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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
家とダンジョンとシャル
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幕間〜彼の物語はここから始まる〜

ロック君の幕間です。商人のおじさんの名前が判明します。この幕間から、三点リーダーを活用していきます。使い方は合っていないかも。

 ──光が見えた。とても暖かく力強い光が、



 ◆◆◆◆



「ジョイスおじさん!」

「ロックか!?久しぶりだな!元気にしてたか?」

「はい!!」


 僕はアーランド王国のジョイスおじさんの元へ戻って来た。父さんと母さんについて報告する為、そして父さんと母さんの親友であるジョイスおじさんに、あのミノタウルスについて報告をする為に、



「……そうか、異常なミノタウルスは倒されたのか……ボルトとパムの遺体は……」

「立派なお墓を建てました。僕が今まで稼いだお金を使って。」

「……そうか。」


 父さんと母さんの遺体をアーランド王国にある墓地に埋葬した。元々お墓を建てるつもりだった。僕の貯めたお金を使って、


「そのシャルという冒険者には本当に感謝しないとな。俺からも直接お礼を言いたいが、中々ドラグニア王国に行く余裕もないしな。」

「いつか行ける時に会いに行けば良いんですよ。あの人は多分本人が思っているより目立っているので、すぐに見付かりますよ?」

「そんなに特徴的なのか?」

「はい、多分今までのあった中で一番です。」


 シャルさんには申し訳ないけど、あの人程印象に残らなさそうで残る人は、中々いないと思う。


「これからどうするんだ?」

「冒険者になる為にポーターを続けます。」

「おいおい、別の道もあるぞ?」

「いえ、元々憧れていた職業ですし、今度は復讐の為じゃなくて、僕自身の為ですから。」

「……そうか、今のロックは良い顔してるな。」

「へへ、そうですか?」

「ああ、恋する男の顔をしている。」

「え゛?!こ、恋なんてしてないですよ!?」

「ははは!」

「ちょ、ジョイスおじさん!?笑ってないで何か言って下さいよ!」


 何でそんな事を言うのか分からない……と思う。


「……あ、そうだ。ボルトとパムの家を整理した時、ある物を見付けたんだ。」

「ある物?」

「ああ、ちょっと待ってろ。」


 そう言ってジョイスおじさんは、部屋の奥に行った。


(何だろう?父さんと母さんに関係する物なのは間違いなさそうだけど……)


「あったあった。これだよロック。」


 コト、


 しばらく待っていると、ジョイスおじさんが戻って来た。そして机の上に一冊の本を置いた。


「何ですか?……えっと……『ワールド・オブ・ダンジョン』?これは?」

「ボルトとパムの残した世界中のダンジョンの場所が記された魔法の本だ。」

「え!?魔導具なんですか!?」

「どっちかって言うと、マジックアイテムらしい。かなり前に説明された事がある。ボルトとパムがダンジョン好きになったきっかけの本だな。」

「……父さんと、母さんが?」

「読んでみな?」


 ジョイスおじさんの言われるまま、本を開く。


「……真っ白だ。」

「……真っ白だよな?」


 本を開くと文字は書いておらず真っ白の紙だった。


「確かにボルトとパムが残した物の筈なんだが、この通り真っ白でな?ロックなら何か知っているかと思ったが……」

「ああ、確か父と母がこの本を見ていたのを見た気がします。でも、何で真っ白なんだろう?」

「マジックアイテムだから魔力を通せば良いかと思ったが、そういう訳でも無いんだ。」

「「う〜ん。」」


 二人で考えた。父さんと母さんなら、何か残していてもおかしくは無い。


(そういえば……)


 僕は、あの赤黒いミノタウルスからシャルさんに助けられた時の事を思い出した。



 ◆◆◆◆



「……シャル……さん?」

「大丈夫よロック君。私が来たからには、あいつの好きにはさせない。」


 シャルさんが助けに来てすぐに僕は気を失った。そして起きた後、意識を失っていた間の記憶は無かった。けど、本を見て思い出した。


(……父さん……母さん。)


 シャルさんが赤黒いミノタウルスの相手をしている間。ずっと誰かが、僕の前に立って守っている気がした。それが父さんと母さんかは最初分からなかったが、なんだか暖かい気配がした。でもすぐに消えてしまった。


「貴方に吸収された魂達はどうなるの?」

「我輩ノ中デ生キ続ケル……永遠に!」



(……暗い……寂しい。)


 不安な気持ちでいっぱいだった。でも、その不安もすぐに消え去ってしまった。



「……“輝道きどう”!!」



 キィーーーン!!



「グギャァァァ?!!」



 光が見えた。とても暖かく力強い光が、その光が現れた時、声が聞こえた。



 ──ロック、


 ──ロック、



(……父さん?母さん?)



 もう聞けない筈の声が聞こえた。


『ロック、大きくなったな。』


(父さん!)


『本当ね。びっくりしちゃった。』


(母さん!)


 父さんと母さんだ!……もう会えないと思っていたのに、



『すまない、ロック。父さんと母さんは……死んでしまった。』

『……すぐに帰って来るって言ったのに、ごめんね?』


 父さんと母さんは僕に謝った。でも、二人は何も悪く無い。だから僕は大丈夫だよって言いたかった。



(……声が出せない……なんで?)



 僕の声を二人に届ける事が出来なかった。けど、二人の声は届いた。



『もう少し喋りたかったが、もう時間が無さそうだ。』

『声を届けられるだけで、奇跡みたいなものだからね。』



 声が少しずつ遠くなっていくのが分かる。二人には、もう会えなくなる。



『ロック!あのミノタウルスはもういない!お前は自分が生きたいように生きろ!』

『これから先はあなたの人生、生きたいように生きなさい!』


(分かったよ……父さん……母さん……ありがとう。)



 お礼を心の中で言った。きっと、僕はこれから先、自分の人生を歩む事になる。



『あ、でもあなた?アレは伝えなくても良いの?』

『あ!そうだ!忘れる所だった!』


(……うん?)


 父さんと母さんが最後に僕に伝えてくれた。



『『もし、同じ冒険者の道を歩むなら、俺(私)達がやりたかった事をやって欲しい!』』



(やりたかった事?)



『俺達の家には、ある本型のマジックアイテムがある!』

『私達がダンジョンを巡るきっかけになった物よ!』



(本型のマジックアイテム?ダンジョンを巡るきっかけ?)



『『合言葉は……』』



 ◆◆◆◆



「……“探検するイクスプロー”?」


 キィィィン!


「うわ!?」

「な、何だ!?ロック!お前何した!?」


 本型のマジックアイテムから光が溢れた。そして光が収まると、文字と地図が現れた。


「……えっと、『探検を求める者にこの本を捧げる』?」

「おいおい……なんだこりゃあ?」


 地図にはアーランド王国の周辺の地図が描かれていた。点のある箇所には見覚えがある。


「……これ、ダンジョンの場所が記されてます……しかも他のページにはダンジョンの詳細情報とか載ってますよ?」

「何だって!?」

「……えっと、まだ何か書かれています……『この本に示されたダンジョンを全て巡れ、さすればいつかは大いなる遺産に巡り逢うだろう。』って。」

「大いなる遺産?何だそりゃ?」

「分かりません……でも、もしこの本に書かれている通りの物があるなら……」

「……なるほど、ボルトとパムはこれを使ってダンジョンを巡っていたのか、やけに詳しいと思っていたが……ここに全部書かれているってことか?」

「かもしれません。」

「どうするんだ?」

「決まってます。」


 父さんと母さんがやりたかった事、この本に示されたダンジョンを全て巡り、大いなる遺産に巡り逢う事。


「僕が、父と母の意志を継ぎます!!」



 ──彼は冒険者になった後、各地のダンジョンを巡り、有名になる。『黄金の龍ゴールド・ドラゴン』という異名を持つ冒険者として、


(父さん、母さん……僕は必ず成し遂げてみせます!)



 ──でもそれは、別のお話。

この世界のダンジョンを攻略するのはロック君で、シャルではありません。よってシャルがダンジョンをメインで攻略する事はありません。でもロック君の話を書く事は無いので、皆さんのご想像にお任せします。

明日はフィーの幕間です。幕間というより短編みたいな感じになりました。主要キャラなのでちょっと端折りつつしっかりと書いてしまいました。それにより四章がまだ書けていません。今週は更新に穴が空きそうです。あらかじめ謝ります。申し訳ありません。

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