01話 洞窟の底は異世界に続いていた
ガシャン、とひどく乾いた音が響いたのは、夏の盛りも絶好調の8月の始まり。その、真昼だった。
ミィン ミィン とセミの声が満ち溢れており、日差しは容赦なく地表を照らしつけている。静寂とは無縁の季節の中にあって、その空間は、その時確かに無音であった。
瓦屋根の古風な家屋の、広く落ち着いた畳張りの一室に、二人の少年は呆然と立ちつくしていた。
双方とも口は一文字に引き結ばれ、その表情は硬く強張っている。
一人は額に小さな切り傷の跡が残る、腕白さの面影を色濃く残した少年だった。年は14。遊び盛り成長盛り真っ只中の年頃である。彼の名を、赤石 快晴という。
そしてもう一人は、柔らかな茶色の髪を持つ、落ち着いた面差しの少年だった。年は先の少年と同じく14。彼の名を、青波 嵐という。二人は従兄弟同士で、幼馴染みであった。
二人は足元を見つめ、次いで、お互いの顔を見た。
「……どうするよ、これ」
長く沈黙が続いていたが、先に口を開いたのは快晴であった。その声はありありと困惑の色が混ざっている。
嵐は快晴を見て、もう一度足元を見て、ゆっくりと目を閉じた。その間数秒。おそらく5秒もない。次に目を開いた時には覚悟を決めたようで、快晴を見る。そして口を開いた。
「完全犯罪、試してみる?」
快晴はその言葉に――
「ムリだろ、それ」
あっさり切り捨ててから、長く大きな溜め息を吐いた。
そして、足元に散らばる陶器の破片に目を落とす。嵐は反論せず、膝を曲げて散らばる破片の中でただ一つの異物――ソフトボールを拾い上げた。
快晴がぽつりと呟く。
「今夜は夕飯抜きかな」
「それだけじゃすまないって。外に放り出されない?」
「……ゲンコツ付きだよな、絶対」
「それは確実だと思う」
「意外と、ここに壷を置いてること、忘れてたり」
「無駄な希望は持たないほうが身のためだね」
嵐はあっさり答えてから、けれど、と言葉を続けた。ソフトボールを持ったまま立ち上がると、押入れに近付いた。
トン、と押入れの戸に手を置く。
「何も努力しないよりは、マシ、とも言う。ここに何があった?」
「……じーさんの集めた壷?」
「じーさんも年だし、似たような色の壷置いておけば、分かんないかもしれない?」
「……なるほど。おー、なるほど!」
ポン、と快晴が納得したように手を打った。嵐は押入れを開きながら、言う。
「快晴はホウキとチリトリと袋を持ってきてよ。さっさと掃除して、証拠隠滅するよ!」
「分かった!」
快晴は慌てて奥の部屋に引っ込み、嵐は押入れの奥に丁寧に仕舞われている壷の箱を一つずつ取り出し始めた。
中身を確かめながら、先ほど壊した壷と似たような色合いの物を探し始めるためだ。
「ったく、今どき祖父の大事な骨董品を、キャッチボール中の孫が壊すなんて古いオチ、誰がやらかすんだよ……」
一つ一つの箱の中身を確かめながら、嵐は独り言のように呟いて――首を横に振った。他の誰でもない、それは嵐と快晴だ。
幾つめかの箱に入っていた、色合いの似た壷を見つけだすと、さまざまな角度から壺を見定める。形はほとんど同じ、に見える。ならばこれが妥当か。そう決めると、他の箱は押し入れの中に戻して行く。
快晴がホウキとチリトリを持って戻ってきたのはそれからすぐで、二人は丁寧に、それこそ欠片の一つも残さないように壷の破片を拾い集めた。そして、スーパーのビニール袋に入れるときっちり口を縛る。
その袋を持ち、嵐は少し考えてから立ち上がった。快晴はつられるように立ち上がって尋ねる。
「どうするんだ、それ」
「隠すに決まってるよ。ゴミに紛れさせる……のはムリだよね。おばさんにバレてじーさんに伝わるのは目に見えてるし」
「あー、母さんは完全にじーさんの味方だもんな」
「床下とか?」
「誰があんなクモの巣と埃だらけの暗い所に入るんだ?」
「屋根裏?」
「あそこはじーさんが時々掃除してるからダメだな」
「じゃあ……」
嵐はぐるりと周囲を見渡して、ふと、その視線を一点で止めた。縁側から見えるその光景を、じっと、見つめる。
そして、閃いたように頷いた。
「あそこなら大丈夫、かも」
「どこだ?」
「あそこだよ」
嵐が指差す方角へと、快晴も目を向ける。そして、ああ、と納得したように頷いた。
そこには、緑生い茂る山があった。家に対して裏手にある、二人にとっては生まれた時から今まで慣れ親しんでいる遊び場である。
「さっすが嵐。悪巧みは天下一品。参謀殿」
「それ絶対誉めてないでしょ」
「え、そうか? 俺は誉めてるつもりだけど」
「……褒め言葉かなぁ」
「ま、いーじゃん。喜んどけって。じゃ、さっさとそれ、隠しに行こうぜ」
からりと笑って快晴が歩き出し、嵐はしばらく複雑そうにその背中を見つめてから、小さく溜め息をついて歩き出した。
二人は急いで裏口から出ると、山の中に分け入った。慣れ親しんだ山はいつものように二人を受け入れ、慣れ親しんだ山道を、二人はいつものように歩く。夏は雑草が勢い良く育っており、いつもの通り道は一見するだけでは見えなくなっている。だが、目ではなく身体が道の位置を感覚で覚えていて、二人の足取りは迷いがなかった。
途中で、快晴が首を傾げた。
「じーさんって今年幾つだったっけ?」
「確か……80は超えてたと思う」
「じゃ、よっぽどのことでもない限り、山に入ろうなんて思わないよな」
「そうだと思うよ。山頂に、ほら、昨日見つけた洞窟があっただろ? 毎日のように遊んでた僕達ですらずっと気付かなかったくらい、見付かりにくい場所にある穴だし、あそこならほぼ確実に見付からないと思う」
「ああ、あそこか」
快晴は頷くと、山頂に目を向けた。
脳裏には、14年間遊び回り知り尽くしたと思っている場所に見つけた、小さい入口の洞窟が蘇る。山頂の岩場の近くにその洞窟はあり、その岩場は二人がもう少し幼い頃には秘密基地のような場所だったにも関わらず、不思議と今まで見つけたことなどなかったのだ。
祖父からは岩場で転ばないように気をつけろ、と言われた事はあるが、洞窟があるから落ちないように気をつけろ、と言われた事もない。祖父ももしかしたら、洞窟の存在を知らない可能性もある。
確かに、あそこなら祖父に見つけられる事はないだろう、と快晴は思う。
(やっぱり、嵐の悪巧みは天下一品だよ)
背中から聞こえるもう一人の足音と、ビニール袋の中でがちゃがちゃと鳴る壷の破片の音を聞きながら、快晴は改めて思う。
いつもつるんでいる仲間達の中で、嵐は最近流行りのゲームキャラクターを真似て”参謀殿”などと呼ばれている。それは、仲間の中で成績が優秀であることや、仲間を率いるより作戦を立てる時のほうが生き生きしているからだ。
そのまま二人が山頂にたどり着くのに5分ほど掛かった。洞窟の入口にたどり着くと、ひと休みのつもりで二人は手近な石に腰掛ける。
真夏の山登りは、二人にかなりの発汗を促していた。額に汗が流れるのは言うに及ばず、背中も汗でシャツが張り付いている。快晴が、シャツの裾で頬を流れる汗を拭きながら、言った。
「毎年思うけどさ、やっぱ異常気象だよな、これ。背中が気持ち悪い」
「今のところの日本全国の最高気温って、確か……39度だったっけ? この辺りはまだ38度が最高だけど」
「1度の差なんてあってないようなもんだろー。あつー」
「じゃあ洞窟の中は、きっと、サウナだね」
「げー」
快晴は心底げんなりした表情になりながら、洞窟の中を覗きこむように膝をついた。
光が差し込むのは入口の周囲のほんのわずかだけで、中は絵の具の黒色をありったけで塗りつぶしたような黒さだった。かろうじて人が一人と入れるほどの大きさの入り口で、下へと続いている。
しばらく、奥を見透かすように目を細めて、睨みつけるように見ていた。
嵐が、額の汗を腕で拭いながら尋ねた。
「何か見えた?」
「いや、なんにも」
「あ、そ」
どうやらお互いに何か期待していたわけではないらしい。答える声は、お互いに素っ気無い。
やがて、嵐は壷の破片が入ったビニール袋を持ち、立ち上がる。
「こんな真昼に外に長居するもんじゃないね。さっさと用事すませて家に戻ろう」
「そうだな。じゃあ、洞窟の奥にでも放り込むか?」
「それだと岩に引っ掛かって入口近くで破片が散らばっちゃうだろ。ちゃんと見えない場所に隠さないと」
そう言って、嵐が洞窟の入口に足を掛けたところで、快晴があ、と声を出した。そして、中に入ろうとする嵐の腕を掴んで言った。
「俺が行くって」
「何でさ」
「俺のほうが運動神経いいだろ」
「……」
言った途端、快晴はしまったと口を押さえた。
案の定、嵐がじとりと半眼になって快晴を睨みつけている。
「……悪かったね。どうせ僕は、体育が2だよ!」
「あーいや、そういう意味じゃない……とか言ったりして……」
「へー。じゃあどういう意味か教えてよ」
「……だからーそのー、ほ、ほら、危ないだろ!? 足滑らせたりとか」
「そんなの快晴も同じだと思うけど」
「いや、そうだけど、やっぱ違うっていうか、」
「どう違うって? 僕はいっつも2で、快晴の体育がいっつも5っていう違い!?」
「って、あ、嵐!」
「これくらい、僕にだってできるよ!」
嵐は快晴の手を強引に振り払い、洞窟の中に足を降ろし始めた。
快晴も慌てて洞窟を降り始め――そして、足を踏み外した。
「げっ!?」
咄嗟に近くの岩を掴む事で、奥へ落ちていく事だけは免れる。が、間が悪いことは続くらしい。
快晴の声に、足を踏み外しかけたという事を察して、振り返ったのだ。そして、今度は嵐が、不安定な体勢のせいで、足を踏み外す事になる。
「だいじょう――っ!?」
「嵐っ!?」
身体のバランスを崩した嵐に、快晴は条件反射のように手を差し出した。
そしてそれは、危ういところで保たれていた快晴の足場の安定をも、奪った。二人はほぼ同時に、ほら穴の奥へと吸い込まれるように、落ちていく。
「う、わ―――っ!!」
洞窟の中から響く二人の悲鳴は、けれど、地表においては小さな音でしかなく、近くの小鳥が二羽ほど飛び立っただけだった。
周囲は、何事もなかいかのように、夏の騒々しさがあるだけだ。
―――*―――
落ちた拍子に気を失ったらしい。快晴は小さく呻くと、そっと目を開いた。
が、目に映るものは何もない。黒、一色のみだった。
目を開いたはずなのに、と快晴はぱちくりと目を瞬かせて――すぐに、自分の状況を思い出した。そうだ、快晴は洞窟の中に落ちたのだ。光の入らぬ穴の中は、暗闇があるだけ。たとえ目を開いていたとしても、何かが見えるわけがない。
自分を落ち着かせるつもりで、何度か頭を横に振ってから、今度は嵐のことを思い出した。一緒にこの穴に落ちたはずだ。
「嵐? いるか?」
この暗闇の中では見えないことは分かっているが、目で探してしまう。
「嵐!」
もう一度名前を呼ぶと、小さくうなる声が聞こえてから、「快晴?」と嵐の声が耳に届く。
ほっと安堵の息をつきながら、快晴は膝をついたまま、手探りで声の方角へ進んだ。すぐに快晴の手は柔らかい何かに当たり、嵐が「うわっ!?」と驚いた声を出す。
「嵐か?」
「何だよ、今の……快晴の手? 顔に思いっきり当たったんだけど」
「ごめんごめん。何も見えないからさ」
「まぁ、この真っ暗闇じゃね。ってか、ここって洞窟の底だよね? 僕達、落ちた……んだよね?」
「そうみたいだな。上見ても、入口はさっぱり見えないけど」
「……ヘン、だよな。それって」
「は? 何が?」
快晴のキョトンとした声に、嵐は溜め息をついた。
「入口が見えないくらい深い穴の底に落ちたっているのに、僕、ケガをしていない。快晴は? その声の感じだと、何ともないみたいだけど」
「あー……。そういえば、そうかも」
言われて初めて気付いたように、快晴は頷いた。そして、見えないと分かっていつつも、自分の身体を見下ろす。
見えなくとも、ケガがあれば痛みがあるはずだ。だが、快晴も嵐も、痛み場所などどこにもない。手探りで自分の身体を触ってみても、身体に異変らしい異変はまったくない。
確かに、あの狭い岩場から落ちたにしては、妙な具合だ。
いや――と嵐は小さく呟いた。
「回りをよく見て……じゃなくて、触ってみてよ。ここ、本当に洞窟の中だと思う?」
「え? ……そう言えば、地面がつるつるしてる……?」
「しかも、まっ平。絶対に洞窟の中じゃないよ」
二人は、顔を見合わせるつもりで、お互いがいるだろう方向へと顔を向けた。
これは一体どういうことだろう。二人は確かに洞窟の中に入って、足を滑らせて落ちた。ここがその通り洞窟の底なら、地面がゴツゴツとした岩場のはずで、そして、二人が無傷なんてあるわけがない。
嵐は丁寧に地面を手のひらで確認した。ツルツルとした手触りは、まるで大理石の床を触っているようだった。ひんやりと冷たく、硬い。
一体何がどうなっているのか。状況判断したくとも、この暗闇では自分の置かれている場所すら分からない。
「そういやさぁ」
ふと、思い出したように快晴が口を開いた。
「何?」
「壷の破片、まだ持ってるか?」
「……快晴は、このワケ分からない現状より、壷の行方のほうが心配なわけ?」
「だってさー、じーさんのゲンコツがかかってるんだぜ?」
「……」
嵐は一瞬口を噤み、呆れの言葉を口にしようとした。
だが。
「とりあえず、受けられるか受けられないか分からないおじいさんのゲンコツより、目の前のことを考えたほうが、良いのではないかしらね?」
暗闇の中から、突然、女の声が聞こえた。
だが、二人の目には暗闇しか映らない。たっぷりと数秒の間を開けてから、ようやく快晴が口を開く。
「……おねーさん? それともおばさん?」
「しっつれーね! わたしは18よ!」
暗闇の向こうから憤慨した声が返ってきて、すぐに、「って違う違う、これじゃあ威厳も何もあったもんじゃないわ」と、呟くのが聞こえた。そして、暗闇の中に唐突に人の姿が浮かび上がる。
と、同時に二人の周囲も淡い光が浮かび上がり、お互いの姿も見えるようになった。嵐は快晴を、快晴は嵐の姿を見て、安堵したように、ほっと小さく息をついた。
「初めまして――なのかしら? 嵐くんと快晴くん」
現われたのは、少女だった。
真っ黒いコートを羽織っており、右手には大きな鍵のような形をした杖を持っていた。少女の周囲には、淡く白い光が幾つも浮かんでいる。
「……」
「は~すげぇ」
快晴が目をまん丸にして少女を見上げ、嵐は思い切り不審な感情を丸出しに、少女を見上げている。
少女は二人の反応を見比べるように見て、くすり、と小さく笑った。そこにある感情は、「懐かしいなぁ」といった類いのもので、快晴は首を傾げる。
そう言えば、この少女は二人の名前を呼んだ。という事は、知り合いなのだろうか。
快晴は、知る限りの女性の顔を思い起こそうと頭を回転させた。まず、祖母、母、妹、クラスメイト、近所のおばさん、学校の先生、……そこで途切れる。そして、その中に一つとして目の前の少女と重なる顔はない。
一方嵐は、警戒の色を濃くして、少女を睨みつけた。彼の中では、目の前の少女の存在は完全に”不審者”というカテゴリーに収まっている。
「おねーさん、誰」
嵐の声音に含まれる警戒に気付いた少女は、苦笑した。
「自分で言うのもなんだけど、怪しい者じゃないわよ。そうね、わたしはあなた達にとって、幸運の通りすがりってところかしら」
「幸運の……」
「通りすがり? あの、道ですれ違う人?」
「そうよ。味方にはなれないけれど、助けることは出来る。同じ道を歩くことは出来ないけれど、道の先を少しだけ教えてあげることは出来る――そんな、幸運の通りすがり」
「どういう意味だ? 嵐」
「僕に聞かないでよ。さっぱり分からないんだけど」
「うんまぁ、その通りだと思う。だから、さくっと次に進みましょうか」
「……は?」
少女は言うと、目の前のさっぱり状況を理解できていない二人に構うことなく、懐から小さな青い石を取り出した。
子どもの親指ほどの大きさで、楕円形のそれは、光のない中で自ら輝いているように見えた。
少女はそれを、嵐の前に差し出した。
「これ、約束通りに、君に返すわね」
「……? 返す……?」
嵐が訝しげに少女を見て、そして、青い石を見る。
「これは、”輝石”って呼ばれる特殊な鉱石よ。祈りに反応して、力を発揮するの。だから、願いを叶える石ともいうわ」
「願いを叶える石?」
「マジで!? すげぇ!」
「そう。そして、この石の力は、君達を助けてくれる」
目を丸くして石を覗き込む快晴の横で、嵐は青い石から目を離さずに、もう一度尋ねた。
「おねーさん、誰?」
「幸運の通りすがりよ」
少女もまた、同じ言葉を返した。
嵐が不満そうに見上げる視線を、綺麗に無視すると、今度は差し出していた手のひらを快晴へと向けた。
「しょうがないなぁ。じゃあ快晴くん、代わりに受け取ってくれる?」
「へ? 俺?」
「うん、嵐くんの代わりにね」
「……」
快晴は少女を見上げて、次に仏頂面の嵐を見て、今度は青い石を見た。
真っ直ぐに青い石を見つめるその瞳には、やがて、納得に近い笑みが浮かぶ。そして、満面の笑みで少女を見上げた。
「いいよ。俺が代わりに預かっておくよ」
「快晴!」
「大丈夫だって。この人も、この石も悪いものじゃないから」
「どうやったらそう思えるんだよ、この状況で!」
「……んー。どうしてだっけ?」
「そこでわたしに話を振らないでほしいわね。はい、とりあえず、これは君に渡すわよ」
はい、と差し出される石を、快晴が条件反射のように石を受け取ると、少女は満足そうに頷いた。
「さて、これで準備は整ったわ。じゃあ、頑張ってね二人とも」
「は?」
言うなり、手にしていた鍵の形をした杖を、高く掲げた。
鍵の部分が強く輝き始め――
「ちょ、ちょっと!」
「また会いましょう」
少女の言葉を最後に、二人の視界は眩いばかりの光に満たされた。




