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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
家とダンジョンとシャル
25/111

家とダンジョンとシャル 4

ダンジョン回始まりです。三章最後の方の台詞を矛盾があったので、一部変更しています。

 チュンチュン・・・、


「・・・おはよう、フィー。」

「おお!シャル様おはようごぜーます!」


 家を手に入れて数日、屋敷での快適な生活を満喫していた。家中の掃除、庭の手入れも終わり、ベッドなどの家具や料理するための材料を買い揃え、家としての本来の姿を取り戻した。


「今、朝食作るわね?」

「イエス!シャル様!お皿とかあらかじめ用意しておくでごぜーます!」

「うん、お願い。」


 自身が料理好きという事もあり、食事は全部自分で作っていた。初めは包丁も無かったのと、前世と今世ではそもそも食材が違うので苦戦した。ただ、キューマスターが地球にあった物と似た食材をまとめたレシピ本を残していたそうなので、それを読破しナイフも上手く使い、地球やこの世界での料理が出来るようになっている。


「シャル様の料理は美味しいでごぜーますからなぁ、ほっぺが落ちるかと思ったであります。それにしても、まさかキューマスターが残した劣化防止がついた分厚いレシピ本を1日で読破するとは・・・」

「やっぱり料理が出来ないのは死活問題よね?だから本気出しちゃった。」

「『本気出しちゃった。』で、完璧に内容覚えて料理出来る人はそうそういないでごぜーますよ!?」

「でも、よくそういうレシピ本とか残っていたわね?」

「まったくこのお方は・・・まぁ、キューマスターは色んな物を作っていたでごぜーますが、『世界に強い影響力を及ぼしかねない魔導具や資料は全て処分した。』と言っていたのでありますが、レシピ本とかのお役立ちアイテムは少し残していたでごぜーますよ。」

「なるほどね。」


 正直フィーの以前のマスターが残してくれた物でだいぶ助かっていた。地球で使い慣れていたキッチンでの道具、お風呂に入る時や入った後に使う道具、照明も明るさや色合いを調節出来るし、トイレも温水洗浄付き、水は水の宝玉アクアオーブからひいた物を全ての用途で使っているので、常に綺麗で新鮮な水が使える。


「はい、出来たわよ。盛り付けるわね?」

「かしまりでごぜーます!」

「・・・よし!じゃあ食べましょうか?」

「食べるでごぜーます!」


「「いただきます。」」


 今日はベーコンに似た食材と野菜を炒め、さらにスープやサラダなど簡単な物を作り軽い食事にした。


「うんうん!美味しいでごぜーます!軽く炒めているだけなのに、何でこんなに美味しいでありますか!」

「調味料とかかな?レシピ本に作り方書いてあったし。」

「調味料が一緒なら、キューマスターの料理よりも美味しいのは説明出来ないでごぜーますよ!きっとシャル様自身に秘密があるのでありますよ!」

「そんなに大層な秘密はないと思うけど?」


 フィーはシャルの作る料理を絶賛してくれるが、シャル自身は普通かな?と思っていた。切り方で味や食感が決まってくるとは言うが、やはり包丁で切るやり方とナイフで切るやり方とでは違うし、食材も微妙に違うので、まだまだ追究出来ると思っていた。



 〜数十分後〜



「「ごちそうさまでした!」」


 食事を終え、片付けを始めた二人、


「今日も美味しい朝食が食べられて幸せでごぜーます!」

「そう?良かった。」

「・・・さて、片付けも終わったでごぜーますし・・・ぬ?」

「どうしたの?」


 片付けを終えた所で、フィーが急に首を傾げたので不思議に思い問いかけるシャル、


「ややや?!この邪悪な気配は!?奴でごぜーますな!いざ、出陣!!」

「え?!フィー!?」


 そして急に叫んだかと思うと、庭の方へ飛び出していった。


「・・・人が近付いて来る気配はするけど、邪悪な気配はしないけどなぁ?」



 ◆◆◆◆



「おのれ久しぶりに出たな宿・敵!今日という今日は引導を渡してくれるでごぜーます!!」

「なんで殺意振りまいて来るの?!というか、屋敷が完璧に修復してる!?やっぱり魔導具だったのね!?お願い!調べさせて!魔導具型の屋敷なんて初めて見るのよ!」


 バチバチ!


「な?!前よりも結界が強力になってる?!庭にすら入れないなんて!?」

「ふっ、甘いでごぜーますなぁ!銀髪の魔女よ!以前までの結界だと思ったら大間違いでごぜーますよ!!」

「くっ!こうなったら私の全魔力を集中させてでも・・・」

「何?!この周辺を吹き飛ばす気でごぜーますか!?」


 ポカッ!


「やめなさい、阿呆賢者。」

「痛〜い?!何するのよリナリー!?」

「やや?!同士!?」

「同士じゃないわ!いつも思うけど、あたしの体型を見て親近感を覚えるのはやめなさい!?」

「え〜、だって年齢的にロリババア・・・」

「あん?最後の言葉はよく分からないけど、意味は伝わったわ。」

「剣を抜くなでごぜーます!?銀髪の魔女の武器と、その氷剣の力は洒落にならないでごぜーますよ?!」


「・・・何やってるんですか?三人で。」


「「「シャルちゃん(様)!」」」


 庭の方へ出てみると、リナリーとフランソワがフィーと戯れていた。


「シャルちゃん!久しぶりね!あの屋敷を手に入れたって本当だったのね!?早速で悪いけど、結界の中に入れてくれないかしら!?」

「シャル様!この女だけはシャル様の許可があっても入れるのは拒否するでごぜーます!」

「何でよ!?」

「えっと、とりあえずお久しぶりです。リナリーさん。王都から帰って来たんですね?」

「ええ、今日帰って来たんだけど、シャルちゃんがこのシルキーと契約したって聞いて、フランソワが行きたいってうるさくて・・・」

「「なんで二人とも無視?!」」


 シャルは二人を放っておいてリナリーに話しかけ、リナリーも剣を収めてシャルと話し始める。


「あ、そうそう、シャルちゃんが知らないだろうと思って、ダンジョンの情報を持ってきたんだけど。」

「ダンジョン?」

「うん、最近出来たダンジョンでね?山脈の近くに出来たらしいの。興味ある?」

「はい!あ、立ち話もなんですし、良かったら屋敷の中で話しませんか?」

「え、良いの!?前々から気になってたのよね。結界は大丈夫?」

「はい、私やフィーがいる時だけですけど、自由に入る人を選べるみたいなので。」

「へぇ〜凄いわね。フィーってそのシルキーの名前なのね?よく考えたら初めて聞いたわ。」

「そうなんです。どうぞ、付いてきてください。」

「わかったわ。」

「え?!私も・・・」


 バチバチ!


「オマイは拒否でごぜーます!悪さをしない様に見張るでごぜーますよ!」

「そんな〜!?」



 ◆◆◆◆



 ガチャ、


「どうぞ、リナリーさ・・・あ、団長。」

「入る前、普通にさん付けで呼んでたわよね?」

「すみません。まだ慣れてなくて・・・」

「まぁ、正直どっちでも良いのよ?お邪魔するわね?・・・わぁ!庭も凄かったけど、中も素敵ね。」


 シャルはリナリーを屋敷の中に招き入れた。玄関もマットやちょっとした飾りを購入したので、最初の時よりはお洒落な雰囲気に変わっていた。


「そうなんですよ。あ、靴はここで脱いで上がって下さい。」

「え?ここで脱ぐの?」

「はい、家の中では靴を脱いで過ごすのが、この屋敷では常識になるので。」

「へぇ〜。」


 リナリーが靴を履いたまま上がろうとしたので、シャルはリナリーに靴を脱いで上がる事を教えた。どうやらこの世界では、家の中を移動する時などは靴を脱がないのが常識だとフィーに教えてもらった。だから、あの時意味深に頷いていたのかとそれを聞いた時は思ったが。


「客室にご案内しますね?」

「客室があるの?」

「はい、一応客室があるんですよ。客室用の飾りとかは買ってないので、簡素な物しかないんですけど。」

「さすが広いだけはあるわね。」


 客室は今度誰かを招いた時に、談笑出来る所として使おうかと思っていたが、今は自分の生活スペースに必要な家具やものを揃えている途中なのでまだ手付かずだった。ただ、元々あったソファーや机、灯りなどがいい雰囲気を出しているので使えない事はなかった。


「じゃあリナリー団長。そこのソファーに座って待っててください。今紅茶を淹れてきますので。」

「シャルちゃんその、こんな言い方はあれだけど・・・紅茶淹れられるの?」

「え?」


 まさかそんな質問をされるとは思わなかったシャル。


「はい。紅茶も淹れられますし、料理も出来ますよ?」

「料理も?!・・・ごめんシャルちゃん、てっきりそういうの出来ないと思ってた。」

「世間知らずだからですか?」

「世間知らずだから。」

「もう、流石にそこまで何も知らない訳無いじゃないですか。」

「 うう、ごめんって。」


 どうやらリナリーの中では、シャルは世間知らず=料理も教えてもらった事が無いレベルという考えだったらしい、


(確かにこの世界の事はまだよく分からないけど、記憶が蘇る前も一切料理が出来なかったって事は無かった・・・はずよね?)


 確か淑女のたしなみで紅茶の美味しい淹れ方を教わった気がするが、わがまま放題するようになった時は一切やっていなかったので、若干不安になる。


 コポコポ・・・カチャ、


「どうぞ、リナリー団長。紅茶です。」

「ありがと・・・美味し?!え!?何これ?!」

「紅茶ですよ?」

「・・・こんなに美味しいのは初めて飲んだわ。」

「ありがとうございます。」


 フィーに料理を作った時もそうだが、普通に作っているだけなのに何でこんなに驚かれるのか不思議に思う、


「それで・・・ダンジョンでしたっけ?」

「そうそう、ブルーマリンの西門から出てずっと行くと山脈があるんだけど、その手前くらいに新しいダンジョンが発見されたの。」

「へぇ〜、そうなんですか?」

「そうなのよ。」


 山脈というと、以前シャルが一年間ダイエットのため山籠りした所のはずだ。あの頃は乙戯流の感覚を取り戻す為、一切自重しないで魔物を相手にしていた。かなり人里離れた所で戦っていて魔物の素材は処分したが、中々悲惨な事になっていたはずだ。


「ところで、リナリーさ・・・団長?」

「ん?」

「ダンジョンってどんな所なんですか?」

「へ?!知らないの!?」

「えっと、ダンジョンっていう名前は聞いた事あるんですが、あまり詳しい事は知らないというか・・・」


(ゲームで言うダンジョンなら多少は分かるけど、この世界のダンジョンが同じものとは限らないし。)


 正直、前世でもゲームをあまりした事が無いので、異世界転生とかファンタジーとか基本的な事は多少は分かるが、ダンジョンの知識はあまりなかった。それにこの世界のダンジョンが前世のゲームと同じものとは限らない、


「・・・流石、世間知らずのお嬢様・・・えっと、ダンジョンだったわね?」

「はい。」

「ダンジョンは『ダンジョン・コア』っていう一種の魔物の様なものが、特殊な状態に形成した住処の事を言うのよ。ダンジョン・コアからは魔物が生まれるの。」

「ダンジョン・コアですか?うちにあるハウス・コアに似てますね。」

「え?何それ?」

「さっきフランソワさんが言っていた様に、この屋敷は魔導具なんです。それで、ハウス・コアという屋敷の心臓部みたいな所があるんです。」

「そんな物がこの屋敷にあったの?!・・・大丈夫なの?」


 リナリーはシャルがしれっと言った言葉にもの凄く驚いた。


「結界を張ったり、屋敷と屋敷の一部と化したものを修復するだけで、魔物は生み出したりしないので大丈夫ですよ。」

「そう・・・にしてもとんでもない屋敷ね。前に見た時ボロボロだったのが、新築みたいになってるから結構びっくりしたのよ?」


 一応フィーから契約後、ハウス・コアについて少し聞かされていたが、「キューマスター曰く、『屋敷を守る事と管理する事に特化したものだから危険はゼロだ。』と話していたでごぜーます!」と言っていたので、危険は無いようだ。


「それでリナリー団長?」

「あ、ダンジョンの事ね。ダンジョン・コアは自らの身を守るために魔物を生み出すと言われているの。魔物の強さや種類はその地域の環境や魔素の量によって決まってくるわ。しかもそれだけでなく、迷宮を作り、階層を作り、自分の元へ敵が辿り着かないように入り組んだ作りにするから、辿り着くまでに時間が掛かるの。」

「面倒な生き物ですね。」

「でも、利点もあるのよ。」

「利点ですか?」


 そう言って一度紅茶を飲むリナリー、


「まずダンジョンから生まれてくる魔物は、基本的にダンジョンから出る事は無くダンジョン内で生活する。そのせいなのか、魔物の素材が通常より質が高いの。魔素が循環している影響ってフランソワが言ってたけど、あまりよく分からないわ。」

「なるほど。」

「次にダンジョン内で生えてくる薬草などの素材も、同じ影響で特殊なものや質が高いものが多い。場所によっては、良質な鉱石も精製されるわ。しかもすぐに生えてくるから毎日潜っても素材が取れない事はまず無い。」

「良いですね」

「さらにダンジョンの外には特殊な色の穴があるんだけど、そこに武器とか防具を放り込むと、しばらくした後に魔力の篭ったマジックアイテムが精製されたりするの。」

「そうなんですか?」


 マジックアイテム、中々面白そうなワードが出て来たなとシャルは思った。


「そう、ただダンジョン内のどこかに精製されるから、狙った武器を手入れる事は出来ないし、力を持った魔物が持ったり、周辺の木や石とかの素材を使って造られた宝箱の中に入ってたりとか様々よ?まぁ、良いものが手に入る確率が高いし、研究熱心な人もいるから皆どんどん入れちゃうけど。」

「良い事ばかりじゃ無いんですね。」

「まぁね、相手は身を守る為に住処を創っているから安全な事は無いわ。魔物が生まれない特殊なエリアもあるけど、基本は危険と隣り合わせ、罠とかも宝箱の要領で創られているから、警戒するのも大変だし、モンスターのスタンピートの可能性もあるから。」

「スタンピート?」


 聞きなれない言葉に首を傾げるシャル。


「そう、魔物が生まれすぎてダンジョンから溢れたりするの。数がダンジョンによっては、とんでもない数が溢れてくるから、定期的に魔物を間引いたりするけど、最近出来るダンジョンは、スタンピートがよく起きるから早めにコアを破壊して無力化してるのよ?古参のダンジョンは何故かそういうスタンピートが起きないし、国の利益になってるけど。」

「そうなんですね。」


(ダンジョン、危険もありそうだけど面白そうね。)


 シャルは、ダンジョンに非常に興味が湧いた。


「ダンジョン、行ってみたいです!」

「そう言うと思ったわ。これ、ダンジョンへの地図ね。必要な物は向こうに拠点があって、露店が開いているから買い込む必要はないわよ。まぁ白薔薇のエンブレムがあるから荷物の心配は無いだろうけど。」

「ありがとうございますリナリーさん。早速、行ってきますね。」

「え?もう?ゆっくり行けばいいのに。」

「・・・というより。」


 ドドドドド!


『なんとしても結界に穴を!』

『舐めるな小娘!500年以上生き、特殊な屋敷に住むわっちの魔力が、そんじょそこらのシルキーと一緒だと思うなでごぜーます!』

『いつも思うけど、何でそんなに魔力総量と威力が高いの?!・・・こうなったら“オリジン”で・・・』

『その武器は使用禁止でごぜーます!周りの影響も考えるであります!』


「・・・そろそろ、あの二人を回収しないと周りに多大な被害が。」

「・・・そうね。フランソワは、私が責任をもって連れて帰るわ。シャルちゃんの屋敷の中に入れてもらえる日は遠のきそうね。」

「そうですね。二人が和解するまで入れません。」

「・・・いつになるのかしら?」



 〜結界の外〜



 ポフッ、


「・・・じゃあ・・・シャルちゃん、またね?」

「リナリーさん?何故抱き付いたまま言うんですか?」

「な?!わっちの特等席が!?」

「誰のものでも無いわよ?」

「シャルちゃん!屋敷は!?」

「フィーと和解しない限り駄目です。」

「そんな〜?!フィーちゃん!仲良くしましょう!」

「ええい!気安く名前を呼ぶな!オノレはわっちの事を変なシルキーとかしか言わないでごぜーます!」

「だって知らなかったし!」


 フィーを抱き締めて回収しようとしたら、何故かリナリーが抱き付いてきて、フィーが騒ぎ、フランソワも騒ぎカオスな状態になったが、シャルはダンジョンに向かうべく準備するのだった。



 〜数時間後〜



「ここから先は、ダンジョンと近くに露店が並ぶ所になる。不審者は通せないが身分を証明出来るものは?」

「はい、どうぞ。」

「?!・・・Cランク・・・“隠者”の?!失礼致しましたシャル様!お通り下さい!」

「う、うん・・・ありがとうございます。」


(西門を出る時もそうだったけど。何でそんなに畏まるのかしら?原因は分かってるし、元王女だけど、一般の冒険者よ?)


 ダンジョン近くまでやってきたシャルは、警備兵のような人間にギルドカードを見せながら思った。ブルーマリンから出る時も門番が「シャル様!」と敬礼し始めたので内心かなり驚いた。白薔薇のエンブレムや薔薇の集いの影響が強くあるが、一応一般人だとシャルは思っている。周りはそう思っていないが、


(それにしても、小さな村みたいになってるわね?こんなに本格的に拠点を作るとは思わなかったわ。)


 リナリーから拠点があるとは聞いていたが、小さな村の様になっていた。宿の様な所もあり、食事処もある。そして近くには露店があり冒険者達や商人達で賑わっていた。


(さて、買い物を・・・あ、何を揃えればいいのかしら?)


 よく考えたら、何を買い揃えれば良いのか聞いていなかったので、ちょっと困ったシャル。


(まぁ、聞けば分かるわね。)


 そう思って商品を見ようと露店に近づくと、


「・・・あ、あの!」

「何かしら?」

「え?!き、綺麗な声・・・え、えっと冒険者の方で間違い・・・ないですよね?」

「ええ、そうよ。」


 金髪の少年がこちらに近づいて来ているのは分かっていたので即座に答えたが、驚かれた様だ。


「ぼ、僕はロックと言います!突然ですみませんが“ポーター”は必要ありませんか?」

「ポーター?」


 よく見ると金髪の少年は、大きなリュックを背負っていた。


「荷物持ちって事?」

「え、えっとそれだけじゃないです!罠解除も出来ますし、ライトの魔法も使えるのでダンジョン内を明るく照らせますし、料理も出来るので食事も提供出来ます!」

「そ、そう?」


 もの凄く自分をアピールしてくるロックという少年にシャルは戸惑った。元々ソロでダンジョンに潜るつもりだったし、荷物に関しては白薔薇のエンブレムがあるから問題無かった。それ以外の事も、なんとかなりそうな気がしたのでどうやって断ろうかなと思考を巡らせる。


「えっと、ロック君で良いかしら?」

「はい!」

「どうして私に声を掛けてくれたの?自分で言うのもなんだけど、見た目が怪しいし・・・」

「それは、その・・・色んな方に声を掛けたんですけど、僕がまだ子供なのが原因なのか断られてしまって・・・お、お姉さんはまだ誰ともダンジョンに潜る様子じゃなかったのでどうかな?・・・と。」

「なるほど。」


(う〜ん・・・困ってるみたいね。)


 オドオドしながら理由を言うロックの言葉にシャルは頷くと、


「ロック君。」

「は、はい!」

「ダンジョンには詳しい?」

「は、はい!こう見えて何度か冒険者の方と潜った経験があります!」

「そう・・・」


(よく考えたらダンジョン内の事よく分かってないし、誰かしらガイド的な人がいても良いかも?)


 観光ではないのだが、ダンジョンに潜るのに詳しい人間はいたほうがいいなと思い、


「じゃあ、お願い出来るかしら?」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

「ええ・・・あ、そうそう私はシャル、よろしくね。」

「へ?!・・・シャルって“隠者”の・・・は、はい!よろしくお願いします!」


 こうしてシャルはダンジョンに潜る間、ポーター“ロック”を仲間に加える事になった。

ダンジョン回の主役“ロック”君です。このダンジョン回のみの出演予定となっています。

ロック君の過去は重いです。あらかじめご了承ください。

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