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心象詩編  作者: 怜梨珀夜
17/18

長門峡の初秋


   1


 月はかすかにおぼろげに、

 架線に腰かけ揺れていた。


 僕は盃揺らしてみたが、

 水面の月は消えゆくばかり。


 月光に侵食された僕は、

 苔蒸した街並みの夢を見る。


 森の中で、滝の中で、

 星屑になりたいと願った。


   2


 あなたは今ごろ、どこかしら。

 あなたの来世は、何かしら。


 あなたと同じ道を歩いたら、

 あなたと同じ歌を歌ったら。


 あなたと同じものを食べたら、

 私あなたに少しでも近づけるかしら。


 あなたを構成する要素と、

 私を構成する要素。


 少しは似通っているかしら。

 少しでも、あなたの近くにいられるかしら。


 あなたの歌ったあの川に、

 髪の毛一本、浮かべてきたの。


 あなたの歌ったあの川の、

 石を私、拾ってきたの。


 あなたの歌ったあの川の、

 水を私、泣きながら飲んできたの。


 それでもあなたはまだ遠い。

 それでもあなたは、空の上。


 私死んだら星になりたいの。

 あなたはそこにいるかしら。


 あなたはそこにいるかしら。


   3


 長門峡のペイヴメントは、

 獣道と見紛うばかり。


 右の耳に川は寄り添い、

 聞こえてくるは水のささやき。


 水曜朝に人はなく、

 僕はこの世に一人ぽっち。


 生命の息吹に、あなたの幻視に、

 盲信症の証明に、


 震えながら、恐れながら、

 しんしんと泣くほかに、

 僕は何のすべも持たなかった。


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