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マリンライナー
海の上に鉄塔を積み上げて
快速電車は滑ってく
昼下がりの車内は広く
補助席に座るのは僕だけだった
僕は図書館で借りた
だれとも知らない人の詩集を一片読んでは
空と同じ、青白い色をした海に目を移すんだ
――今僕のもたれかかっている壁が
突然ジイッとファスナーのように開いて
真下の海へ真っ逆さま、なんて
僕の夢想を車輪は笑った
冬の日光はどこまでも柔らかく
僕の倦怠を振り払うだけの力はない
組んだ足のつま先に
飴色の淡い光が降り注ぐ
ゆるやかな絶望をペットボトルに汲んで
キャップを捨てて、そっと口づけ
ぐっと一気に飲み干そう
腹の中を青い毒で満たすんだ
それがどうした? たいした意味なんか、ない!