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4.試しの試し

 ◆◇◆◇◆◇◆◇



「お願いします!どうか、この二人を俺に預けてください!」



 ギルは、リズとアルを連れて商家の主人であるフェデラーを説得していた。

 フェデラーは先程から同じ返答を繰り返しているのだが、それに対してギルも同じお願いをし続けていた。



「だから、先程から何度も言っているだろうに。アルは預けてやる。だが、リズは儂の大事な娘だ。そんな危険に晒す訳にはいかんて」



 それでもギルは引かない。かれこれ数時間、土下座をして頭を下げ続けている。



「お父様、私、最悪は家出するつもりですからね」

「リズ、それは駄目だ。許しがでずに家出をしても俺は受け入れない」

「リズ、この男もこう言っておろうが。何とか諦めてくれるかの。今まで通り、好きなことはやらせてやるから」



 リズは泣きそうな気持ちを何とか隠してフェデラーにお願いするが、聞き届けてもらえない。ギルも何とか説得を試みるが、このままでは埒があかないのは明白であった。



「フェデラー殿、条件付きでどうでしょうか。あと五年、いや三年以内に【試しの塔】を踏破させてみます。三年以内に達成出来なければ、リズには諦めて貰います。それまでは、この俺の命に懸けてリズを、娘さんを守ってみせます!」

「三年か……」



 ここでフェデラーの心が揺り動く。【試しの塔】と言えば、狩人(ハンター)探索者(シーカー)になるための登竜門である。これをクリア出来なければ、それらにはなれない。普通、15歳まで専門のトレーニングを受け、16歳から18歳くらいで【試しの塔】を踏破するものである。それらの知識はフェデラーも持ち合わせている。それを、目の前の男は、今から三年以内、リズが13歳で踏破して見せると豪語するのだ。



「では、儂からも条件を付けよう。もし、三年以内に【試しの塔】を踏破させられなかったら、お主は一生、うちの専属護衛契約を結ぶというのはどうだ?」



 ギルバートは、それなりに名の売れた狩人(ハンター)である。フェデラーの耳にも入るような一流といってよい狩人(ハンター)である。そのギルバートに対して、一生、専属の護衛となる覚悟があるのか?と聞いているのだ。



「問題ないですよ。俺の一生を懸けてもいい。それでは、リズを、娘さんを三年間、預からせてもらいます!」

「お、おお、そうか。そこまでの覚悟があるのなら致し方あるまい。では、三年、頼むぞ」

「やったー!」



 頑固な父親の許しが出て飛び跳ねるリズ。



「リズよ。この男の一生が懸かっておるでな。それなりの覚悟をもって精進せよ」

「ありがとう、お父様!」



 父親に抱き付くリズ。デレるフェデラー。なんと言っても可愛い娘には弱いのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 ギルがリズとアルの二人を預かってから3ヶ月。リズとアルは、狩人協会の裏手にある修練場で今日も汗をかいていた。



「やぁ!」

「はっ!」



 二人は、木剣から鉄剣へと武器を換え、剣の基本的な振り方からギルに教わっていた。

 二人に共通することとして、力はあるが技がない、ということだった。



「アル、そろそろ、ゆっくりと基本の型をなぞるやつにしようか?」

「だね」



 ギルが剣術を直接指導するのは、週に二日のみ。その他の五日はリズ、アルの自主練となる。

 この3ヶ月は、基礎体力作りとひたすら基本の型を繰り返していた。そのことにリズは焦っていた。こんなことで、三年以内に【試しの塔】を突破出来るのかと。それでも文句は言わずに黙々と基本を繰り返す。

 何故なら()()()なギルの教えだから。


 今でも忘れない。


「娘さんを俺に預けてください」


 まるで結婚を父親に認めてもらうのかの如く。更には、俺の一生を懸けてもいい、なんて言われてしまっては惚れない訳がない。リズにとって初めての恋であった。



「リズ、顔がにやけてるけど、大丈夫?」

「だ、大丈夫よ。アルこそ大丈夫?あまり器用じゃないけど」



 アルに突っ込まれて若干動揺するリズは、お返しとばかりにアルに突っ込む。



「僕は全然大丈夫だよ。むしろ、この修練は僕に合ってるんじゃないかと思う。不器用な僕は、同じことを繰り返すことが一番の近道なんじゃないかな」



 それはリズも感じていた。新しいことを習うと、最初は断然、リズの方が上手く出来るのだが、何度も何度も繰り返しているうちに、アルの方が上手くなっていく。その事実は、リズの焦りの一つの要因でもあった。



「よう!やってるか?」

「「ギルさん!」」



 突然のギルの訪問に二人は驚く。今日はギルが指導してくれる日ではなかったはずなのだ。



「ちょっと来てくれ」



 二人は疑問を浮かべながらも、自主練をやめ、ギルについていく。


 狩人協会の裏手の修練場を出ると、大通りを南へと歩いていく。

 二人の視界には二つの高い塔と少し低めの塔が一つ見えている。



「確か、真ん中のが【試しの塔】よね?」

「うん、右が【挑みの塔】で」

「左が【戦いの塔】」



 二人はいつの日にか挑戦するであろう、人造迷宮(ダンジョン)を見てテンションをあげていた。



「今日は【試しの塔】の更に試しだから、そんなにはしゃぐなよな」

「え?試しの試し?」



 リズの疑問は置いておかれ、ずんずんと突き進むギルに二人はついていく。【試し塔】の根元付近の建物に入っていくギル。二人も後を追って建物へと入る。



「よう、爺さん。二人分だ。よろしく頼む」

「よう、ギルじゃねえか。今なら二階の一つ目が空いてるぜぇ。で、試すのは後ろの二人か?随分とわけぇな!」

「あぁ、この二人だ。老い先みじけぇ爺さんにも夢を見させてやらぁ。暇ならついてこいよ」

「ほぅ~、楽しそうだな。あとで覗きにいくからよ」



 ギルとかなり親しげな爺さんの言っていた二階の一つ目の部屋へと入る。

 部屋の入口で待っていると、1体の人形が奥の扉から出てくる。



「ギルさん、あれは?」

木兵(ウッドポーン)ってんだ。雑魚中の雑魚だな。あれを一対一で倒してもらう。クリア出来れば、次のステップに進むから、頑張れよ」


「雑魚中の雑魚…私が先にやるわ、いいよね?」

「うん、お先どうぞ」



 いつもの通り、リズが先に行く。こういう時は決まってリズが先に行く。


 木兵(ウッドポーン)は、木で造られた人形である。大きさは平均的な成人男性程度。強度は普通の木と変わらない。技は一般的な兵士にやや劣る程度であるが、普通であれば、10歳の少年少女が相手取ることは難しい。


 リズは基本通り、正眼の構えを取り、摺り足で徐々に距離を詰めていく。


 木兵(ウッドポーン)は、左腕の木の盾を胴の高さまで持ち上げ、右手の鉄の直剣を中段に構えて、リズに近寄ってくる。


 最初に仕掛けたのはリズ。一気に距離を詰めると、袈裟斬りで相手の肩を狙う。


 木兵(ウッドポーン)は、盾を掲げ、リズの剣撃を受けると直ぐに中段の薙ぎ払いを仕掛ける。


 リズは、素早く相手の左側へと回り込み、薙ぎ払いを避けると右からの下段薙ぎ払いを繰り出す。



 木兵(ウッドポーン)は避けることが出来ずに足を破壊されると、そこからは一方的にリズの攻撃が決まり勝負が着く。



「見事だ。じゃあ次はアルだな」

「はい!頑張ります!」



 また奥から木兵(ウッドポーン)が一体出てくると、リズと入れ替わってアルが前に出る。アルも正眼の構えから、摺り足で徐々に距離を詰める。


 木兵(ウッドポーン)は、リズとの対戦と同じように前に出てくる。


 ある程度距離が縮まったところで、アルが仕掛ける。突撃であった。

 正眼の構えから、やや剣先を下げると、突撃の勢いのままに、刺突を繰り出す。基本に忠実なアルらしい突きであった。


 木兵(ウッドポーン)は、盾で防ぎに行くが、若干、タイミングが遅れていた。


 そのままアルの刺突が木兵(ウッドポーン)の胸と首の間にきまると、周囲が砕けて木兵(ウッドポーン)の首が飛ぶ。



「勝負ありだ。見事だ」



 こうして、リズとアルは第一の試練を乗る越えるのであった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇


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