12・戦団名と賭け
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「銀の門」
「ギルさんの戦団名と被り過ぎ。却下。
双牙」
「どこかの魔獣っぽい。悪者じゃないんだから。却下。
銀の匙」
「それも、ギルさんの戦団名に似すぎ。匙って弱そうだし。却下。
剛の嵐」
「剛って何よ、剛って。確かに私の天啓才能の一部だけど、なんかゴリラ女みたいじゃない。却下。
銀の嵐」
「銀に拘り過ぎだよね。嵐って僕の案パクってるし。却下。
剛の竜巻」
「だ、か、ら。剛はやめてよ、剛は!ゴリラの印象しか無いわよ、それ。却下!
銀の…あ~もうダメ、思い付かない」
「はぁ…何がいいかね…」
二人は、二人の戦団名を考えていた。
リズは、ギルの戦団・銀の鍵が頭から離れない。
アルは、二人、二人に共通すること、ということに拘っている。
「よう、久し振り!元気してるか?」
「ギル兄!」
「ギルさん!」
そんなお悩み中の二人の元をギルが訪れる。約1ヶ月振りの再会であった。
「お前らが出ていってから、少し心配になっちまってよ」
二人の兄貴分であるギルは、手元を離れた二人をいつも気にしていた。たまたま外での狩りの依頼がなく、暇が出来たので二人がお世話になっている寮に顔を出しに来たのだ。
「ギル兄、相談のって!」
「なんだ、なんか悩んでんのか?」
タイミング良く現れたギルに、リズは相談を持ち掛ける。
「ギルさん、悩みは僕らの戦団名なんです」
「戦団名か…よし、俺が名付ける!」
戦団名を考えること等、かなり好きだったりするギルは、テンションがあがってきていた。
「格好いいのにしてよね!」
少し不安になったリズは、念のため釘を刺しておく。
ギルは腕組みをし、暫く考え込む。と、突然、大きな声で発表する。
「真龍の髭!」
自信満々に戦団名を告げるギル。それを聞いたアルとリズは、一瞬固まる。
「えっ!カッコ悪いんだけど…」
「あんまりだよ、ギルさん」
ギルのセンスの無さに呆れる二人。期待した分、より残念さが大きくなっていた。
「おいおい、この名前の意味を聞いてからにしろよ。まず、真龍だな。ここら辺にいる鬼竜は偽物の竜、オーガリザードとか呼ばれている。でだ、真龍は、真なる龍、ドラゴンだな。伝説上の神獣だ。格好いいだろ?」
一気に喋るギル。実を言うと自分達の戦団名を考えていた時に、候補としてギルが挙げた名前であった。当時の仲間からは総反対されたのだが。
「そこまではいいけどね、髭って何よ」
「バッカ、龍の髭って言ったら伝説上、最強の武器なんだよ。つまり、お前らは本物の龍で、更に最強の武器って意味だ。どうよ!」
その昔、自分の仲間へ説明した内容を繰り返すギル。一気に勢いで押し切ろうという魂胆であった。
「格好いいね。意味は」
「そうね、意味だけは格好いいけど…」
「「語呂がイマイチ」」
久し振りの再会であったが、昔の自分達の戦団名を決めていた時と同様に撃沈するギルであった。
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「アル、真剣勝負よ」
「あぁ、望むところだ」
「それじゃあ、いくよ!」
「よーい…」
「「どん!」」
二人は一斉に駆け出す。
ここは、【挑みの塔】の5階層。今日、初めて訪れた階層である。二人はこの階層で勝負をすることにした。
勝負の内容は、どちらが早くゴールである帰還用結界に辿り着けるか。
この勝負は賭けである。
アルが考えた戦団名にするか、リズが考えた戦団名にするか。
これは、木剣では勝負がつけられない二人が考えた真剣勝負であった。
5階層は、森&草原エリア。ここでは、鋼鉄系の人造生物が群れを成して襲ってくるのだ。その他にも凶悪な罠が多数仕掛けられている。4階層までには出現しなかった火、水、風、土を操る精霊系の人造生物も出現する。【挑みの塔】の中では、どちらかというと戦闘能力が試される階層であった。
鋼鉄狼獣の群れと遭遇したアルは、群れを無視して森を駆け抜ける。
鋼鉄烏像の群れと遭遇したリズは、群れを引き連れたまま、草原を駆ける。
アルの後ろには無数の鋼鉄狼獣や鋼鉄猿獣が追ってきていた。
リズの後ろには無数の鋼鉄烏像や鋼鉄鷲獣が追ってきていた。
二人は敵を倒すことは考えていなかった。何者よりも早く速くゴールへ辿り着く。それだけであった。
アルは、大規模な罠を発見するが、迂回せずに罠に突っ込んでいく。罠が発動し、無数の矢や槍が放たれるが、それも無視して真っ直ぐ突っ走る。アルの後ろから追ってきていた狼や猿は、矢や槍に貫かれ、その数を激減させていた。
リズは、進路を火蜥蜴の群れに立ち塞がれるが、それを無視して群れに突っ込んでいく。火蜥蜴の群れは一斉に口から火を放つが、リズは火を掻い潜り、真っ直ぐに突っ走る。後から追ってきていた烏や鷲は蜥蜴の火に焼かれ、その数を激減させていた。
その後もお互いに、多数の群れと遭遇し、凶悪な罠を掻い潜り、ひたすらゴールを目指して走り続ける二人であった。
十数時間後。
「よし!」
通常、早くても5日程は掛かると言われている5階層を、僅か半日で走破したのは…アルであった。
アルに遅れること、僅か30分程でリズが辿り着く。
「くっそー!ぐっぞー!ぅぐっぞー!」
まだまだ可憐な少女であるリズ。巷には、リズのファンも多くいるのだが、今のリズの悔しがる表情はとてもではないが、ファンには見せられない。般若のような形相であった。
「僕の勝ちだ。
約束通り、今日から僕達は…」
少し溜めるアル。
「一対の銀!」
「…仕方ないから、認めてあげるわよ」
リズは腕を組み、ふんっと鼻を鳴らす。仕方ないとは言っているが、アルが考えた戦団名もそこそこ気に入っていたのだ。
こうして、約2ヶ月に渡り、決めあぐねていた戦団名が漸く決まったのであった。
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