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一縷の奇跡
僕らの世界は
すべてが偶然の上に成り立っていて
「今、僕の隣に君がいる」
「今、君の傍に僕がいる」
――その事象すら
海底で燻る煙のように
砂漠に眠る魚のように
ひどく、ひどく希有なことで
僕は愚かしく微笑んだ
――ああ、僕はしあわせだ
君と一緒にいられる時間が
とても――この世の何よりも――愛しい
風に舞い踊る桜
どこまでも澄み渡る空
地を染め上げる紅葉
音もなく降り注ぐ雪
様々な奇跡を
君と一緒に感じてきた
ご都合主義な現実に溺れて
僕は今日も空色の想いを紡ぐ
物語のような日常に縋って
僕は今日も飴色の軌跡を辿る
君への愛情を胸に抱いて
僕は今日も薔薇色の人生を歩む
そう
僕らが出会ったのは
この世のすべてが奇跡に変わる
合図だったんだ。
お題「合図」で書きました。




