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*消えない里程標3
お父さんは、手を引くマオリがついていける速さで、森の中を、走る。
夜の、冷たい空気が、マオリの頬をさす。
寝衣のままできたから、全身が段々冷えてくる。
走っていれば、温かくなるかもしれない。
どれくらい、走るのだろう。
森の奥の方の、一番大きくて、一番高い樹の前でお父さんは走るのをやめた。
マオリはいつも、長く走ることを、辛く感じていたが、何故か、今はそんなことは無く、心地よく感じていた。
この樹には過去に、訪れたことがあるような。
うっすらと、マオリが魔法に侵されたとき、お父さんが連れてきてくれたかもしれないと、非常に曖昧な記憶がある。
どんなことをしたのか、覚えていない、けれど、多分、マオリに治療のための魔法を使ったのかもしれない。
樹を見上げながら、ふとそんなことを思い出した。
ここに来たことがある、という記憶だけが、はっきりあった。
読んでくださってありがとうございますね。