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女神な彼女  作者: なつみかん


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第四十二話 あ〜んしてあげる

天道や来人達と、明日の祭の最終確認をしてから帰る。

やっとここまで来たんだ……

書類に修行に現場監督にクレーム対応に……

キツかったな。


帰り道、夕暮れ時でひぐらしが騒がしく鳴くなか

隣でひなたが「ついに明日、だね」と言う


「うん、明日も忙しいけど、お互い楽しんでやろうよ」

と俺も答える。


「……ハナコさんの為、だもんね」

夕日に照らされた、ひなたが寂しく笑う。


「それもあるけどさ……」

「大変だけど楽しかったよ、やって良かったって思う」


「うん、私もたーくんと一緒に仕事できて楽しかった

 これからも、こうやって一緒に何かできるといいね」

笑顔でひなたは話す。


「通例行事にするんだし、ひなたも来年やるでしょ?」


「ほら…私は来年は大学生だから……」


「あ……」

言葉を無くす。そういえば……そうだった。

「でも夏休みだし、お祭りは帰って来てよ」


「うん、そうする……」

お互い無言になり、ひなたの家に着く


「それじゃまた明日、朝早いけど頑張ろうね」

俺はひなたに手を振る。


「うん、」

「あのね……たーくん」

日も落ちて、あんなに騒がしかった

ひぐらしの鳴き声も、いつの間にか遠のいていた。

訪れた静寂に、ひなたの小さな吐息が混じる。


ひなたはシャツの胸をギュっと掴み。

「ごめん……何でもない、明日頑張ろうね」


ひなたと別れて家に着く

ハナコさんも帰ってきてるみたいだ。


「ただいま、ハナコさん」


「太郎くん、おかえりぃ」

羽をパタパタさせて迎えてくれる。

「今日も忙しかったのぉ?」


「うん、でも、それも今日までだから」

「明日はずっとハナコさんと一緒だねー」


「そぉなのぉ?!」

ハナコさんが驚く。


「あれ?予定、知らないの?」

「隣で聞いてなかったっけ?」


ハナコさんはスカートの裾を掴み

「……あのねぇ、ウズメちゃんに怒られたんだぁ」


「ウズメさんに?」


「うん素直になりなよぉって……」

そう言ってハナコさんは深呼吸する。


「ハナコねぇ、ちょっとひなたちゃんに

 ヤキモチしてたみたい」

向けられる視線は、いつもより少し潤んでいる。


「でも言えなくて……ごめんねぇ

 太郎くんが遠くにいっちゃうみたいで

 胸がギュッてして、お祭りのこと

 忘れちゃってたかもぉ……」


……ヤキモチって、俺に?どくん、と心臓が跳ねる。

羞恥心か、それとも別の何かか。

ハナコさんを直視できなくて、俺は視線を泳がせた。


「いや、そんな……変な心配しなくても大丈夫だから……」

声が裏返った。……カッコ悪。


「あっそうだ」

俺は近くのケーキ屋で買った。

ケーキの箱をハナコさんに渡した。

今回の件で金欠だから1つだけ……


「ハナコにくれるのぉ?」


俺が「うん」と言うとハナコさんは箱を開ける。


「ハナコが好きなイチゴのショートケーキだぁ」

目を輝かせて喜んでくれている。やっぱりかわいい。


「お神輿と同じやつ、ハナコさん好きなんでしょ?」


「うん、大好きだよぉ」

「太郎くんは、ちゃぁんとハナコの事

 考えてくれたんだねぇ」


八俣さんの件でわかった。

ちゃんと見てるってのは行動や形で

伝えるのが大事なんだな。

俺もハナコさんにずっと、できていなかった。


「あのさ……お祭りもだけど、

 終わったら2人で、ケーキ作りとかしようよ」


「うん、一緒にしようねぇ」

ハナコさんが笑顔で答えてくれた。

良かった、ハナコさんは笑顔が1番だな。


その後、夕飯を家族で食べ風呂に入り部屋に。


パジャマでハナコさんがケーキを持ってきた。


「あれ?まだ食べてなかったの?」


「1個しかないから一緒に食べようって思ってぇ」

「ハナコ、あ〜んしてあげるねぇ」


「ちょっ……いや、恥ずいって!」

何言ってんだハナコさんは!頭から湯気が出そうだ!


「いいから、いいからぁ」

甘い声と一緒に

ふわりとシャンプーの香りが鼻をくすぐる。


フォークですくわれたイチゴの断面が

すぐ目の前で揺れていた。

……いいのか? イチャイチャ禁止ルール

これアウトじゃないのか?


まぁ別に夢野が見てるわけでもないし……

「あ〜ん」

とケーキを食べる。


「どぉ?美味しい〜?」

めっちゃ距離が近い……肩がくっつきそうだ……


「おお…お、美味しいけどさ

 歯磨きしたのに、また磨かなきゃだし」

もう自分でも何を言ってるのか分からなかった。


ハナコさんはクスクス笑いながら、

自分でもケーキをパクりと食べた。

……そしてまた、さっきまで彼女の唇に触れていた

フォークが、俺の口元へ。


「はい、もぉ一回、あ〜ん」

思考がショートする。

これ、間接キスどころの話じゃない。

心臓が今までにないほど激しく動いて、胸の裏側が痛い。


「いやいや!あとはハナコさん食べなよ!」


「いいからぁ、あ〜ん」

断れない……逃がしてくれないのか……


……なんとかケーキも食べ終わる。

魂が半分抜けていったような徒労感……


「じゃあ、そろそろ寝ようか」

ふわふわしたまま押し入れに向かうと

ハナコさんはモジモジして、上目遣いをする。

「ハナコねぇ……今日はまだ寝たくないかもぉ……」


「何言ってんの? 明日は朝早いよ、早く寝なきゃ」

夜遊びも時と場合を考えないとダメだよな。

明日が本番なのに、まったくハナコさんは……


「え?……う、うん、そうだねぇ……」

ハナコさんはキョトンとして「おやすみぃ」と言う。


「明日、一緒にお祭り頑張ろうね」

「おやすみ〜」

そう言って押し入れに入り(ふすま)を閉めた。

ついに明日は、お祭り本番だ!頑張ろう!

自分に言い聞かせて、俺は眠りについた。


※ ※ ※


残されたハナコは「もぅ」と

頬を膨らませベッドに入る。


「太郎くんったらぁ、まだまだ子供なんだからぁ」

といいながらベッドでゴロゴロする。

羽がバサバサとベッドシーツに擦れる。


ハナコは羽をじっと見つめる。

――どうすればじゃなくて、どうしたいかっしょ?――

ウズメの言葉を思い出す。


いつか、本当に太郎なら、このモヤモヤした気持ちを

なくしてくれるかもしれない。


今は太郎のペースで、ゆっくりも悪くないのかも……

そんな事を思いながらハナコも夢の中に落ちていった。

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