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幻想冒険譚~神造迷宮と鬼狩り~  作者: 樹瑛斗
第2章 神造迷宮と戦争
35/42

35.決戦前準備

 ◆◇◆◇◆◇◆◇



 アルの号令とともに、アル、リズ、プルトの三人は、三方に散る。アルは東に、リズは北東に、プルトは南東に。


 ルナが指示を出し、細かく微調整すると、三人が向かう先から、数体の影が現れる。

 影の正体は、アル達のことを隠れて監視していたルーインの部下である。

 三ヶ所に分かれてアル達を監視していた影は、それぞれ三人で組んでいた。一人は伝達用。残りの二人は見張りである。戦闘能力は高くなく、ルーインにも決して手出しはするなと言われていたが、向こうから襲い掛かってくれば迎え撃つ。


 アルの前に躍り出た三体は、左手前に短刀を構えた者、右手前に二本の短剣を構えた者、後方に短弓を構えた者と隊形をとっていた。


 アルは、素早く接近すると、短弓の射線に短刀を構える男を置き、大鉈を突き出す。


 短刀の男はバックステップで距離を取り、横から短剣の男が襲いかかってくる。


 アルは、左薙ぎで短剣の男の攻撃を薙ぎ払うと、その場で回転し、再度、左薙ぎで短剣の男を狙う。


 踏み込んでいた短剣の男はアルの攻撃を避けることが出来ずに、短剣で受けに回るが、アルの攻撃は、短剣を弾き、短剣の男の二の腕から胸部を斬り裂く。


 そこへ、アルの左側から矢が飛来し、後ろからは短刀の刺突が襲い掛かる。


 アルは、直前の左薙ぎの勢いを利用し、右前方へ回転しながら、転がり避ける。そのまま、短剣の男に逆袈裟斬りで頭部を切り離し、振り返り様に左下からの斬り上げを放ち、短刀の男の追撃を打ち上げる。


 武器を失った短刀の男がバックステップで距離を取るが、アルは鋭いステップで追い縋り、刺突の二連撃で短刀の男の胸部を突き刺し、唐竹割りで頭部を破壊する。


 アルが弓の男を振り返ると、その男は逃げ出しており、アルとの距離は30メトル程となっていた。


 アルは直ぐに追い掛ける。彼我の距離がグングンと縮まり、アルは背後から弓の男を斬り倒す。


 プルト、リズの様子を見ると、プルトは未だに二人の男と交戦中であり、リズは既に二人を倒し、残りの一人を追い掛けていた。


 アルは一瞬、俊巡するが、直ぐに行動に移る。リズが追い掛ける男の先回りをする。


 アルの行動に気付いた男は方向転換するが、その先にはリズが待ち構えていた。

 アルの行動に気付いたルナがリズに指示を出していたのだ。

 直ぐに男はリズに斬り伏せられる。


「アル、早いわね」

「変わらないよ」


 アルはリズと短いやり取りをし、プルトを振り返る。


 どうやら、プルトは相手を麻痺させていたようで、逃げ出されることなく、三体ともにその場で仕止めたようであった。


『ルナ、他に監視の者はいないか?』

『私から見える所には居ませんわ。おそらく、大丈夫かと』


 アルとルナのやり取りの後、三人はルナの元へと戻る。



「みんな、早かったね」

「手応えなかったわ」

「強くはなかったな」

「国王様を狙っていた暗殺者の方が強かったようですわ。おそらく、監視に特化した者でしょう」

「よし。第一段階はクリアだね。次、いこうか」


 アル達は直ぐに次の行動に移る。



 ◆◇◆◇◆◇



 ルーインはアスベルへと定期報告をしなければならないのだが、アスベルの元へと向かうことが出来ないでいた。ルーインの元へと報告に戻るはずの部下が誰一人として戻って来なかったのだ。


 ルーインは直ぐに何が起こったのかを理解し、替わりの者を数名、アル達の元へと向かわせたのだが、その者達も戻って来ていない。


 苦渋の表情のルーイン。これ以上、アスベルへの報告を遅らせることは出来なかった。


 ルーインがアスベルの元へと遅い報告に訪れる。


「アスベル様、申し訳ございません。部下達の消息が途絶えました。おそらく、例の四人に感付かれ、始末され」


 ルーインは最後まで報告することは出来なかった。何故なら、頭が胴と離れ、宙を舞っていたからだ。


「使えぬヤツは不要だ」


 唯一、アスベルの近くに居たルーインが()()()()()、アスベルの近くには生きている鬼族が皆無となった。


 他の吸血鬼(ヴァンパイア)部隊は、アスベルやルーインの言い付け通りに、数百メトルの距離を開け、待機していた。


 アル達は知らないのだが、アスベルの部下である吸血鬼(ヴァンパイア)部隊は、アスベルに絶対服従であり、離れていろという命令にはどんなことがあっても逆らえないのだ。命令がなければ、アスベルの元へは近寄らない。それは、例え、アスベルが死亡したとしても。



 ◆◇◆◇◆◇



 西の河岸近くの岩陰にルナは隠れていた。


 そのルナから遠く離れた場所に、アル、リズ、プルトの三人が散々に隠れ潜んでいた。


 ルナが逸速く敵の偵察隊を発見すると、そこの近くに潜んでいる三人のいずれかに指示を出して仕止める。それを数時間、繰り返していた。


 暫くして、追加の偵察隊が来なくなるが、更に数時間、じっと待ち続けていた。


『アル、そろそろ良いかもしれませんわ。相手の拠点には全く動きがありません』

『了解。じゃあ、一旦、ルナの所に集合しよう』



 ルナの元へと三人が戻る頃、日が傾き始めていた。


「時間がないね。休憩を取りたいところだけど、もう少し。みんな、後少し頑張ってくれ」

「はぁ、疲れたけど、そうも言ってられないのは分かってるわ。頑張りましょうか」

「まぁ、主にアルとリズの力と体力頼みだけどね」

「ごめんなさい。ここからの()()は、私では役に立てませんわ」

「そんなことないよ。ルナには、引き続き周囲の監視を頼むよ。プルト、そんなこと言ってもプルトもやるんだよ?」

「分かってるって。だけど、アルやリズに比べたら、俺なんかかなり作業速度が落ちるからな」

「はぁ、私、女の子なのに……」


 最後のリズの愚痴には誰も突っ込まない。女の子と言っても、この四人の中で一番の力持ちなのだから。



 ◆◇◆◇◆◇



 ケルムト大河の河岸で、陰になっている場所に起点の穴を掘る。

 昨日の穴堀で、この作業になれてはいるが、単純作業なだけに三人は著しく飽きていた。


 先頭で穴を堀続けるリズ。掘った土を一輪車に積み込むプルト。一輪車を出口まで運んで大河に流すアル。

 たまに、アルとプルトが役割を交換したり、アルとリズが役割を交換するが、単純作業に変わりはない。


 起点の穴の場所から、ルナが三人に情報を流す。



『現在、500メトルといった所ですわ。アスベルの拠点までは残り500メトルと少し』

『了解。あと、100メトルだけ掘り進めよう』



 あまりにも近付き過ぎると、アスベル達に感付かれる可能性がある。アスベルの拠点から遠くなると、逃げ切れない可能性も高くなる。

 アル達は、アスベルの拠点から400メトルをこの土豪の終着地点と定めたのだ。


 それから、程なくして目的の地点までの穴堀作業を終える。終着地点は、地上への大穴は開けず、ほんの僅か、目印程度の穴を開ける。その上に乗れば、回りの土が崩れ、大穴となるように仕組んでおく。

 その最後の微調整を終えた三人は、ルナの待っている河岸まで戻る。


「お疲れ様。それじゃあ、食事を取って、仮眠しようか。アスベルを倒すのは夜明けにするよ」


 こうして、アル達は対アスベル戦の準備を整え、決戦の時を待つのであった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇


対アスベル戦まで時間(話数)が掛かってしまいました。

後で、ここまでの数話を改稿し、もう少し短く纏めようと考えておりますが、とりあえずは、このままとさせてください。

引き続き、神造迷宮と鬼狩りを楽しんで頂けるよう尽力いたします。宜しくお願いしますm(__)m

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