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女神な彼女  作者: なつみかん


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第五十九話 ……失敗したし

膝をついた「チビギャル」姿のウズメさん。

必死の「愛の告白」も全く通用しない俺。

そして……いまだ無傷のまま、冷酷に微笑むハナコさん。


10分どころか、

カップ麺すら出来上がらない短時間で

俺たちの敗北は決定的になろうとしていた。


ハナコさんが、あやすような手つきで俺に掌をかざす。

その時。


「ハナコ、ちょっと待つし」

ウズメさんが、掠れた声で立ち上がった。


「なぁに? ウズメちゃん。

 壊れるまで遊んでほしいのぉ?」

ハナコさんは俺に向けた手を止め

首を傾げてウズメさんに向く。


「あんたばっか殴って、ズルいし

 ……あーしも、もう少しだけ抵抗しようかなぁ?」

不敵に口角を上げるウズメさん。


「ウズメちゃんさぁ……避けるのしかできないのにぃ

 おまけにフラフラだよぉ? 無理じゃないかなぁ?」

クスクスと、慈悲のない笑い声を漏らすハナコさん。


「だねぇ。あーし1人じゃ無理かも。

 ……だから、『旦那』の力、借りるし!」

ウズメさんが右手を天高く掲げた。


ソウルリンクッ! 来い! 猿田彦サルタヒコォッ!!」


ドッピシャァァァンッ!!


雲一つない夜空から

猛烈な稲妻がウズメさんを直撃した。


余波の衝撃だけで、俺は後方の土壁まで吹き飛ばされ

後頭部を強打し一瞬、目の前に星が飛ぶ。


そういう事するなら先に言ってくれ!

と、文句を言おうとウズメさんの姿を見ると。


……なんだあれ?


ウズメさんは「チビギャル」の姿のまま


腕と足だけが

超一流ボディビルダーのように

筋骨隆々に仕上がっていた。


「……『天細女アメノウズメ・モンキーモード』、だしっ!!」


言うが早いか、

ウズメさんのアッパーが

ハナコさんの腹にめり込んだ。


「きゃうっ!?」

かわいい悲鳴と共に、ハナコさんの体が

夜空の彼方へと弾き飛ばされる。


ウズメさんは強靭な脚力で爆ぜるように跳躍。


吹き飛んだハナコさんを空中で追い越し

組み合わされた両拳を、その脳天へと叩き落とした。


ドゴォォォォンッ!!


ハナコさんが地響きと共に叩きつけられ、

激しい土煙が舞い上がり視界をさえぎる。


これが……戦神の力なのか。


「ハナコさんッ! 大丈夫!?」

俺が駆け寄ろうとすると

空から着地したウズメさんの鋭い制止が飛ぶ。


「たろっち! 近寄らないで! 邪魔になるし!」


「でも……! ハナコさんが……!

 ウズメさん、やりすぎだよ!」


「この程度じゃ、ハナコはどうにもならんし!」

ウズメさんは土煙の向こうから目を離さない。


「それに、もう……たろっちが説得してもダメだった

 ……天照アマテラスに殺らせるくらいなら

 あーしが引導を渡してやるし……っ!」


「そんな、嘘だろ……っ!」


煙がうっすらと晴れ、ハナコさんの影が立ち上がる。

その瞬間、ウズメさんが再び肉弾戦を挑み

怒涛のラッシュを叩き込んだ。


「きゃう! ふにゅ!……うにゅぅぅっ!」

激しい打撃音の合間に、ハナコさんの悲鳴が聞こえる。


……悲鳴、だよな?

……なんだろう。

少しだけ「変な性癖」に目覚めそうな妙に艶っぽい声だ。


いやっ! そんな馬鹿なこと言ってる場合じゃない!

このままじゃ、ハナコさんが死んじゃう!

「ウズメさん! もうやめて――」


ドゴォォォォンッ!!


突然、衝撃が走り今度は、前に吹き飛ばされる!

俺、何回飛ばされんだよ……


ハナコさんが放った波動が

後ろの土壁に当たったみたいだ。


「ハナコぉ! どうしたの!?

 あーしも、たろっちも狙えてないし!

 もう限界なわけぇ!?」

ウズメさんが怒涛のラッシュを叩き込みながら叫ぶ。


「……ふにゅっ!!」


ハナコさんが背筋を伸ばし、一気に魔力を膨らませる。

その威圧感に、ウズメさんは咄嗟に大きく距離を取った。


「あぶなー……ハナコ。

 まだ、そんな邪気を出せる力、残ってたんだね」

ウズメさんは離れた位置で着地し

警戒を解かずに構え直す。


「でも、もう時間の問題だし! どうする?

 今すぐハナコが謝るなら、あーしも許してやんよ!」


「ウズメちゃん……知らないんだねぇ

 どぉして、コノハちゃんが

 ずぅっと後ろの壁を守ってたのかぁ……」

身体中に痣を作り、頭や口元から血を流しながらも

ハナコさんは不気味に笑った。


……壁? 俺はさっき飛ばされた後ろの壁を振り返った。

土壁が崩れ、闇の中から華那古神社が姿を現している。

ハナコさんはその神社に向かって

吸い込まれるように手をかざす。


「おいでぇ……ツクヨミくぅん……」

メキメキと神社の壁がひび割れ

その隙間から、小さく光る何かが飛び出してきた。

……あれは?!


「……たろっち、あれ、何?」

ウズメさんが不思議そうに、俺に聞く。

そうか、あの時はウズメさん見ないで帰ったんだ。


「あれは、ハナコさんの御神体……

 元カレからもらったって言ってた」

ウズメさんに伝える。


……そう、あれは銀のロザリオだ。


「ヤバッ!!」

ウズメさんが慌てて、手を伸ばすが

銀の光は、

それを嘲笑うかのように

ハナコさんの胸へ吸い込まれていった。



凄まじい地鳴りが響き渡る。



周囲で荒れ狂っていた炎が

一瞬でかき消されるように鎮まった。


世界が漆黒の闇に包まれ、地震が止む。


「……どうなってるんですか!?」

一寸先も見えない暗闇の中で

姿の見えなくなったウズメさんに問いかける。


「……失敗したし」

ウズメさんの、忌々しげな舌打ちが聞こえた。


「あんな所にカギがあったのに……

 見る機会も、ハナコは与えてくれていたのに……」

とてつもない後悔の声でウズメさんが話している。


深い闇の中、ハナコさんの輪郭が柔らかく発光し始めた。


……まるで、

冷たく冴え渡る月のようだ。


ボロボロだったはずの傷は跡形もなく消え去り

その背中には……八枚。


八つの黒い羽を広げたハナコさんが

冷たく淡い光で辺りを照らし出していた。

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