第四十七話 脳内ミシュラン会議
先頭を切って現れたのは夢野だ。
夢野美子。転校して来た同級生。
なるほど……ピンクの花柄が眩しいワンピースタイプ。
胸元の大きなフリルが、小柄で華奢な
彼女のシルエットを愛らしく彩っている。
正直、ボリューム的な見どころはないに等しい。
……だが、それでいい! いや、それがいい!
彼女は巫女として、アイドルとして
恋愛をしないと公言している。
まさに、みんなの妹!
精神的な安定感は他に類を見ない。
そして、俺達は見た。
彼女が歌って踊るその様を!
俺達は知っている。
彼女が、みんなを祭の成功に導いた事を!
あの小さな体の中には
ロケットエンジンが詰まっているに違いない!
守りたい、その笑顔! 文句なしの星3つだ!
「……太郎くん、真剣な顔で
美子のこと見てどうしたんすか?」
「え? あぁ、なんでもない……ちょっと考え事を……」
「ごめん、遅くなった」
次に現れたのは、ひなただ。
宮下ひなた。一つ年上の幼馴染。
ふむふむ……水色のスポーツビキニに、ボトムは短パン。露出を抑えた、実にひなたらしいチョイス。
だが、諸君。彼女の真価はそこではない。
……ギャップだ。
ボーイッシュなのに恥ずかしがりや
うぶな女の子なのに化粧でフェミニンな女性
これらは、ひなたが見せるギャップの美学なのだ。
え? 今回はスポーツタイプでギャップがないだって?
全く……諸君たちは何もわかっていない。
いや、思ったより結構ある胸の話ではない。
あの「お腹」だ。
うっすら割れた腹筋もいい……だか違う。
注目すべきは、その「白さ」だ!
常に日焼けしているはずのスポーツ少女が
隠し持っていた、眩しい未踏の地。
まさに聖域と呼ぶにふさわしい。
「たーくん?……なんでさっきから
真剣な顔で、お腹見てるの?」
聖域が不審そうに話しかけてくる。
「あっ、いや……ひなたって
意外と肌、白いんだなーって」
「も、もう……! 変なとこ見ないでよバカッ!」
顔を真っ赤にして逸らし固まる。
うむ、これぞギャップ。 絶対安定多数の星3つ。
「みんな早いよぉ、待ってぇ」
そしてラストを飾るのは――ハナコさんだ。
……もはや、言葉にならない。
華那古命、推定一万歳の女神。
「息を呑む」とは、まさにこの瞬間の言葉だ。
痩せすぎず、太りすぎず。
人類が到達し得ない黄金比。
ディス・イズ・ベスト。
それが白いビキニを纏ったハナコさんだ。
かつて中世の名画を見て「少しふっくらしてるな」
などと思った自分を殴りたい。
健康……それは究極の美しさなのだ。
くびれなど、そこに「ある」と分かれば十分。
お腹? あそこには大事な内臓が詰まっているんだぞ?
多少のふくらみがあって然るべきではないか。
旺夫相……古代中国で
ふくよかな女性は家庭に安定をもたらすと
言われた理由が、今なら全力で理解できる。
ハナコさんがいれば、俺はもう
白飯だけで一生生きていける気がする。
え、星……?
3つまでしかないのか?
足りない。全然足りないぞ!
悶々と脳内ミシュラン会議を繰り広げていると
いつの間にかハナコさんが目の前にいた。
心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「太郎くん、固まってるよぉ?どうしたのぉ」
顔が近い。
胸は……もっと近い。
そして――真夏の太陽が、あまりにも眩しすぎた。
「あふぅ……」
俺の意識はそこでホワイトアウトし
砂浜へとゆっくり沈んでいった。




