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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
家とダンジョンとシャル
26/111

家とダンジョンとシャル 5

「じゃあ改めて自己紹介しましょうか?私は、シャル。Cランクの冒険者で年齢は15歳。顔は訳あって見せられないけど、山奥でずっと暮らしていたから皆が知っている基本的な事も知らなかったりするわ。」

「・・・山奥でずっと?・・・あ、僕はロックです!年は11歳でポーター暦は二年です!ポーターになる前は宿屋や食事処で働いたりしてました!」

「よろしくね。」

「はい!」


 シャルとロックは露店を見る前に自己紹介を済ませた。お互いに得意な武器や出来る事も確認して何を準備すればいいか確認する為でもある。ロック君は普通の剣だと重いので、短剣を武器として使用しており、光・火・風の魔法を初級のものであれば使用出来るそうだ。先程言っていた通り、ポーター暦2年で罠解除や察知も出来るので、ダンジョンでは顔見知りの冒険者によく声を掛けられるらしい。


「実は、この辺りに来るのは初めてで・・・以前はアーランド王国で、ポーターとして活動していたんです。」

「え?アーランド王国?」

「はい。」


(まさか、その国の名前をまた聞くなんてね。)


 今世での生まれ故郷、アーランド王国の名前をまさかここで聞くとは思わず驚くシャル。


「顔見知りもいないので、見た目だけで判断されてしまって・・・ポーターを始めた時を思い出しましたよ。」

「そうなんだ・・・そういえばロック君、ご両親は?冒険者は確か15歳からなれるから、まだ一人旅には早い気がするけど?」

「あ、それは・・・」


 シャルの素朴な疑問に、ロックは気まずそうな顔をすると、


「・・・両親は冒険者だったんですけど、僕が5歳の時にダンジョン探索中に亡くなってしまって・・・」

「え・・・ごめんなさい、そうとは知らずに聞いてしまって・・・」

「い、いいんです!今は楽しく生きていますし、いつまでもうじうじしていたら、亡くなった両親に笑われますから!」

「・・・ロック君。」


 ロックの過去を聞いて戸惑うシャル。今は楽しく生きているとは言っても、まだ11歳の男の子。強がっている事は一目瞭然だった。


「さぁ、シャルさん!露店で必要なものを揃えましょう!」

「そうね、何を揃えればいいのかしら?」

「そうですね・・・」


 しんみりとした空気を変えようとロックは話題を切り替え、シャルも同じ事を考えていたので話を進める事にした。


「まずは、ダンジョンの地図を・・・と、言いたい所ですが、まだ探索されてから日数が経っていないので、まともな地図がまだ出てないです。こっちで作りながら潜った方が良いです。」

「なるほど。」

「次にランタンですね。魔法が使えると言っても無限に使えるわけではないので、基本はランタンで照らしつつ、必要な時にライトの魔法を使ったりします。それと・・・」


 ロックは次々とダンジョン探索に必要な物を揃えていく、簡易テントだったり、食料、ロープなど、


(結構必要な物が多いのね。)


 気付けば、大きなリュックに入りきらないくらいの量の物がまとまっていた。


「・・・あ、すみませんシャルさん。つい張り切って、予算も聞かずに揃えてしまいました。」

「問題ないわよ?」

「え?」


 そう言ってシャルは、ロックの揃えた品の会計を済ませた。


「き、金貨?・・・あ、あの!僕が今回は払いますから!」

「良いのよ、ダンジョン探索に必要な物も分かったし、これくらいなら問題無いわ。」

「・・・お、お嬢様だ・・・あ!荷物持ちます!」


 何かを呟きながらも、どうやらロックは納得した様だ。


「じゃあ、早速いきましょうか?」

「はい!」


 そう言ってシャルとロックは、ダンジョンの入口に向かっていった。



 〜ダンジョン入口〜



「意外と多いのね?」

「まだ探索が始まったばかりというのもあります。皆、どんな作りのダンジョンなのか確かめているんですよ。」

「なるほどね。」


 ダンジョンの入口に向かうと、そこはたくさんの冒険者で賑わっていた。ロックの話だとダンジョンが見つかってから数日程度らしい、ダンジョン自体は最初に入った冒険者曰く、中の構造が広いそうなので、そこそこ出来てから経っているそうだ。


「ちなみに、武器や防具も特殊な穴にすでに何人かまとめて入れているそうで、もうマジックアイテムが精製されていてもおかしくはないです。」

「さすがポーター暦二年ね。情報を手に入れるのが早いわね?」

「ダンジョンに潜れなかった分、色んな人から情報を集めてましたから。」

「偉いわね。」

「へへ、照れますね。」


 褒められて嬉しそうなロックを見つつ、ダンジョンに入る順番を待っていた。そうして、順番を待っていると、


「おいおい、ガキが並んでるぜ?」

「ここは子供が遊びに来る所じゃねぇぜ〜?」


 絵に描いたようなチンピラ冒険者が順番待ちの列に現れた。


「ぼ、僕は子供ですがポーター暦二年です!遊びに来た訳じゃありません!」

「はぁ?ポーター暦二年だぁ?」

「所詮ポーターだろ?ガキはガキだ!俺らに順番譲りやがれ!」


「・・・ちょっと良いかしら?」

「「?!」」


 反論するロックに絡むチンピラ冒険者を、さすがにそのまま放っておく訳にはいかないので声を掛けたが、声を聞いたチンピラ冒険者は何故か固まった。


「・・・ちょっと?」

「は!?・・・へぇ〜綺麗な声してんな〜冒険者か?オレ達に何か用かい?」」

「なんならオレ達と一緒にダンジョンに潜ろうぜ?」

「お断りよ。私はここにいるポーターの彼と一緒に潜るの、邪魔しないで貰えるかしら?あと、順番は守りなさい・・・常識よ?それとも、それすら分からないくらい節操がないのかしら?」

「「ああん!?」」


 チンピラ冒険者の二人はシャルに煽られて怒った。


「なんだなんだ?ちょっと声が良いからって調子に乗ってるんじゃねぇぞ!誰がお前みたいな怪しい見た目の奴誘うか!」

「そうだそうだ!貴族かなんだか知らないが、お高くとまってるんじゃねぇぞ!」


 そう言って、チンピラ冒険者の二人はシャルに殴り掛かった。


「シャルさん!」


(乙戯流体術、流の型・・・“水簾すいれん”!)


 クイッ、ダーン!


「「ぐぇ?!」」


 シャルはチンピラ冒険者二人の攻撃を上から下に受け流すと、そのまま二人を地面に叩きつけた。


「野蛮ね。」

「・・・凄い。」


 あまりにも綺麗に攻撃を受け流して反撃するシャルを尊敬の眼差しで見るロック。


「ぐ、テメェ何なんだ!?」

「私はCランク冒険者のシャルよ?」

「へ?!シャ、シャルって言えば“隠者”の・・・あの氷帝に勝った女・・・」

「よく見たら特徴が一緒だ!?ヤバいぞ!?“薔薇の集い”に眼を付けられたらただじゃすまねぇ!」

「「うわぁぁ!!」」


「・・・“薔薇の集い”、どれだけ怖がってるのよ。」

「えっと、まぁ、有名ですからね。」


 シャルの名前を聞くと、“薔薇の集い”を恐れたチンピラ冒険者の二人は脱兎の如く逃げ去っていった。



 〜数分後〜



「ようやく中に入れたわ・・・意外と広いのね?」

「確かに広いですねこのダンジョン。結構前からあったのかもしれないです。」


 中に入るとまず大きな広間に出た。入る時、結構な冒険者が入ったのが見えたが、それでも狭く感じない程中は広かった。


「さて、これからどうするの?」

「まずはダンジョンの特性を把握します。ダンジョンによって出てくる魔物は変わってきますし、罠も変わってきます。もちろん素材も変わります。」

「なるほど、どうやって把握するの?」

「情報によると、このダンジョンは階層が作られているダンジョンなので、まず一階層目をくまなく探索します。それである程度の特性は把握できます。古参のダンジョンとかだと、階層ごとに変わったりと特殊なのが多いですけど、そこまで古くないダンジョンならだいだいそれで把握できます。」

「へぇ。」


 自己紹介していた時はオドオドしていたロックだが、ダンジョンに入り説明を始めると、先程までとは打って変わり、頼りがいのある雰囲気を醸し出していた。


(慣れてるわね。一緒に行く事にして正解だったわ。)


 正直、ダンジョンの知識は前世でのゲームの知識程度しかなかったので、今世でダンジョン慣れしているロックに説明してもらい、非常に助かっている。


「シャルさんがダンジョンの知識が無いって事は、潜るの初めてなんですよね?」

「ええ、そうよ。」

「なら、他の冒険者もいるので、一階層目はゆっくり探索してみましょうか?広いダンジョンみたいなので、案外未探索のエリアとかありそうですし。」

「じゃあ、そうしようかしら?」

「はい!じゃあ行きましょう!」


 シャルとロックは一階層目の探索を始めた。


「そういえば、一つ聞きたいんだけど。」

「何ですか?」


 冒険者のたくさんいる一階層目を歩きつつ、シャルはロックに話しかける。


「階層があるって事は、下の層から地上に戻れる転移陣的なものはあるのかしら?」

「転移陣ですか?」


 ダンジョンにありがちなものがあるのか気になって聞いてみたが、ロックは少し考えると、


「古参のスタンピートが起きないダンジョンには、確かそういう特殊な陣があるって聞いた事はありますが、基本スタンピートが起きる可能性があるダンジョンには、そういったものは無いらしいですよ?そもそも、転移魔法自体が失われた魔法らしくて、かの“賢者”フランソワ様でさえ完全に再現出来ず保留になっているそうですよ?」

「フランソワさんでも?」

「はい、ダンジョンによっては、下の層から地上近くの層まで繋がった大きな縦穴がある所もあるらしいですけど、このダンジョンにあるかはまだ分からないです。」

「そうなんだ。古参のダンジョンって随分と特殊なのね?」

「そうですね、一般公開されているフランソワ様の“ダンジョン研究書”では「人の手が加えられたダンジョン」って話です。なんでも、ダンジョンを半永続的に有効利用する為に創り変えられたのではないか?って話らしいです。」

「なるほどね、いつか行ってみたいな。」

「僕もいつか行ってみたいです・・・まぁ、Bランクの冒険者の資格が必要ですけど。」

「ロック君ならBランクなんてすぐよ。」

「へへ、薔薇の集いに認められたシャルさんにそう言ってもらえると嬉しいです。」


 シャルとロックは、どんどんと奥に進んでいく。


「そろそろ明かりが無い所に出そうですね。ランタンに灯をつけます。」


 ポゥ、


 とにかく奥に進む事にしていたシャルとロックは、冒険者達がほとんど見えなくなる所まで進んだ。ロックはランタンに灯をつけ、辺りを見渡す。


「やっぱり一階層目なので、罠も解除してあるみたいですね。」


 ロックは壁に触りながら罠の確認をしていた。


「ダンジョンでは、どんな罠が生成されるの?」

「色々ですね。矢みたいに細い棒が飛んできたり、足場が崩れたり、壁が迫ってきたりとか、とにかくあらゆる罠を想定した方が良いですね。」

「察知するのは魔力を使って?」

「そうですね。魔力で感覚を研ぎ澄まして違和感のある場所が大体罠のある場所です。あとは、感が必要になってきますね。巧みに隠された罠もあれば、分かっていても解除しずらい所もあるので、経験がものをいう時もあります。」

「へぇ〜。」


 シャルはロックの手慣れた様子に感心しつつ、少し魔力を使って感覚を研ぎ澄ましてみた。


(なるほど、こういう事。サーチって使わなくても、周りの状況はある程度把握出来るのね。罠だけでなく人の気配や魔物の気配も分かるし、普段はこれで充分かも。)


 シャルは魔力の有効な使い方を覚え、ちょっと嬉しくなった。そして、一通り探索をし終えた所で、


「あ、階段がありますよシャルさん。どうします?」

「本当ね。じゃあ降りようかしら?探索するっていってもほとんど何も無かったし、二階層目の方が何かありそうだし。」

「じゃあ、行きましょう。」


 二人は二階層目に続く階段を降りた。



 〜二階層目〜



「階段って、やっぱり一つじゃないのかしら?」

「そうですね、色んな所に下層に続く階段があるので、冒険者と鉢合わせになる事って案外少なかったりしますよ?まぁ、まだ二階層目なので会うとは思いますが。」


 下層に降りると、周辺はあまり人のいる気配がしなかった。降りてくる階段も違うので、距離もそこそこ離れている様だ。


「じゃあ、シャルさん。罠察知しますね?多分今日、人の入った形跡がないエリアみたいなので、罠はあるかもしれないですし。」

「あ、ロック君。ちょっといいかしら?」

「何ですか?」

「試してみたい事があるんだけど良い?」

「試してみたい事ですか?良いですけど、何をするんですか?」

「見ててね?」


 そう言ってシャルは、剣を抜いてロックの前に出ると、


(空の型・・・“祈響ききょう”!)


 リーン、リーン・・・、


「はぁ!」


 ビュン!ガタガタ!ドド!


 剣で音を響かせ一振りすると、辺りにあった罠がいっぺんに作動した。


「・・・・・・。」

「う〜ん、駄目ね。罠を作動させるだけだから下手すると危ないわね。」


 乙戯流の技によって、隠された罠を離れた位置から作動させたが、作動させるだけなので下手をすると周りの人間を巻き込む恐れがあった。


(もう少し工夫が必要ね。)


 そう思いながらシャルは剣を収めた。


「ありがとうロック君、先に進みましょ?」

「シャ、シャルさん?!今のはなんですか!?」

「うん?音を反響させて、罠の発動を誘発したのよ?上手くいけば無力化出来るかなって思ったけど、もう少しやり方を変えないといけないみたい。」

「・・・音を反響?・・・誘発?」


 シャルの言った意味が理解できず首を傾げるロック。


「まぁ、細かい事は気にせず行きましょう?」

「・・・そうですか?」


 これ以上聞いても何も答えてくれそうにないので、ロックはおとなしく先に進む事にした。


 コッコッコッ、


「ギャッギャ!」

「えい。」


 スパッ、


「ワォーン!」

「ギャギャ!」

「それ。」


 スパッ、スパッ、


 なんのとも間の抜けた声と共に出て来る魔物を次々と斬り捨てていくシャル、


「・・・凄い・・・てっ、シャルさん!?剥ぎ取り、剥ぎ取りしてください!」

「あ、そっか、この魔物の素材も普通より質が高いのよね。いつもそこそこ売れそうなのしか剥ぎ取ってなかったから忘れてたわ。」

「どういう剥ぎ取りをいつもしているんですか!?死体をダンジョン内で放置すると、ダンジョンに吸収されるので、しっかり剥ぎ取らないと駄目ですよ!」

「ごめんね。」


 ロックに怒られ、シュンとしながら素材を剥ぎ取るシャル。


「それにしても、“隠者”のシャルの噂は聞いていましたが、シャルさん本当にお強いですね。」

「ええ、生半可な鍛え方はしてないからね。」

「・・・この国の貴族って皆そうなのかなぁ?」

「何か言った?」

「いえ、何でもないです!」


 素材の剥ぎ取りを終え、先に進む準備を進めながら会話するシャルとロック。


「荷物は本当に良いの?さっき話したけど、白薔薇のエンブレムがあるから持っていくわよ?」

「そしたら、ポーターとしての僕の存在価値の一つが無くなりますよ?」

「う、うーん、そうね!よろしくねロック君!」

「はい!」


 そういえばそうだなと、これ以上は何も言わない方が良さそうだと思い、流して先に進む事にした。



 〜三階層目〜



「・・・こんなに楽な探索は初めてですよ。」

「出て来る魔物も設置されている罠も大した事ないし、確かに楽ね。」

「全部シャルさんが事前になんとかしてますからね。」


 シャルとロックは順調に下の階層に降りていた。魔物はシャルが斬り捨て、罠はシャルが事前に察知してロックが解除する。その単純な作業の繰り返しでどんどん進んでいた。


「流石にこの広さで三階層目ともなると、人もほとんどいないわね。」

「明らかに進む速度が速いですからね。」

「確かに・・・ロック君、疲れてたりしてない?」

「大丈夫ですよ、前に十階層目まで一気に行ったダンジョンとかありますし、その時に比べると大分楽ですし。」

「そう?なら良かった・・・うん?」

「どうしました?シャルさん?」

「この壁・・・」


 ロックの体力の心配をしていると、不意に通路の壁に違和感を感じ足を止めた。


 コン、コン、


「この壁、先が空洞になっているみたい。」

「本当ですか?!・・・なるほど・・・隠し通路ですか、よく分かりましたね?」

「常に周りの気配を探っていたからね・・・あとはつい最近、隠し通路のある所を見たからかな?」


 後半の言葉は、ロックに聞こえない程小さな声で呟いたが、気配だけでは判断しずらいものだったので、屋敷での経験は意外と役に立った。


「何か通路を開くものとかあるのかしら?」

「基本的には無かったはずです。隠し部屋へ続く道の扉は、火薬を詰めた爆弾とか、魔法や強力な武器での攻撃で壊して進みますから。」

「なるほど。」


(・・・ざん。)


 キン、


「ん?」


 剣を収めた音が聞こえてシャルを見たロック。だが、何が起きたのか分からず首を傾げた。


 ズズズッ!ガラガラガラ!


「この先に何があるか楽しみね?」

「・・・もう、シャルさんに関してはそういうものだと思うしかないですね。」


 驚きを通り越して若干呆れた様子で、ロックは先に進むシャルに付いていく、


「これは・・・宝箱が一つだけ?」

「罠もあるみたいですね。ダンジョン・コアが冒険者を釣るのによく使う手です。中にアイテムか魔物が入っているのですが、罠を仕掛けて獲物を取り込む姑息な方法です。」

「なるほど、そんなに簡単にアイテムが手に入る訳じゃないのね?」

「相手も生きていますからね。」


 隠し通路を進むと、大きな広間に出た。中央に木で出来た宝箱が一つだけ設置してあり、明らかに罠の匂いがした。


「ロック君?さっき使った技を改良したの使ってみたいんだけど良いかしら?」

「え?・・・どうぞ。」


 なんとなく察したロックはシャルの後ろに下がる。


(空の型“祈響ききょう”・・・合わせ、“祈響歌いのひびか”!)


 リーン、リーン・・・キィーン・・・・


「はぁ!」


 ビュン!キキキキキッ・・・


「・・・うん!上手くいったみたい!」

「えと、どうなったんですか?」

「この辺りに罠があったんだけど・・・ほら!」


 ボロッ、


  シャルが罠のあった所を示すと、そこには砕け散った槍や矢、何かの罠の残骸があった。


「流石に崩れる足場とかそいういう類の罠は無力化出来ないけど、槍や矢なんかの短距離とか遠距離から攻撃してくるものはこれで無力化が出来るわ。」

「いやもう・・・凄すぎますって。」


 最初から思っていたが、なんかもう自分は必要無いんじゃないかと呆れながら思うロック、


「宝箱そのものには、罠は無かったみたいね。」

「何かしらアイテムが入っている可能性が高いですね。」

「開けてみるわね?」


 キィ、


「これは・・・籠手?」

「見せてもらっても良いですか?」

「はい、どうぞ。」

「う〜ん?・・・あ!この籠手、風の魔法が込められてるみたいです!マジックアイテムですよ!」

「本当に?!当たりね!」


 ロックが宝箱に入っていた籠手を調べると、どうやら風の魔法が込められてるいるマジックアイテムだった様だ。シャルとロックはダンジョンに潜って早々、マジックアイテムを手に入れて喜んだ。


「でも私には扱いにくそう、男の人が使う様な感じね。」

「それなら高値で売れますし、競りに出しましょうか?」

「う〜ん・・・せっかくだから、ロック君が使ってみたら?」

「僕がですか?!そんな、悪いですよ!」


 シャルの提案にロックは物凄い勢いで首を横に振った。


「正直、魔物の素材があるからお金には困らなそうだし、将来冒険者を目指すなら、そういうのは持っていた方が良いと思うから、先輩冒険者からの贈り物って事で・・・ね?」

「・・・あ、ありがとうございます。」


 もの凄く嬉しそうに籠手をはめるロックを見ながら、シャルは顔は見えないが微笑んだ。

一応補足です。

・マジックアイテム:ダンジョンなどから精製される天然もの。

・魔導具:人の手で作られたもの。

という感じで考えています。


乙戯流解説


〜体術〜


・流の型“水簾すいれん”:相手の攻撃を上から下に受け流して地面に叩きつける技。


〜刀術〜

・空の型“祈響ききょう”:音を響かせ対象に衝撃を与える技、音が響く所のみ有効。


・空の型“祈響歌いのひびか”:“祈響ききょう”の改良版。音を響かせ、さらに魔力で波長を合わせて強力な衝撃で近距離・遠距離攻撃の罠などを無力化した技。

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