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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
青の薔薇と氷帝
14/111

青の薔薇と氷帝 4

 〜ギルドエリア〜


「ここが、ギルドエリアよ。」

「やっぱりここも広いですね。」


 魔導具店のメンバーと別れたシャルとコリンは、Cランクの試験を受けるべくギルド総本部に向かう為、ギルドエリアに移動用水路の舟に乗ってきた。


「このエリアについて説明しとくわね。このエリアは色んな団の拠点があって、中央にギルド総本部があるの。私のいる“青の薔薇(ブルーローズ)”の拠点や、ロンの“星の手(スターハンド)”、魔導具店“マスクウェル”の店員全員が所属している“白き賢人(ホワイトワイズマン)”の拠点も全て集まっているわ。」

「じゃあここに来れば、色んな団をいっぺんに見る事が出来るんですね。」

「そういう事。」


 ギルドエリアについて少し説明を受けながら、ギルド総本部へ向かうシャル。コリンは移動中、暇にならない様さらに話し始めた。


「ちなみに今言った三つの団と、諜報ギルドと冒険者ギルドを兼ねた組織“影の心臓(シャドウハート)”、王家直属の冒険者ギルドの組織“竜の牙(ドラゴンファング)”が、ギルドエリアの中ではかなり大きい拠点を持っているわ。」

「王家直属もあるんですか?!」

「・・・ええ、この国の王女である“オリビア・ディル・ドラグニア”王女殿下が一応・・・あくまで一応よ?団長を務めているわ。」

「・・・王女殿下が。」


 “影の心臓(シャドウハート)”の事はどうでもよかったが、王家直属で、しかもこの国の王女様が一応とは言っていたが団長を務める組織があるとは思わなかった。


「この国の王族って、昔から冒険好きが多いみたいで、“竜の牙(ドラゴンファング)”もメンバーが変わりながら、団長は必ず王家の人間が務めているのよね。まぁ、オリビア王女殿下はその中でもきっと最高レベルの実力だけど。」

「なんだか凄い人なんですね。オリビア王女殿下って」

「・・・確かに実力はあるのよ?民にも優しいし皆から慕われているわ。ただ、余りにも冒険したがるから、いつもお付きの人達が苦労しているのよね。確か、交流のあるうちの団長の話しだと、流石に王女としての責務を放棄しすぎたから、国王陛下に怒られて、しばらく外出禁止で習い事をさせられているらしいわ。」

「・・・うわぁ。」


 オリビア王女殿下の今の話を聞いて、親に迷惑をかけているという点ではどこか通ずる所があるなと、城を抜け出した元王女(今も王女)として、なんとなく親近感が湧いたシャルだった。


「さて、着いたわよ。ここがギルド総本部、ちなみに向こうに見える青い大きな建物がうちの団の拠点ね。」

「どっちも大きいですね〜。」


 シャルは目の前の建物を見上げ、さらにコリンの指を差した方を見た。ギルド総本部は大きなビルの様な感じで、遠くからでもよく分かる外観だった。そしてコリンの指差した遠くの方向に見えた“青の薔薇(ブルーローズ)”の拠点の方は、全体的に青をベースにした洋館、というイメージに近い作りになっていた。


「さて、中に入ってからだけど、私は一度Cランクの試験の準備の為に一度別行動するわ。ついでにシャルちゃんが倒した王種二体と、魔物の軍勢を倒した報酬の準備もしとくから、戻るのが遅くなると思うわ。中に酒場があるからそこで待っててくれる?」

「分かりました。」

「あ、お金渡しておくから、それで好きなの頼んでね。」

「え?!わ、悪いですよコリンさん!それにお金ならまだ・・・」

「良いのよ、それくらい。逆にまだ報酬も渡せてないこっちが悪いわよ。お釣りもそのまま貰って良いからゆっくり休んでて。」

「うう、ありがとうございます。」


 コリンにお礼を言いつつ、シャルはギルド総本部に入っていった。



 ギ、ギィ〜


「じゃあ私はこっちだから、そのまま真っ直ぐ行くと酒場があるからシャルちゃんはそこで休んでて。」

「コリンさん色々ありがとうございます。」

「ふふ、良いのよ。じゃあ、後でね。」

「はい!」


 コリンと一度別れたシャルは、酒場の方に向かった。



 〜酒場〜



(うわぁ、広いなぁ。ビヤホールの何倍くらいあるんだろう。)


 コリンと別れたシャルは酒場に入ると、その広さに驚いた。前世で記憶にあるビヤホールの何倍も広さがある店内には、様々な格好をした冒険者達が食事をしたり、酒を飲んでいた。


(う〜ん、視線感じるわね。私以外にもフード付きローブを着てる人もいるけど、やっぱり目立つのかしら?)


 確かにシャルと同じ様にフード付きのローブを着ている人間はいるが、顔はよく見れば見えるので、シャルの様に誰の目線からも一切顔が見えない完全不審者スタイルではない。

 更に、洋服店“フランソワーズ”のお洒落な洋服を魅せる様に着ているので、体はお洒落、首から上は怪しさMAXの違和感が強いスタイルだという事は、シャル以外の人間は分かっていても、本人は全く分かっていなかった。


(・・・ん?後ろから近付いて来る気配が?)


 周囲に気を配っていると、後ろから誰か近づいてきた。


「・・・あの、すみません。」

「はい?」

「ふぇ?!き、綺麗な声・・・さ、さっき、コリン副団長と一緒にいましたよね?もしかして、噂の“隠者”のシャルさん?」

「はい、シャルです。」

「わぁ!やっぱり!私、どんな人か気になってたの。アズライト!ラピス姉さん!彼女が噂の“隠者”のシャルさんだって!」

「え?!ちょっと待って・・・」


 ヒソヒソ、ヒソヒソ、


『あれが噂の?!』

『おいおい、随分と小綺麗な格好した奴じゃねえか!』

『んだぁ?何か気品があるぞ?貴族か何かか?』

『大男じゃなかったのね〜。」

『あれが“隠者”の・・・」


(・・・う、さっきよりも目立ってしまったわ。)


 赤い髪のポニーテールの女の子が話しかけたかと思うと、同じ仲間なのか、かなり後ろの方を歩いていた二人に大声でで呼びかけた。それによって、ただでさえ目立っていたのに余計に目立ってしまった。


「ガーネット・・・目立つ行動は控えなさい。シャルさんが困っているでしょう?」

「見事に目立ってるな。」

「え?・・・あ、うわぁ・・・ごめんなさいシャルさん。」

「い、いえ、大丈夫です。」


 ガーネットと呼ばれた女の子は、深い青色の長い髪をしたラピスという大人びた女性に怒られ、周囲の状況を確認すると、酒場のほとんどの人間がこっちを見ている事に気付いて謝罪した。


 ドンッ!!


「あんた達!!人様をじろじろ見て悪いと思わないのかい!?酒と食事を楽しみな!!」


「「「は、はい!」」」

「「「お、おっす!」」」


 店の奥で、赤いショートヘアーの気の強そうな女性がヒソヒソ話をしている人間全員を大声で叱ると、叱られた全員がいつも通り酒と食事を取り始めた。


 スタスタスタ、


「ガーネット、ここは酒場だし大声を出すなと言わないが、目立つ事するんじゃないよ!」

「うう、ごめんなさいスカーレットさん。まさか、こんなに目立つとは」

「まったく・・・で?まさか“竜の尻尾(ドラゴンテイル)”に来てそのまま突っ立てる訳じゃないだろう?」

「はい!いつものお願いします!」

「よし来た!任せときな!・・・そこの嬢ちゃん?は、どうする?」


 スカーレットと呼ばれた女性が急にこっちに話しを振ってきたので困ったシャルだが、赤いポニーテールのガーネットという女の子が、


「・・・あの、もし良かったら一緒の席に座りませんか?お話ししてみたくて。」


 と、控えめな態度で言ってきたので、


「はい、良いですよ。」


(コリン副団長ってさっき言ってたから、もしかしたら、青の薔薇(ブルーローズ)の団員なのかも。)


 青の薔薇(ブルーローズ)について色々聞けるかも、とすぐに返事をした。


「ありがとうございます!」

「綺麗な声の嬢ちゃんは初めてのようだね。」

「シャ、シャルと申します。宜しくお願いします。」

「ようこそ大酒場“竜の尻尾(ドラゴンテイル)”へ!あたいは大酒場のマスターの一人、“スカーレット”さ!宜しくね!後で誰かにメニュー持って来させるから、好きなの頼みな!料金はしっかりと払ってもらうけどね!」

「はい、分かりました!」

「ガーネットがごめんなさいね。とりあえず席に行きましょうか?お互いの自己紹介はそれからで」

「よし、行くか。」


 大剣を持った茶髪の大男が一言い、シャル達は席に向かっていった。



「それじゃあ自己紹介しましょうか、ガーネットがいきなり話しかけてごめんなさいね。まず、私達は青の薔薇(ブルーローズ)の団員なの。」

「あ、やっぱりそうだったんですね。コリンさんの事副団長って言っていたので、もしかしたらと思ってましたが。」

「そうなのよ、その中で私達はパーティーを組んでるの。“ジュエルナイト”って言うのよ、私は“ラピス”、魔法使いなの宜しくね。」

「俺はリーダーをやっている“アズライト”だ。大剣で戦う前衛だ、宜しくな。」

「さっきはごめんなさい。私は“ガーネット”、アーチャーよ、宜しくね。」

「シャ、シャルです。一応魔法剣士です。宜しくお願いします。」


 お互いに自己紹介を済ませると、向こうから店員の女の子がやって来た。


「ジュエルナイトの皆さん、そして新団員さん?いらっしゃいませ!メニュー持って来ました!」

「ありがとう“ミント”・・・はい、シャルさん。何を頼むのかしら?」

「ありがとうございます。じゃあ、お水とこのお肉と野菜の盛り合わせでお願いします。」

「?!綺麗な声ですね・・・はっ!か、かしこまりました!」


 ミントと呼ばれた女性は、シャルの声を聞いて惚けた後、すぐに正気を取り戻し、厨房の方へ歩き出した。


「さて、まずは何から話そうかしら?まずシャルちゃんって呼んで良いかしら?」

「はい。」


 ラピスが話し始めた時にガーネットが、


「あ!シャルさんって歳はいくつですか?」

「15歳ですよ。」

「私と一緒か!シャルって呼んで良い?私もガーネットって呼んで大丈夫だから。」

「う、うん。」

「ガーネット。」

「・・・う、ごめんなさい。同世代の冒険者に逢えたから嬉しくて。」

「はぁ・・・もう少し落ち着きなさい。」


 グイグイきて怒られたガーネットに戸惑いながらも、同世代の冒険者に逢えた事がシャルも嬉しく思えた。


「ところでシャルちゃん。どうしてコリン副団長と一緒にギルド総本部へ?」

「Cランクの昇格試験を受けにここに来たんです。」

「なるほど、向こうじゃCランクの昇格試験行ってないものね。てっきり直接青の薔薇(ブルーローズ)の拠点に来ると思っていたから、不思議に思ったのよね。」

「そういえば、シャルCランクだったんだ。Cランクになったら私と一緒よ。」

「あ、そうなんですか?」

「・・・むぅ、敬語。」

「・・・そ、そうなんだ。ガーネット」

「うん!」


「「・・・まったく。」」


 ラピスは気になっていた事をシャルに聞き納得した。ガーネットはシャルと仲良くなりたいのか、凄くフレンドリーに接してくる。ただ、悪い気はしないのでこの接し方に慣れようと思った。


「それにしても、顔がまったく見えないね?山奥で暮らしていたって情報だけど・・・まさか訳あり・・・」

「ガーネット、詮索しない。そろそろ本気で怒るわよ。」

「うう、ごめんなさい。あまりにも情報とイメージ違うし、物凄く謎が多そうだから気になっちゃって・・・」

「あ、いいのよガーネット。素性と顔は今の所誰にも明かすつもりはないけど、答えられる範囲なら隠さず話すから。」

「・・・ありがと、シャル。でも聞くのはまた今度にしとくよ・・・ラピス姉さんが怖いし。」


 ガーネットは、シャルの謎多き部分が気になって問いかけたが、ラピスに睨まれさすがに本気で怒られるのは避けたいのか、ラピスに怯えながらシャルにお礼を言った。


「あ、そうだ。皆さんに質問したい事があって。」

「あら、何かしら?」

「俺らで答えられる範囲なら。」

「何でも聞いてシャル。」

「えっと、ギルド総本部ってどういう所なんですか?」

「「「え?」」」


 まさかそんな質問が来るとは思わなかったのか、三人が固まった。


 カチャカチャ、


「はい!ジュエルナイトの皆さんと新人団員さん?いつもの料理と飲み物、そして新人団員さんの頼んだ料理とお水です!」


 そして丁度三人が固まったタイミングで、店員のミントが料理をワゴンに乗っけて持ってきた。


「お!ありがとうミント。助かった。」

「え?何が助かったんですかアズライトさん?」

「いや、驚いて俺ら三人固まってたから。」

「?・・・はぁ?」


 料理と飲み物の登場で戻ってきたアズライトは、とりあえずミントにお礼を言った。ミントは首を傾げながら店の奥に戻って行った。


「まさかギルド総本部について聞かれるとは思わなかった。有名だし、知らないやつはいないと思っていたが・・・」

「えっと、山奥でずっと暮らしていたので、世間知らずで・・・」

「「「せ、世間知らずね。」」」


 ブルーマリン自体有名で、そのブルーマリンのギルド総本部といえば、知らない人はいないと言われている所であり、他国にもその情報は出回っているはずだった。そして山奥でずっと暮らしていたので世間知らずという言葉を聞き、生暖かい目でシャルを見る三人。


「う、とにかくですね。ギルド総本部だったり、いくつもあるギルドの詳細だったりとか、よく知らないんです。」


 そんな生暖かい視線を感じ、若干気まずさを覚えるがそのまま話しを進めた。


「・・・どんだけ、箱入りのお嬢様なんだ?・・・てっ、ギルド総本部についてだったな。まぁ、飯食いながら説明するぞ?」

「はい!ありがとうございます!」

「ギルド総本部は、いくつもあるギルドの総合窓口と統括を担っているんだ。依頼の受理だったり、昇格試験だったり、細かい手続きや重要な用件は全部ここで処理する。」

「はい。」

「そして、適した依頼を所属している組織に流す。この総本部で依頼の管理しているから、野良の冒険者もここで色んな依頼は受けられる。ギルド総本部は基本的に冒険者や、組織の管理をまとめてやっていると思って問題ない。」

「なるほど。」

「ちなみに珍しい事に、四人の団長がギルド総本部を統括しているんだ。」

「四人の団長ですか?」

「そう、それはな・・・」

「アズライト、私が説明しても良い?」

「お、ガーネットの方がその辺り詳しいか・・・頼む。」


 アズライトがある程度話した所で、ガーネットが四人の団長について説明するようだ。


「じゃあシャル、まずその四人はこう呼ばれているの・・・“薔薇の集い”と。」

「ば、“薔薇の集い”?」


 いきなり、フローラルな名前が出て思わず聞き返す。


「そう、“薔薇の集い”よ。メンバーは、


 ──【緋色(ひいろ)(きみ)

 “竜騎姫(りゅうきひ)”オリビア・ディル・ドラグニア王女殿下、


 ──【青色(あおいろ)の君】

 うちの団長、“氷帝(ひょうてい)”リナリー・ルー・ブルーローズ、


 ──【白色(はくしき)の君】

 “賢者(けんじゃ)”フランソワ・ポワ・マスクウェル、


 ──【黄色(こいろ)の君】

 “聖女(せいじょ)”ホルン・リー・スター、


 ・・・この四人の実力者が、ドラグニア王国のギルドを統括しているのよ。」

「な、なるほど。」


(あれ?なんだろう・・・薔薇の色にちなんだ呼び方、響きは良いけど本人達はその呼び名気に入っているのかな?)


 賢者などの異名は良いとして、なにやら“隠者”に通ずる呼ばれたくない感じがひしひしと感じる呼び名を聞いた気がする。


「でも、オリビア王女殿下は王女様だから、本人の意思に関係なく冒険者活動は制限されてるし、フランソワさんは多忙であまり関われないから、実質今冒険者はリナリー団長が、組織全般の統括はホルンさんが受け持っているの。」

「そうなんだ。」

「時々四人で集まるらしいわ、“薔薇の集い”って言われているのは、その四人が集まる会議の事を皆がそう名前を付けて言っていて、それがギルドを統括している四人の総称になったのよね。」

「・・・なるほど。」


(・・・やっぱり四人の意思とは関係なくそういう名前が付けられているんだ。というか、フランソワさんどれだけ働いているの?)


 シャルは、やはり周りの人達の影響でそんな名前をと同情しながら、フランソワさんの仕事量が心配になった。


「ちなみにギルド総本部は元々窓口だけだったんだけど、組織がたくさん出来て利用者が減ったの。それで、無駄に広いし総本部として面白くないからって、国王陛下が結婚するから王国騎士を辞めるって言っていた“スカーレット”さんと、同じ王国騎士で酒場の経営が夢だった夫の“バッカス”さんに声を掛けて大きな酒場を作ったの。それがこの“竜の尻尾(ドラゴンテイル)”なの。」

「国王陛下は、随分と行動的なのね。」

「そうなの。」


 ギルド総本部に大きな酒場があるのは気になっていたが、まさか国王様が関わっていて、さらにその国王陛下に仕えていた元王国騎士が経営しているとは思わなかった。


「あとは、大きな訓練所があるのよ。実技試験をそこでしたり、戦闘の訓練をしたり、色んな用途に使っているの。ギルド総本部については、その辺りを知っていれば何も問題ないと思うわ。」

「ありがとうガーネット、ありがとうございますアズライトさん。ギルド総本部についてよく分かりました。」

「おう、なら良かった。」

「・・へへ、面と向かってお礼言われると照れるなぁ・・・顔は・・・見えないけど。」

「妹は情報集めるの得意だし、どんどん頼ってね。同世代の冒険者はいることにはいるんだけど、青の薔薇(ブルーローズ)ってベテランが多いから、妹やシャルちゃんより年上が多いのよ。だから、仲良くしてあげてね。」

「はい!分かりました!」


 ジュエルナイトの三人と仲良くなったシャルは、皆で食事を楽しんだ。


(((・・・え?何でフードは被ったままマスク取って食事しているのに、顔が全く見えないの?肉と野菜を食べてるだけなのに、なんでそんな動作が綺麗で気品溢れてるの?)))


 その時、ジュエルナイトの三人の心は一つになった。



 ~とある別室~



「それで?噂の“隠者”のシャルはどうだったの?危険な人物だった?ここ最近の魔物の凶暴化に関係ありそう?」

「・・・関係はなさそうですね。性格も全く問題ないですし動きに気品があるので、どこかの貴族のご令嬢で間違いないですね。」 

「う~ん、そっか。」


 ここはギルド総本部のとある別室、コリンが目の前の人物に報告をしていた。


「・・・ただ。」

「ただ?」

「謎が多すぎるんですよね。身に付けているフードとマスク付きローブは何か特別な魔導具の様ですし、顔はフードを被ってマスクしているだけでなく、何かの隠蔽魔法を使っているのか全く見えないんです。


 山奥でずっと暮らしていたっていうのは絶対に嘘ですけど、世間知らずっていうのは本当の様ですね。このドラグニア王国では常識な事すら知らなかったですし、相当な箱入りのお嬢様もしくは他国の貴族なのかもしれません。


 しかも実際に戦っている姿を見た訳じゃないですけど、剣の腕を見る機会があって、木を剣で削って物凄く精巧な作りの武器を作り出せるくらい、剣の腕は長けているようです。


 あとスタイルが良くて、声がもの凄く綺麗で話していて安心するので、絶対に服とか一緒に買いに行ったり、甘い物食べに行ったら楽しいです。」

「・・・後半私情が混ざっていたけど、とにかく謎だらけだけど警戒する必要は無いってことね。」

「はい。」


 コリンは目の前の人物に報告をしながら、シャルちゃんと一緒に今度女子会をしようと考えていた。


「じゃあ、とりあえず会ってみましょうか。報告聞く限りだと実力も人柄も問題無い様だし、ホイットが・・・というより、クレメンスの街の人達もベタ褒めしてたらしいし、Cランクは試験無しで昇格、その代わりに青の薔薇(ブルーローズ)の入団試験を受けてもらいましょうか。」

「入団試験をですか?」

「そう。」


 コリンの報告を受けていた人物は、愛剣を手に持ち立ち上がった・・・


「“氷帝”と呼ばれるあたしが試験官の特別試験。王種二体と魔物の軍勢を無傷、しかも一人で倒した彼女の実力を一対一で確かめるわ。」


 “氷帝”リナリー・ルー・ブルーローズ。透き通る様な青く長い髪を編み込んだ小柄なエルフの彼女が、


「・・・お手柔らかにお願いしますよ・・・リナリー団長。」

「ええ、任せなさい。」

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