第四十話 勘違いしないで欲しいザマス
「先日は失礼な事を言ってしまい
申し訳ありませんでした!」
俺はひなたと八俣さんの前で立ち上がって頭を下げる。
「……ふん、」
八俣さんはそれだけ言って席につく。
「あなた達、ご注文はしたザマス?」
「いえ、八俣さんをお待ちしてからと……」
俺が恐る恐る言う。
「ここのガトーショコラは絶品ザマス
あなた達も、それでいいザマスか?」
「あっはい」
そう言うと、八俣さんはウェイトレスさんに
俺たちの分までケーキと飲み物を注文してくれた。
「えっと……八俣さん?」
「勘違いしないで欲しいザマス」
「このくらいは大人として当然、ザマしてよ」
大人としてって……
もしかして八上さんの言葉効いてるのか?
「あの、お祭りの件なんですが……
やっぱり諦められないんです
準備もほとんど終わっていて、白紙に戻すってのも……」
俺は恐る恐る聞いてみる。
「だから、なんだと言うんザマス……
ワテクシ達が迷惑だと思うのは、本当なんザマスよ」
やっぱダメかー……どうすれば……
「八俣さん、昨日の話でご迷惑になってしまうのは
よく分かりました、事前に連絡できていなかったのも
私達の落ち度です。気分を悪くしてすみません」
ひなたが淡々と話を始めた。
「それでも私達はお祭りを成功させたい
八俣さん達にも認めて欲しいんです」
「それでも問題は解決してないザマショ?
ワテクシ達の不満はどうするんザマスか?」
「一緒に参加するというのは、ダメでしょうか?」
「必ず、楽しいお祭りにします、八俣さんにとっても」
ガトーショコラとカフェラテが届く。
濃厚なチョコとコーヒーの香りが鼻をくすぐるが
誰もフォークを手に取ろうとはしなかった。
「……あなた、昨日の子ザマスね
いつから、マンションの前にいたザマスか?」
「えっと説明会が終わってからなので……
4時ごろからだと思います」
「まぁ……3時間もあそこで……」
八俣さんは驚いている。俺もビックリだ……
もうすぐ8月だぞ……ひなた、無理しすぎだよ。
「……静かにできるザマスか?」
「は、はい」
俺は慌てて返事する。
……そうだ忘れてた。
俺はカバンから
『あるモノ』を取り出す。
「これ、良かったら」
「……? これは?なんザマショ?」
「合格祈願のお守りです
ウチ神社なんで、良かったら」
八俣さんは少し微笑みながら
「まったく、こんなので坊っちゃんが
合格するなら苦労しないザマスのよ?」
「それは、そうなんですけど……」
「……ありがとうザマス」
八俣さんは、ボソッと呟く。
「もういいザマス、勝手にするザマスよ!」
「八俣さん、それって……認めてくれたんですか?」
ひなたが聞くと八俣さんは
顔を真っ赤にして早口になる。
「ち、ちちち、違うザマス!
でももう始まってるものを
いつまでも言うのは大人げないザマス!」
「ちゃんとゴミとか出さずに静かにやるザマスよ!」
「ありがとうございます!」
良かったー、これでザマス問題も解決だ。
「ワテクシも……あなた達がちゃんと
約束守っているか見に行かないとザマスね」
八俣さんが、またボソッと言う。
「え!八俣さんも参加してくれるんですか?」
俺が喜んで聞くと
八俣さんはまたもや顔を赤くして早口になる。
「まぁなんて図々しい子供なんザマショ?!
ワテクシは監視するだけザマス!
あなた達のお祭りなんて興味ないザマスのよ!」
と言うと八俣さんは頭から湯気が出そうな勢いで
「じゃあ話もまとまったので
あとはよろしいザマショ?ごきげんようザマス」
と言って喫茶店を出ていった。
「八俣さん、照れてたね」
ひなたがクスクス笑う。
「うん、照れてたのはいいんだけどさ……」
「どうかしたの?」
「たぶん、奢るつもりだったのに、
ガトーショコラとカフェラテ
自分の分も払わずに帰っちゃったよ、あの人」
「あはは、まぁしょうがないよねー
じゃあ食べちゃおうよ」
そう言ってひなたはケーキを食べ始めた。
幸せそうに頬張るひなたを見て、俺はふと思った。
お守りの効果なんて、どうでもいいんだよな。
自分の話を、息子への想いを
ちゃんと聞いてくれていた。
だからあの「ザマス」も笑ったんだ。
あ、それならハナコさんにも……
そんな事を考えてるうちに、
ひなたは八俣さんの分のガトーショコラも平らげていた。
……早っ!




