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女神な彼女  作者: なつみかん


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第四十五話 騒がしくて、騒がしくて、

祝詞奏上のりとそうじょう

――けまくもかしこ氏神うじがみ

華那古命はなこのみこと大御前おおみまえ

今日きょう神幸しんこうつつがなくまつ

御社みやしろへとかえすことを

かしこかしこみももうす――


神輿から降りたハナコさんが、拝殿の前に立っている。

祝詞を畳み、ハナコさんに一礼して後ろを振り返る。


「これより玉串奉奠たまぐしほうてんを執り行います」

俺は少し端に寄る。


係りをしてくれた代表達に夢野が

榊に紙垂しでのついた玉串を渡し、

天道、来人、ひなた……次々と奉奠していく。


出発の渡御祭とぎょさいの時は

トリップ寸前のハナコさんだったのに

今は落ち着いて優しく微笑んでいる。


きっと「認知」が、十分に集まったのだろう。


辺りを見渡す。関係者だけじゃない。

境内にもパレードの参加者でいっぱいになっていた。


奉奠が終わり、再び拝殿の中央でハナコさんと向き合う。

二礼二拍手一礼。

深々と頭を下げ、もう一度ハナコさんを見る。


ハナコさんが少し驚いた顔をしている。


後ろを向き、最後の言葉。

「これにて、華那古命降臨、還幸祭かんこうさいを終わります」

声がうわずっている。

……あれ。

俺、泣いてる。


ハナコさんを始め、仲間達が俺の周りに集まって

それぞれ声をかけてくれる。


「たーくん、お疲れ様」

ひなたも涙声で話しかけてくれた。


……あれ?


「ひなた、なんか……綺麗になってない?」

みんなが、ひなたの方を向く。


いつもの、ひなたには違いないけど

縁取られた瞳はいつもより強く、

それでいて潤んで見える。

唇に薄く引かれた紅が

女の子を大人の女性へと変えていた。


「えぇ!さっきまで一緒に係員やってたのに!

 ひなた先輩、いつの間に!」

隣にいた来人も驚いている。


「だから、言っただろう、ひなた先輩は

 豊葦原学園でも5本の指に入ると……」

天道は何故か自分の手柄のようにいばる。


「やっぱり美子のひなたお姉様っすね!」

夢野はひなたに抱きつく。


「ひなたちゃん、凄ぉい、綺麗だよぉ」

ハナコさんも手を叩いて、ひなたを見ている。


「な……ななな、今は私の事はいいから」

ひなたは顔を真っ赤にしてショート寸前だ。


「あーしらが化粧してやったし」


ウズメさんとコノハさんがニコニコと自慢してくる。


「太郎さん。初めてお化粧をなさったおなごはんには

 もう少し、きちんとお褒めせなあきまへんえ?」


えぇー!……でも、師匠が言うのなら、と

俺は改めてひなたと向き合った。


境内の篝火かがりびに照らされた、ひなた

いつも隣にいる幼馴染とは思えないほど

凛としていて、それでいて凄く艶やかだ。


「……あ、ああ……その、すごく大人っぽくて

 ……正直、めちゃくちゃ綺麗だと思う」

嘘偽りのない本音だった。


「ば……」


「……ば?」


ひなたは瞳を強く閉じて大声で叫ぶ。

「ば、ばばば……バカじゃないの!?

 急に何言ってんのよっ!」


顔どころか耳の先まで真っ赤に染め上げ

ひなたの頭からシューっと湯気が上がる。

そのまま、限界を迎えたようで意識を失い……

ゆっくりと――「お姉様ーーっ!」

夢野が抱きかかえる。


ひなたの即倒で、

ドタバタした、いつもの俺たちに戻る。


「まぁ、これでお祭りも終わりだなー」

来人が頭の後ろで手を組んで言う。


「何言ってんすか!」

「美子のステージはここからっすよ!」

あ、すっかり忘れてた。巫女ドルステージ……


「女神様、ひなたお姉様をよろしくっす」

そう言って意識を失っている、ひなたを

ハナコさんに渡す。

ハナコさんは「は〜い」と受け取り抱きかかえる。


「コーチィ!美子やるっすよ!」

夢野はウズメさんを見てサムズアップ。


「おう、楽しんでくるし!」

ウズメさんも夢野にサムズアップして答える。


「さぁ皆さん!境内の巫女ドルステージに行くっすよ!」

夢野は巫女服を掴み一気に脱ぎ捨てると

赤と白を基調としたアイドル服になる。


こいつ……巫女服の下にこんなの着てたのか……

って、これ経費?いつの間に?

まだ見積り整理してた時の癖が抜けず、頭で電卓を叩く。


俺たちは全員、境内のステージに移動した。


「さぁ!祭の夜は終わらないっすよー!」

夢野がマイク越しに叫ぶ、キーンとなる。

ただでさえ声デカいのに叫ぶから……


観客も満員なので俺達は最後尾でステージを見ている。


突然、花火が上がり

ステージにはスポットライトが揺れ動く。

え?花火?……何、この演出?


「お祭りの経費、だいぶ余ったじゃない

 夢野さん、残りのお金ここで使ったのよ」

因幡さんがメガネを上げながら話す。


……アイツ、いつの間に

と思っていると、ポップな曲が流れ出し

夢野が歌って踊り始める。


「なかなかっしょ?」

ウズメさんが、ドヤ顔で肘を突いてきた。


あのくねくねした動きが、わずか一ヶ月で

観客を魅了するステップに変わっていた。


スポットライトを浴びて、弾ける夢野の笑顔は

間違いなく本物のアイドルそのものだった。

芸能の神……凄い。


「あれ……? 美子ちゃん……?」

ハナコさんの腕の中で、ひなたがゆっくりと瞳を開けた。


ステージの輝きに目を細め

ひなたの表情がパッと明るくなる。


まだ少し赤みが残るその頬に、ステージの残光が重なり

やっぱり、今までとは違う『女性』の顔をしていた。


「ひなたちゃん、起きたのぉ?」


「あ……ハナコさん。ごめん、支えてくれてありがとう」


「ううん。ひなたちゃんこそ、今日は本当にありがとぉ」

ハナコさんは俺たち一人ひとりを

慈しむように見渡し、微笑みながらはっきりと言う。


「みんなも、ありがとぉ」

「ハナコ、ちゃぁんと、この街の……

 みんなの氏神になれた気がするよぉ」


「ここがハナコさんの居場所、だよね」

俺が問いかけると、ハナコさんは俺をじっと見つめ

それからまたステージへと視線を戻した。


「うん。ハナコ

 ずっと、ずぅっと……ここにいたいなぁ」



「さぁ! 次はアップテンポなナンバーっすよ!」

夢野の叫びと観客の歓声が、夜空に吸い込まれていく。


初めてのお祭りは

騒がしくて、騒がしくて、

最高の熱狂と共に更けていった。

やっとお祭り終わりましたー!

次からは水着回!お楽しみにー!

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