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11・二人立ち

 ◆◇◆◇◆◇◆◇



 リズとアルはぐったりしていた。

 2年前に経験した長い長~い事前説明と同じようなことが先ほどやっと終わったのだ。



「それでは、こちらがお二人の【挑みの塔】の登録証になりますので、くれぐれも紛失しませんようにご注意ください」



【挑みの塔】の入口に設置されている管理局を出た二人は盛大なため息を吐き出す。



「はぁ、リズ、新しく住むとこ見にいこっか」


「はぁ、だね」



 二人は今まで居候させてもらっていたギルの家を出ることに決めた。【試しの塔】挑戦中は、神石の拾得報酬で少しは稼ぎがあったが、金銭面でも全面的にギルのお世話になっていた二人。このままギルに頼りっぱなしではいけないと発奮し、金銭面も住む家も自分達の力でどうにかすることに決めたのだった。



 アルフガルズは小国である。他国との交流もあるにはあるが、そう活発ではなく、アルフガルズを訪れる者は少ない。アルフガルズの人口は10万人と多いが、国土は非常に狭い。中央区には一応、宿屋はあるが、そもそも旅人が少なく、泊まる者も多くないため、宿屋自体も非常に少ない。


 二人が住む家を探すとしたら、宿屋等ではなく、どこかに下宿させて貰うのが現実的であった。


 アルが、下宿先など教えてもらえないかと、先ほどの【挑みの塔】の事務職員モナに質問したところ、思いの外、長い説明が返ってきたのだった。


 これから、紹介してもらった下宿所に向かうところであった。


 それは【挑みの塔】や【戦いの塔】に挑戦する者たちが良く使うという、寮のようなところであった。

 リズやアルよりは歳上だが、比較的年代の近い者が多くいるらしい。



「ここかな?」



 アルが指差したところは、何処かで見たことのある建物だった。



「リズ、これ、何処かで見たよね?」


「何度かこの道を通ってるから、見覚えがあるんじゃない?」



 アルは少し考えると、はっと思い出す。



「2年前、【試しの塔】に初めて挑戦した時!」


「私達はギル兄の家で居候させて貰ってたわよね」


「違うよ、あの木兵(ウッドポーン)の町で泊まった宿屋!」


「あ、ホントだ!言われてみればそっくり!」



 建物の中に入ると、1階は食堂のようなホールになっていた。



「ほら!やっぱり!」


「ホントだ~」



 テンションが上がってきた二人に、カウンターにいた、この寮の寮母が話し掛ける。



「いらっしゃい。随分と若いようだけど、ここを利用するのかい?」


「はい。アルと言います」


「リズです。明日から【挑みの塔】に挑戦する予定です」


「カンノだよ。それじゃ、この台帳に代表者の名前を記入して。お金はあるかい?1週間単位で支払って貰うことになるけど」



 寮母のカンノはアル、リズへと簡単な説明をする。



「とりあえず1週間でお願いします」


「はいよ。1週間だと、銀貨1枚だね」


「良かった、これで足りますよね、お願いします」


「あいよ、じゃあ、2階の手前の1号室を使ってくれ」


「えっ?二人で同じ部屋?」


「なんだい嬢ちゃん、別の部屋が希望かい?それだと、追加で銀貨1枚になっちまうけど…」



 悩むリズ。2年前、ギルの家に居候させて貰った時も同じ部屋であった。しかし、最近はギルにお願いして別の部屋にして貰っていた。


 乙女としての矜持を取るか、お金を取るか…



「リズ、言いにくいけど、あと銅貨8枚しかない。ちょっと稼いでからじゃないと、新しい部屋が取れないよ」


「そうよね。悩める状況じゃなかった。カンノさん、一部屋でいいです」


「布団は2つあるから、心配しなさんな」



 はぁ、とため息を吐いて階段を登っていくリズ。悪いことはしていないが、どこか居づらい気持ちとなるアル。



「予約した【挑みの塔】の挑戦日が5日後だから、今日は狩人協会の修練場を借りようか?」


「ふふっ、そうね。少し身体を動かしたくなったわ。久し振りに木剣で勝負しない?」



 木剣での勝負は3年振りとなる。3年前まで、アルはリズに1度も勝ったことがなかった。



「いいよ。僕は負けないからね」


「望むところよ、やりましょ!」



 荷物を置いたアルとリズは、早速、狩人協会の修練場へと向かうのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



「やっ!」



 リズが鋭い踏み込みから、袈裟斬り、斬り上げ、薙ぎ斬りの三連撃を繰り出す。


 それに対してアルは正眼の構えから、木剣を斜めに動かし、三連撃を全て受け流す。



「はっ!」



 アルが鋭い踏み込みとともに刺突の三連撃を繰り出す。


 リズは、初撃をかわし、二撃目、三撃目を受け流す。



「やっ!」



 リズがお返しとばかりに鋭い刺突を繰り出すと、アルは後方宙返りで距離を取る。



「やっ!」



 リズは身体を振って接近すると、左下からの斬り上げから袈裟斬りを狙う。



「はっ!」



 アルは斬り上げを半歩下がって避けると、リズの袈裟斬りに斬り上げをぶつける。



「はぁ…ダメね、勝負が着かないわ」


「だね」



 お互いの木剣が木端微塵に砕けてしまったのだ。



「木剣じゃないと怪我じゃ済まなくなるからね、僕らは本気で勝負できなくなっちゃったよ」


「はぁ…基本の繰り返しでもしようか。5日間、ずっと基本か…萎えるわ…」



 修練場は二人だけではなかった。二人と同年代の少年や少女、二人よりも歳上の者もいる。恐らく、【試しの塔】【挑みの塔】【戦いの塔】への挑戦を考えている者や挑戦中の者であろう。


 それらの者はアルとリズの戦闘をこっそり見ており、その戦い振りに驚愕していた。



「あの二人、誰?」

「あいつでけーな…」

「あの女の子可愛くね?」

「あの女の子でかくね…」

「すげえ強ぇな、おい」

「俺、女の子に負けそう…」

「でかいけど可愛いわね…」

「強くて可愛い♪」



 周囲の者達はこそこそと二人について話していた。


 それでも、二人は周囲の雑音は気にせず、黙々と基本の型をなぞっていた。



「あっ!」


「アル?どうしたの?」



 突然、アルは何かを思い出したかのように声を出す。



「あのさ、【試しの塔】って、攻略後も再挑戦できたよね?」


「できた筈だけど…いく?」


「今から行こうよ。鋼鉄剛錬武(アイアンゴーレム)の神石を10個集めたら、銀貨1枚になるよ」


「ほんと?じゃ、早く行こう!」



 修練場に突然現れ、嵐のような戦闘をしたかと思うと、黙々と素振りを始め、突然、修練場を去る。


 その間、周囲の若者は自分達の練習をする振りをし、ずっと二人のことを窺っていたのだった。


 この頃から、同年代の少年少女の中で二人の知名度が上がって行くのだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇


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