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隠者のプリンセス  作者: ツバメ
青の薔薇と氷帝
13/111

青の薔薇と氷帝 3

「次のお店はどんなお店何ですか?」

「魔導具店“マスクウェル”よ。」

「・・・魔導具店?」

「ええ、便利な魔導具がいっぱい揃ってるの。しかもお店の魔導具は、“賢者”フランソワ・ポア・マスクウェルが団長を務めている魔導ギルドと冒険者ギルドを兼ねた組織“白き賢人(ホワイトワイズマン)”の副団長が店長をしていて、団から入荷してくる魔導具を売っているから性能も抜群よ。」

「え?!フランソワさん団長も務めているんですか?!」


 まさかフランソワの名前が出てくるとは思わず、シャルはかなり驚いた。大陸一の洋服店、Sランク冒険者、魔導ギルドと冒険者ギルドを兼ねた組織“白き賢人(ホワイトワイズマン)”の団長。あのローブを隙あらば調べようとする探究心がありすぎる人が、ここまで色々やっているとは思わなかった。


「あれ?フランソワさんに会った事があるの?」

「はい、クレメンスの街で」

「ああ、うちの団のフランソワさん好き過ぎる女性メンバーが情報聞くなり飛び出して行った時か」

「そんな事が・・・あ、冒険者がその日に多かったのも・・・」

「多分その影響ね、パーティメンバーの男連中が連れまわされて疲れ果て、冒険者ギルドで暇をつぶすことになるのが恒例よ。」

「・・・うわぁ。」


 フランソワさんの影響力もさる事ながら、付き合わされた男性冒険者が不憫でしょうがなかった。


「ま、いつもの事よ。それより見えて来たわよ、あれが魔導具店“マスクウェル”よ。」

「おぉ〜、装飾が凄いですね。」


 目の前に見えて来たお店は煌びやかな装飾が施され、入口近くの壁には最新の魔導具の情報などが載った看板が出ているなど、もう少し隠れ家的な雰囲気を想像していたシャルは、高級感のある店構えに驚いた。


 リリン、リリン、


「こんにちは、トワはいる?」

「あれ?コリン?いらっしゃい。」

「ああ丁度良かったトワ、噂の“隠者”のシャルちゃん連れてきたわ。」

「シャルです。宜しくお願いします。」

「?!なんと!?綺麗な声ね~!噂には聞いていたけど、こんな可愛らしい声の女性なんて想像してなかったわ。ウチは“トワ・アン・グロイス”、魔導ギルドと冒険者ギルドを兼ねた組織“白き賢人(ホワイトワイズマン)”の副団長で、フランソワ団長名義で経営している魔導具店“マスクウェル”の店長やってるの。コリンと同じハーフエルフなのよ、宜しくねシャルちゃん。」

「宜しくお願いします、トワさん。」


 シャル達が店内に入ると、金髪の明るく気さくなトワというハーフエルフの魔導具店の店長が迎えてくれた。


「まさかトワが入ってすぐにいるとは思わなかったわ。」

「ふふ、驚いたでしょ?」

「全然。」

「酷?!ま、まぁいつもはノールとか私以外の誰かがいるんだけど、今新人の二人が入って研修している所なのよ。」

「ああ、それで」

「そっ、せっかくだから顔見せてって。」

「分かったわ、行きましょシャルちゃん。」

「はい!」


 ノールという女性と新人の二人に会うべく、シャル達は店の奥に向かった。



 ~店の奥~



「はい、それじゃあ接客のおさらいね~」

「「いらっしゃいませ!またのお越しをお待ちしておりますなの〜!」」

「あ、うん、繋げちゃ駄目よそれ、帰れって言っているようなものだからね。」

「「はい、ノール先輩!!」」

「・・・魔導具の知識は完璧なのにね。」


「どう?ノール。」

「あ、トワ店長。今接客のおさらいを・・・て、コリンさん?!いらっしゃませ!・・・そちらの顔の見えない黒いローブを着た方は?」

「噂の“隠者”のシャルちゃんよ。」

「シャルです。宜しくお願いします。」

「?!こ、こんなに綺麗な声の女性があの“隠者”のシャルなんですか?!ど、どうもシャルさん。魔導具店“マスクウェル”の副店長“ノール”です。」

「宜しくお願いします。」

「おぉ〜!凄い人なのよ〜。」

「凄い人なの〜!」


 店の奥にいたのは青いショートカットのヒューマン、ノールと、双子なのか、顔立ちの似ている銀髪と金髪と狐っぽい耳と尻尾の付いた獣人の可愛いらしい女の子二人がいた。


「ほら、二人とも驚いていないで挨拶!」

「スーなのよ〜。」

「クーなの〜。」


 銀髪がスー、金髪がクーというらしい、


「宜しくねスーちゃん、クーちゃん。」

「「はい、なの〜!綺麗な声のシャルさん!」」


 挨拶を終えると、トワがシャルを興味深そうに見始めた。


「にしても、さっきも言ったけど、“隠者”のシャルがこんな綺麗な声で、素顔が全く見えなくて見た目が怪しいけど、中に着ている服はお洒落な子だったなんて予想外ね。」

「本当ですね。男性でもっと大男かと思いました。」

「気品が溢れてるのよ〜。」

「可愛いくて綺麗な声なの〜。」


 トワが何やら、じっくり観察を始め、ノール、スー、クーの三人も噂のシャルの見た目と雰囲気や声に驚いた様子で観察を始めた。


「え、えっと皆さん?そんなに見つめないでください。」

「はいはい、研究熱心なのはいいけど、そろそろ話しを進めててもいいかしら?」


 急に観察を始めた四人に対し、コリンは呆れたように声を掛けた。


「それもそうね、で、ウチの店に何しに来たの?」

「あ、ごめんトワ、顔見せに来ただけなの。」

「ちょっとは悪そうな素振り見せなさいよ!完全に笑ってるじゃない!」


 四人の様子をみて言葉を掛けたコリンだったが、よく考えたらシャルを紹介する以外に用は無かったなと、笑いながらトワに謝った。


「あ、良かったら魔導具を見せてもらえませんか?どんな魔導具があるか興味があって」

「良い子ねシャルちゃん!もちろんよ!店長のウチに任せといて!そこの多方面から“女王様”って呼ばれてる自覚無しのSハーフエルフなんかほっといていきましょ!」

「待ちなさい?!そんなの初耳よ?!」

「あ、トワ店長・・・それみんな言わないようにしてたのに・・・」


 ガシッ!


「ノールちゃん?詳しく聞かせてくれるわよね?」

「あ!?トワ店長!?ちょっと変わって・・・」

「さぁ、シャルちゃん!向こうに行こっか!魔導具の事教えてあげる!」

「お手伝いするの〜。」

「とっても大事なお仕事なの〜。」

「あ?!スーとクーまで!裏切り者〜!」


 なんだかとっても怖いコリンさんに捕まったノールを犠牲にして、シャル達は魔導具のある店内に移動した。


「ああいう風に威圧するのが原因の一つだって、どうして気づかないのかしら?」

「コリンさんって本当に“女王様”って呼ばれているんですか?」

「一部からね。他にも原因があるんだけどね〜。ちなみに普通の異名もあって“烈風” のコリンって呼ばれているの。」

「へぇ、“烈風”ですか?」

「そうよ〜。」


 魔導具のある所に向かいながら、コリンが呼ばれている“烈風”という異名を羨ましく思いながらも、“女王様”という呼ばれ方もしている事を若干不憫に思った。


「さて、着いたわよ。」

「着いたのよ〜。」

「着いたの〜。」

「入ってきた時も少し見ましたけど、凄い数ですね。」


 入口近くの魔導具がある所にやってきたシャルは、先程チラッと魔導具を見ていたが、その数の多さに驚いた。


「まぁ、主にフワンソワ団長が設計した魔導具や過去に流通していた魔導具の再現、後は伝説級の魔導具を解析して一部の機能の劣化版を作ったりなんかしているわ。ちなみに作ってるのは白き賢人(ホワイトワイズマン)のメンバーなのよ。団長は売る用の魔導具はあんまり作らないし、直に作った物は即完売するからね。」

「フランソワさんですもんね。」


 ここでもフランソワ人気は健在なのだなっと、改めてフランソワの凄さを知ったシャル。


「それで?どんな魔導具が見たいの?」

「そうですね・・・」


 今のシャルの持っている魔導具は、今見せたら確実に面倒な事になる白薔薇のエンブレム(使用者登録付きで様々なアクセサリーに変化可能、容量は魔力量に依存する収納魔法付き)と、フランソワほどのクラスでなければただの黒いフード付きローブにしか見えない、伝説級かもしれないローブ(多機能)の二点だった。


「う〜ん、旅用に使える物ってありますか?」

「あるわよ。旅セットが。」

「旅セット?」

「そっ、用途に合わせて必要な物をまとめたセットを用意して売ってるのよ。物が被ったり、単純にいらないとか、高くて手が出ない場合は、その商品を抜いたり、別の商品を加えて価格を変えて売っているの。」

「へぇ〜、良い仕組みですね。」


 まとめて買うにしても探すのが面倒だし、セットであったとしても不必要な物が混ざったりと、セット物の考えを少し変えた販売の仕方に感心した。


「まぁ、その辺の商売の仕方は“スター商会”からの受け売りなんだけどね。」

「へ、へぇ〜“スター商会”からの。」


(今度誰かに“スター商会”について聞こう。)


 また“スター商会”の名前を聞いて、きっと有名な商会なんだろうけど全く詳細を知らないシャルは、今度誰かに聞こうと心に決めた。


「はい、旅セットなのよ〜。」

「なの〜。」

「ありがとスー、クー。シャルちゃん、これが旅セットよ。商品は収納バック、簡易テント、持ち運びの出来る魔導コンロ、常に綺麗な水の出る魔導具等々、旅で使える便利な物が揃っているわ。」

「わぁ、凄いですね!」

「便利なのよ〜。」

「そうなの〜。」


 旅セットを用意してくれたスーとクーにお礼を言ったトワは、シャルに商品を紹介した。なかなか重宝しそうな物が揃っていて驚いた。


「ではまずは、収納バックね。容量はそこまで無いけど、収納魔法が込められていて、旅セットなら簡単に収納出来るの。劣化を多少遅らせる機能も付いているから食料や魔物素材もある程度品質が持つわ。」


「次は簡易テントなのよ〜。一見ただの四角い箱にしか見えないけど、魔力を込めると二人分の人が入れる大きいテントに早変わり、強度もあって多少の魔物の攻撃なら壊れないのよ〜。」


「そして魔導コンロと綺麗な水の出る魔導具なの〜。火の調節がしやすい魔導コンロと、ブルーマリンにある触れられない伝説級の魔導具“水の宝玉(アクアオーブ)”の綺麗な水を出す機能を頑張って解析して、聖水レベルの物は作れなかったけど、綺麗な上質な水を出す事には成功した水の出る魔導具なの〜。」

「な、なるほど。」


 トワだけでなく、さっきからそんなに喋っていなかったスーとクーまで饒舌に魔導具の説明をしだしたので、改めて魔導具店に来たのだなーと自覚したシャルだった。


「あ、そういえば一つ聞きたかった事があるんですけど。」

「ん?何々?」

「伝説級の魔導具って、どういう物なんですか?」

「お!良い質問だね!ウチが説明してあげよう!」


 そういえば、魔導具についてあまりよく知らなかったので、この機会に聞いておこうと思ったシャルは、一番気になっていた魔導具について質問した。


「まず魔導具は、魔石や魔方陣に魔法そのものを組み込んだり、と種類があるの。今売っている普通の魔導具はそういう技術を使って、一般向けに販売している物なのよ。」

「使うと便利だなぁくらいなのよ〜。」

「そうなの〜。」


「次に国宝と呼ばれている魔導具ね、フランソワ団長が本格的に作った物が主にそう呼ばれているの。本人は満足してないみたいだけどね。有名なのだと白薔薇のエンブレムね。

 使用者登録と、魔力量に依存して収納量が増える収納魔法が付いていて、最高クラスの劣化防止も付いているの。しかも、装備者の好みに合わせて変化させる事の出来るアクセサリーで、素材も一級品。世界で四人しか持っていない希少な魔導具なの。」

「へ、へぇ〜、そうなんですか。」

「これは凄く便利かつ、国で管理しなきゃダメなレベルで希少価値が高いって事なのよ〜。」

「そうなの〜。」


 いずれバレるだろうが、ここに新たな五人目の所持者がいるとなれば、きっととてつもない質問攻めに遭うのだろうなっと、左手の中指にある指輪形態のそれを右手で触った。


「そしてそして!最後が伝説級の魔導具!誰かが作ったという事だけは、フランソワ団長の解析で判明しているの。フランソワ団長クラスじゃなきゃ、解析すら出来ないかもって言う本人からの主張で、世界各所に点在している伝説級の魔導具は、多分全て“白き賢人(ホワイトワイズマン)”の元に情報が集まっているわ!

 性能は全て規格外!必ずと言っていいほどおかしなレベルの自動修復機能と何かしら規格外の機能が付いているの!」

「な、なるほど。」

「世界に一点ずつしか確認されてない誰も害する事の出来ない世界の宝なのよ〜。」

「そうなの〜。」


 シャルは、トワの勢いに押されながら頷いた。


「ちなみにブルーマリンにある伝説級の魔導具“水の宝玉(アクアオーブ)”の機能は、規格外の自動修復機能に、使用者以外触れられない結界付き、聖域が作れてしまうくらい品質の高い美味しい聖水を常に生み出し、大都市の範囲全ての空気を清浄化する機能が常時発動しているわ。」

「なので高位の魔物でも気軽に寄り付けないのよ〜。」

「そうなの〜。」

「本当に規格外なんですね。」


 伝説級の魔導具の一つ“水の宝玉(アクアオーブ)”の詳しい機能を知り、自分の着ているローブも修行中凄まじい勢いで技を使って破損しても、一瞬で修復した事を思い出し、その分類にちょっと入ってるかもしれないと、不安になってきた。


「あと、フランソワ団長も詳しい機能は分からないみたいだけど、聖水は一定の範囲と量を超えると消滅するから、大都市の中でしか使えないの。」

「水が溢れて大変!って事にはならないのよ〜。」

「何故か勝手に最適な水量に調整してくれる不思議機能付きなの〜。」

「そうなんですか?」


 フランソワさんでさえ分からない機能があるなんて、やはり伝説と言われる事なだけあるんだなと感心した。


「ありがとうございます。お陰で魔導具についてよく分かりました。」

「そう?なら良かったわ。」

「良かったのよ〜。」

「良かったの〜。」


(フランソワさんが過剰に反応したこのローブの事は、絶対に黙っておこう。)


 “賢者”フランソワがずっと観察していたこのローブは、おそらくバレたら白薔薇のエンブレムよりも酷い質問攻めに遭いそうな品だという事が何となく分かったシャルは、絶対に黙っておこうと思った。


「さぁさぁ!次はどんな魔導具を・・・」


 ドタドタドタッ!


「トワ店長〜!助けてください!」

「待ちなさい!ノールちゃん!私の何処が“女王様”なの?!説明して!」

「だからそれはトワ店長に聞いてください〜!」

「あ、ノールさんとコリンさん。」


 おそらくずっと説明するのを嫌がっていたのだろう、涙目になりながらノールがシャル達の元へ走って来た。


「あ!ノールごめん!忘れかけてた!」

「酷いです!こうなったらこのままコリンさんを・・・」

「あ!危ないなのよ〜!!」

「そこには“魔法インク”が大量になの〜!!」


 ガンッ!


「・・・へ?」

「大変!」


 ダッ!


 魔法インクという言葉を聞く前に何かの魔導具にぶつかったノール。シャルは慌ててノールを押し飛ばすが、


 バッシャー!!


「「「「「ああ〜!!?」」」」」


 ノールの代わりにシャルのローブに大量の“魔法インク”がかかってしまった。


「ご、ごめんなさい〜!!」

「た、大変なのよ〜!朝トワ店長が用意してた魔法インクがいっぱいローブにかかったのよ〜!」

「大量に注文受けたから、すぐに渡せる所に置いてたのが仇になったわ!どうしよう!?魔法インク落とし、まだ全部用意出来てないの!」

「今ある分だけでも用意するの〜!!」

「て、手伝うわ!元はといえば私が悪いから!!」


 魔法インクはシャルのローブに大量にかかり、色が様々な色を用意していたのか、黒一色だったローブがカラフルな色になった。

 どうやら魔法インクは、専用の落とす液体が無いと落ちないらしい。


(あ、これはマズイわ。)


 シャルは、慌てている五人の様子を見ながら、内心凄く焦っていた・・・何故なら、


 ツルンッ、


「「「「「へ?」」」」」


 シャルの着ているローブは、どんな汚れでも(・・・・・・・)一瞬で汚れが落ちるからだ。


「・・・え?魔法インクかかったわよね?専用の液体使わないと落ちないのに、汚れてなんかいなかったみたいになってるけどかかったわよね?」

「ちゃんとこの目で見たのよ〜?かかったのよ〜?」

「なの〜?」

「は、はい、間違いなく色んな色がローブに付きました。」

「・・・どういう事?」


 床に落ちたインクと、ローブを交互に見ながら五人は首を傾げた。


(・・・やっぱり、このローブ便利なんだけど、性能があきらかにおかしかったのよね。)


 一年間の修行の間、幾多の魔物の返り血を浴び、土もかかったローブだったが、汚れそのものを拒否(・・)するかのように、ローブには汚れも、臭いすらも付かなかった。その時は便利なローブだとしか思わなかったが、フランソワからローブの異常性を指摘され、普通は落ちないと言われているらしい魔法インクすらも染まることを拒否し、重力に従って床にインクが落ちた。床は染まったがローブは染まらなかった。シャルの持つこのローブがいかにイレギュラーな物かを物語っていた。


「・・・この魔法インクで、染まる事すらなかったローブの素材なんて今まで見た事がないわ・・・新発見?でもそれなら団に情報が入っている筈」

「・・・汚れそのものを受け付けなかった?魔法で防いだ?だとしても今の落ち方は変だった」

「魔法の発動も見えなかったのよ?でも、素材の特異性だけであの落ち方は変なのよ〜?」

「何か特別な機能が備わっているの?でもただのローブにしか見えないの〜?」

「え、えっと〜・・・皆さん?」


 まずい、非常にまずいと、シャルが先程想定した未来が現実になろうとしていた。そしてコリンが、


「・・・もしかしたら、凄い魔導具なのかも。」

「「「「それだ !!」」」」


 単純かつ明解な答えに辿り着くと、魔導店のメンバー四人が一斉にシャルに飛び付いた。


「あ、あの皆さん?!靴にインクが付きますよ?!」

「大丈夫よ!もうインクは床に染み付いたから!それよりもシャルちゃん!そのローブをよく見せてくれないかしら!?すっご〜く気になるのよね〜!?」


「やっぱりただのローブにしか見えない・・・まさか!高度な認識阻害(にんしきそがい)が?!だとすれば、フランソワ団長お手製のレンズを使えば、魔導具かどうか分かるかも!いえむしろきっと凄い魔導具に違いないわ!!」


「確か、自動修復には汚れを落とす機能もあるってフランソワ団長が言っていたのよ!?スー達でもじっくり調べれば、何か分かるかもしれないのよ〜!!」


「自動修復!絶対にそれなの!もしかしたら、伝説級に近い性能があるかもしれないの〜!!」


「・・・う、うわぁ。」


 カラフルに染まった床をさほど気にせずシャルに迫る四人。クレメンスの街の時はSランクとはいえ、一人の人間の猛攻を防げば済む話だったが、四人一斉にローブに触ろうとしてくるので、シャルは何とか持てる技を全て使い、ローブを魔の手から守ろうと必死になった。そしてコリンはその光景を見ながら、群がる四人のテンションの上がり具合に引いていた。



 〜一時間後〜



「・・・はぁ、はぁ・・・いいですか?今言ったように、フランソワさんがこのローブをよく見ていたので詳しいはずです。私は絶対にローブを渡しませんから、フランソワさんに聞いてください!」

「・・・はぁ、はぁ・・・う!分かったわ。」

「・・・はぁ、はぁ・・・分かりました。今回はそれで手を引きましょう。」

「・・・うぅ〜・・・鉄壁なのよ〜。」

「・・・ふぅぅ〜・・・四人がかりで全くローブに触れられないの〜。」


「・・・私は一体、何を見せられていたのかしら?というかシャルちゃん、あれだけ動いて一切顔が見えないのは何故なの?」


 一時間、シャルは四人に怪我をさせないように避け、最後の辺りは疲弊した所を見計らって、フランソワを引き合いにして、何とかローブに触るのは諦めてもらおうと、必死なって説得(威圧込み)をし、今に至った。

 コリンはその間見ている事しか出来ず、激しく避けるシャルを見て顔が見えるかもっと、観察していたが、鉄壁の守りによって一切顔が見える事はなかった。


「くっ!通信の魔導具さえ壊れていなければ、すぐにでもフランソワ団長に繋いだのに!」

「大丈夫ですよトワ店長。フランソワ団長が魔導具に関して手を抜くわけないじゃないですか。フランソワ団長と会話出来たらすぐにでも、作戦会議しましょう!」

「この謎は必ず究明するのよ〜!」

「おぉ〜なの〜!」


「・・・どうして諦めてくれないんだろう?」

「まぁ、魔導具の事になると人が変わったように没頭するからね、トワとノールちゃん・・・新人の子達も、中々な逸材ね。」


 これからフランソワだけでなく、魔導店の四人にまでローブを狙われるかと思うと、気が滅入るシャルだった。


「じゃあ、通信の魔導具が直ったら、フランソワ団長にシャルちゃんの事、しっかりと伝えておくからね〜!」

「またいつでも寄ってください!」

「またなのよ〜!」

「またなの〜!」


「・・・出来れば、あまり行きたくないですね。」

「え、えっと、私からもよく言ってあげるから、普通に会いに行ってあげて?」


 以外と武具と鍛治の店“ペネドゥ”と、魔導店“マスクウェル”で時間を使ったシャルとコリンは、魔導具店の四人に別れを告げ、Cランクの試験を受けるべく、ギルドエリアにあるギルド総本部に向かうのだった。

登場人物がいっぱいですね。

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