行くと、リナリーが立っていた。軽く挨拶を済ませると、フィーのリナリーの呼び方に疑問を覚える。


「ああ、そういえば話して無かったわね。フィーとは結構前から知り合いよ?」

「え?そうなんですか?」

「同士と言っていただけで、名前で呼んで無かったでごぜーますからなぁ。」

「それはあんただけよね?」

「結構前から知っているのに、わっちの名前知らなかったでごぜーますからなぁ。」

「うっ、それはあんたが名乗らなかったからでしょう?」

「ぬっ、確かに。」

「二人とも仲良いですね。それで、朝早くからどうしたんですか?」


 リナリーとフィーが同じ様なリアクションをとるのを見つつ、シャルはリナリーに問いかけた。


「あ、そうそう。今日ね、青の薔薇ブルーローズのメンバーが珍しく全員集まるから、折角だしシャルちゃんに皆を紹介しようと思って。」

「全員ですか?」

「そう、全員。」

「ほほう、面白そうな話でごぜーますなぁ。」


 全員集まると聞いて

シャルは首を傾げた。大酒場“竜の尻尾ドラゴン・テイル”で何人か見かけた気がするが、全員では無かったらしい。


(それもそっか、依頼で居ない人もいるものね。)


 よく考えたら、全員集まるのはかなりレアな話しだと思った。大酒場では、ロイヤルガードのメンバーの様に話していない人も居たかもしれないのでいい機会かなと思う、


「という訳で、代表して私が来たのよ。」

「というより暇だから来たでごぜーますな。」

「ひ、暇な訳無いでしょ!?」

「じょ、冗談で言ったのに、動揺しているでごぜーます?!」

「本当に二人とも仲良いですね。」


 青の薔薇ブルーローズのメンバーが集結する。一体、どんなメンバーがいるんだろうと、ワクワクするシャルであった。



 ◆◆◆◆



「フィーって、屋敷から出られたのね?」

「わっちを屋敷に寄生する生物か何かと勘違いしてないでごぜーますか?妖精!妖精であります!!家事をするのが好きな妖精!」

「え?あんた家事好きなの?嘘でしょ?」

「単純にやる気が無くなっていただけでごぜーますから!普通に家事出来るであります!」

「「そうなんだ。」」

「リナッち?!シャル様?!二人とも酷い!というか、シャル様は何度か見ているでありますよね!?」


 フィーをからかいながら、商業エリアを歩く三人。最初は青の薔薇ブルーローズの拠点にすぐに向かうつもりだったが、まだ全員集まるまで時間が掛かるのと、“ペネドゥ”のドッグに『カタナ』の試作品が出来た事を手紙で知らされていたので、そこに向かう事にしてた。


「すみません、リナリー団長。私の用事に付き合ってもらって。」

「良いのよ。『カタナ』って武器も気になるし、皆集まるまで時間掛かるし。」

「暇なんでごぜーますよね?」

「そうよ?何が悪いのかしら?」

「開き直った?!」


 リナリーの話だと、青の薔薇ブルーローズが集まるのは、新しく組織に入ったシャルの事が皆気になっていて、遠出していた者も顔を見に拠点に戻ると報告があったそうだ。


(まぁ、顔は絶対に見せないけど。)


 そこで、なら皆で大酒場“竜の尻尾ドラゴンテイル”で飲もうかという話になって、珍しく全員が揃うらしい。


(それにしても、試作品とはいえようやく刀が手に入るのね。“そう”で似た物を作れても、職人が魂を込めて作った物の方が自分に合わせて作られているし、気を込める気持ちも高まるのよね。何より、斬れ味が全然違う。)


 木で愛刀を再現したが、それでも刀という武器の本来の力を出せていない気がしていたシャル。試作品とはいえこの世界で初めて職人が作った刀に触れられる事にテンションが上がっていた。


「それにしても『カタナ』でごぜーますかぁ……いざ!尋常に勝負!!」


 ブンブン!


「フィー、そのチャンバラ用のおもちゃの刀、どっから取り出したの?」

「妖精の秘密!」

「収納魔法が込められた魔導具か何かでしょ?というかフィーは『カタナ』を知ってるの?『ちゃんばら』って何?」

「「二人だけの秘密?」」

「何で疑問系?!教えてくれても良いでしょ!?」


 ちなみに、リナリーも有名人なのでシャルほど鉄壁では無いが、ローブで顔を隠していた。フィーはそのまま、ありのままのシルキーで、


「あ、リナリー団長。着きましたよ?」

「到着でごぜーます!」

「話す気無いのね……シャルちゃんも素性が謎だけど、フィーも大概謎妖精よね。」


 リナリーの呟きは二人の耳に入る事は無く、そのまま“ペネドゥ”に入店した。


 カラン、カラン、


「たのも〜!」


「え、い、いらっしゃいま……え?何この可愛い女の子……って浮いてる?妖精?」

「メリーさん。おはようございます。シャルです。」

「ふぇ?!シャルちゃんさん……で良かったですよね?こちらの妖精はお連れ様で?」

「シャルで良いですよ?そしてこの子は、今住んでいる屋敷に寄生しているフィーです。」

「酷い紹介がきた?!屋敷ではシャル様に頼りっきりでごぜーますが、それは無いでありますよ?!あ、フィーネリアでごぜーます!フィーで宜しくお願いするであります!」

「ど、どうもメリーです。宜しくお願い……そちらのローブの方は?」

「二人が変にふざけるから、いつ話し掛けようか悩んじゃったじゃない。メリー、久しぶりね。元気にしてた?」


 パサ、


「リ、リナリーさん?!お、おはようございます!やだ私ったら、何も準備しないで……」


「なんか近所のおばちゃんが、突然の有名人の訪問に困っている様な光景であります。」

「なにその例え?」


 “ペネドゥ”に入ると、金髪のポニーテール“メリー”がいた。フィーがお店に入った時の驚きと、シャルの美声、リナリーの登場で変に慌てるメリーが。


「落ち着きなさい、何も準備しなくて良いから。」

「は、はい。」

「突然すみませんメリーさん。ドッグさんに刀の試作品が出来たって聞いたので、お店に来たのですが。」

「あ、ああ、ドッグさんに用があるんですね。ドッグさんなら鍛冶場にいますよ?」

「分かったわ。ありがとね。」

「では、また。」

「金髪ポニテのメリー!また会おう!でごぜーます!」

「え、ええ?もう行っちゃうんですか?また今度ゆっくり話しましょう。」


 シャル達三人は、鍛冶場に向かって行った。


「いや、待て!俺を無視するな俺を!」


 だが、ロンが行く手を塞いだ。


「ああロン、久しぶりね?」

「リナリーさん……さっきから目合ってましたよね?」

「たまにはからかおうかと思って。」

「やめてください!俺意外と繊細ですからね!?」

「ロンさん。おはようございます。」

「おはようシャル、多分お前も気付いていたよな?」

「リナリー団長が話し掛けるかと思ってたんですけど、そのまま行くとは思いませんでした。」

「なるほど、そこの妖精は?」

「さっき聞いていたでごぜーますよね?フィーネリアでありますよ?」

「そいつが噂の変なシルキーか?」

「ほう?」


 パシッ!


 ロンの一言でちょっと不機嫌になったフィーは、何処からともなく『ハリセン』を取り出して、ロンに突っ込みを入れた。


「痛っ?!いや、意外と痛くない?待て何だそれどっから取り出した?」

「『ハリセン』でごぜーます。強めに突っ込む時に重宝するであります。」

「そういう事聞いているんじゃねぇよ!?……あれ?でも紙を贅沢に使った武器って初めて見るな?よく見せてくれないか?」

「拒否でごぜーます!自分で作れであります!」

「あれ『ハリセン』って言うの?フランソワがよくあれで叩かれていたわね。」

「……そうなんですか?」


 軽くカオスな状況になりつつも、ロンとも挨拶を終え鍛冶場に向かう三人。



 〜鍛冶場〜



「バズ、ドッグにお客さんだ。」

「あれ?ロン店長?お客さんって……あ!シャルさん!おはようございます!」

「おはようございます。バズさん。刀を見に来ました。」

「おぉ、顔が完全に見えないのに、分かるんでごぜーますね?」

「まぁ、お洒落な服が見えて漆黒の顔の見えないローブを着た人間は、シャルちゃんぐらいしかいないからね。」


 鍛冶場に到着すると、面白そうだからと何故か一緒に付いてきたロンが、近くにいたバズに声を掛けた。バズは以前のシャルの格好を覚えていたのかすぐにシャルだと分かり反応した。


「あれ!?リナリーさん!?……と、妖精?」

「久しぶりねバズ。」

「フィーネリアでごぜーます!気軽にフィーと呼ぶであります!」

「お久しぶりですリナリーさん。そ、それと、宜しく、フィー。」

「うむうむ!」


 バズがリナリーとフィーに挨拶を終え。ドッグに会いに奥に進む五人。



 カンッ!カンッ!カンッ!



「親方!シャルさんが来ましたよ!」

「何!?シャルの嬢ちゃんが!?すぐ行く!」


 少し遠くからバズの言葉を聞いたドッグは、すぐに仕事を中断してシャル達の所へやって来た。


「……あれ?俺が呼んだ時すぐに来ねぇのに。」

「シャル様でごぜーますから。」

「よく分からないけど、シャルちゃんだからね。」

「きっと、シャルさんだからですよ。」


「何だ?何を話してるんだ?」

「ああ、ドッグ。いつも仕事が忙しいって中々来ないのに、何でそんなに来るの早いんだ?」

「シャルの嬢ちゃんが来たからだろう?」

「……俺、一応店長だぜ?」

「知らん。」


 少し落ち込むロンを放っておき、ドッグはシャルの方を見た。


「遅くなって悪かったなシャルの嬢ちゃん。ようやく、試作品が出来たぞ。」

「いえ、むしろ早い方ですよ。ありがとうございますドッグさん。」

「そうか?よし、なら早速……て、リナリーじゃねぇか。いるなら声掛けてくれ。」

「え?ああ、ごめんごめん。ドッグがそんなに嬉しそうにしているの見るの久しぶりだから。珍しくって見てたわ。」

「ぬ、そうか?」

「不壊の武器を見て以来ね。」


 ドッグはすぐにシャルに『カタナ』の試作品を見せようとしたが、リナリーがいる事に気付いて声を掛けた。


「……ああ、確かにそうかもな。それだけ、今作ってる武器は俺の鍛冶職人としての血が騒ぐってもんだ。」

「なるほどね。」

「ふーむ?髭のお方はリナッちと古くからの知り合いでごぜーますか?」

「古くからって言わないでくれる?でも、知り合いなのは間違い無いわね。駆け出しの頃から、ドッグの作る武器にお世話になっていたから。オリビアもそうよ?」

「何だ?シルキーか?珍しい見た目だな。」

「フィーネリアでごぜーます。フィーと呼ぶが良いであります。」

「そうか、宜しくなフィー。」

「ちなみにあたし達より年上よ?」

「何?!」

「リナッち、わっちは永遠の10歳未満でごぜーますよ?」

「残念な感じなの。」

「そうか。」

「生暖かい目で見るなでごぜーます!失礼でありますよ!」


「えっと、刀をそろそろ見せてもらっても良いですか?」


 年が近いせいなのか、何なのかはよく分からないが、意気投合している様な雰囲気で話す三人に、そろそろ刀が見たいと思い話し掛けるシャルと、空気になりつつあるバズとロン。


「おっと、そうだったな……ほれ、こいつだ。」


 ドッグはシャルの一言で本来の用件を思い出すと、手に持っていた布に包まれた武器を渡した。


 シュル、


「……おお、見た目が近いですね。」

「おお!カ・タ・ナ!」

「へぇ〜、これがね。」


 布をとり中から出てきたのは、全体が銀色の鉱石で作られた『カタナ』だった。鍔や柄、鞘も銀色の鉱石で作られており、本来の刀より重く、太い感じだった。


「とりあえず、見た目を近づかせてみた。だが、どうにも強度が弱くなるから適度な厚みにするのが難しくてなぁ。どうしても、太く重くなってなぁ。」

「水減らしと積沸かしはやりましたか?」

「ああ、だが玉鋼たまはがねだったか?あれを上手く作れなくてな。どうしても質が悪くなる。」

「……玉鋼たまはがねですか。ちゃんと作らないと、鍛錬すらまともに出来なさそうですね。」


「一つも理解出来ないでごぜーます。」

「ドッグもシャルちゃんも楽しそうね。」

「俺も混ざりたいです。」

「前にも言ったけど、やめろよ?」


 刀について詳しく話す二人を遠くから見つめる四人。数十分話した所で、シャルが試し切りをする事になった。



 〜裏庭〜



「本当に思いっ切りやって良いんですか?」

「ああ、シャルの嬢ちゃんがやりたい動きを見れば、『カタナ』の完成した形を想像しやすいからな。」

「分かりました。」


 裏庭にやって来たシャル達。練習用の丸太を用意して、シャルは丸太の前に立っていた。


「私の求めている刀は、居合も出来る刀なので、それを見せます。」

「『いあい』?」

「簡単に言うと、刀を鞘に納めたまま構えて、一瞬で抜き放って一撃を加える技です。」

「何か、凄そうな技だな。」


 ドッグから、試作品の『カタナ』で試し切りするにあたり、思いっ切りやって欲しいと言われた。折れるかもしれないと言ったが、「まぁ、儂の作った試作品だしな。武器の扱いが下手な奴ならともかく、単純に力が強すぎて武器自体が耐えられないシャルの嬢ちゃんに折られるなら、その『カタナ』も納得するさ。」と言われたので、遠慮しないでいこうと思った。


(でも遠慮なくやると丸太斬る所じゃ済まないから、丸太に斬撃を全てをぶつけないと。)


 本当に思いっ切りやると丸太を斬るだけでは済まないので、『カタナ』で丸太のみを斬る事に集中しなければいけないが、今の自分なら容易いとなんとなく感じていた。


(やっぱり、遠慮なく行くなら“またたき”かな?この世界で試作品とはいえ刀で居合をやるのは初めてだし、持った感じちょっと本来の感覚とは違うから、どうなるか分からないけど。)


 今回の試作品は、まず見た目を近づかせる事に集中させたので、斬れ味も悪いと言っていた。重さや太さもあり、見た目もこの世界の鉱石が少し特殊なのか、銀色の同色で波紋も上手く出来なかったそうだ。


「じゃあ、ドッグさん。今からやるので、離れて下さい。」

「おう。」


 ドッグは、出来るだけ近くで見たいと言っていたので、シャルの指定した距離まで離れた。他の四人はさらに離れた所から見ていた。


「おお、あの構えは居合?『サムラーイ』でごぜーますね!シャル様は『サムラーイ』でありましたか!」

「何その『サムラーイ』って?」

「わっちもよく分かっていないでごぜーます!ただ、凄く強い人であります!」

「ふ〜ん、そうなの?確かにシャルちゃんは強かったけどね。」

「……そういや、リナリーさんに勝ったんだよな。」

「また凄い技が見れるんですね。」


 それぞれ会話をしながら、シャルが試し切りするのを待つ。


(さて、“瞬き”の限界斬撃に挑戦してみようかな?何回斬れるかしら?)


 本来“瞬き”は、一度斬るだけで致命傷を与えられるので一度しか斬らないが、相手が強靭であるか一度の斬撃では倒しきれない際、一度放った際の反動を利用して、居合に近い威力で何度も斬る事が可能である。なので、刀が耐えられる限界まで斬るつもりだ。


「……いきます。」


ざんの型“瞬き”……連斬!)


 シッ!


「ぬ?」

「早!?」

「ほうほう?」

「んん?」

「え?」


 キンッ……バキャッ!


「……あ、砕けちゃった。」


(やっぱり、本来の感覚で変に負荷をかけちゃうと、私の力だとすぐ駄目になるみたいね。)


 シャルが何かをした。リナリー以外はあまりよく見えておらず首を傾げた。丸太は何も変化がないがシャルが刃を納めると、鞘の中で刀身が砕ける音が聞こえた。


「ドッグさん。ごめんなさい。」


 そう言ってシャルはドッグの元に歩いて来た。


「中で砕けました。」

「お、おう……砕けてるな。え、いや、待て……何をした?」

「丸太を何十回も斬りました。」

「何十回!?あたしは数回しか見えなかったわよ!?」

「いや、待つでごぜーます!丸太は何も変化が無いでありますよ!?」

「確かに変化が無いですね。」

「本当に斬ったのか?」


「一応、崩れるようには斬りましたよ?」


 シャルは、納得していない人達に説明する為、丸太に近付いた。


「軽く衝撃を与えれば。」


 ツン……ガラガラガラ!!


「こんな感じに。」


「「「「「…………。」」」」」


 シャルが丸太を軽くつつくと、丸太から斬った後が見え始めたかと思うと、細かい木のブロックになって崩れ落ちた。


「……えと、ドッグさん?『カタナ』の完成形は見えましたか?」

「おう、まぁ……次は強度と軽さを詰めてみるわい。」

「分かりました。出来たら呼んで下さい。」

「分かった……こいつぁ、結構頑張る必要がありそうだ。」

「シャル様……魔法もチートで、実力もチートでごぜーましたか。キューマスターよりチートなんじゃあーりませんか?」

「やっぱり、手合わせの時、全然本気じゃなかったのね。」

「凄すぎて何言ったらいいか分からないな。」

「そうですね。」


 とりあえず次は強度と軽さを詰めてみる事になり、シャル達三人は青の薔薇ブルーローズの拠点に向かうべく、ロンとドッグ、バズと別れたのだった。

シャルは怪力なのかもしれません。

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